『勘違い殿下の逆恨みは、鉄壁の公爵家に砕け散る~聖女と元婚約者が手を取り合った結果~』

ふわふわ

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第13話 復讐計画の始動

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第13話 復讐計画の始動

ノルドハイム城での滞在は、すでに三週間を過ぎていた。

雪は相変わらず静かに降り続き、城の周囲を白く染め上げている。  
イセッタとルクシオの関係は、日ごとに深まり、城内の家臣たちも二人の婚約を当然のように受け入れ始めていた。

朝の訓練場。

ルクシオは、自ら剣を振るい、私兵団を指導していた。  
黒い軍服に身を包んだ姿は、冷酷公爵の名にふさわしく、鋭く美しい。

イセッタは高台からそれを見下ろし、静かに微笑んだ。

(あんなに厳しくて、でも領民を思う気持ちが強い人……  
本当に、好きになってよかった)

傍らに立つソニアが、小さく呟く。

「ルクシオ公爵様……イセッタ様を見る目が、熱いですね」

イセッタは頰を赤らめながら、くすりと笑った。

「そうかしら?」

「はい! 昨日も、夕食のあとお二人で図書室にこもって……朝まで出てこなかったって、家臣さんが噂してました」

イセッタは慌ててソニアの口を塞いだ。

「しっ! あれは魔法理論の議論よ!」

ソニアが目を細めて笑う。

「はいはい」

二人は笑い合いながら、城内に戻った。

その頃、王宮。

エクウス王太子の私室は、ますます荒れ果てていた。

机の上には、北からの報告書が山積み。

『イセッタ・フォン・レーヴェント、ノルドハイム城に長期滞在。  
ルクシオ公爵と婚約目前との噂。  
ソニア聖女も同行し、北の領民から厚い支持を得ている』

エクウスは、その一枚を握り潰した。

「婚約……?  
あの冷酷公爵と……!」

彼の顔は、怒りと嫉妬で歪んでいた。

側近の男爵が、恐る恐る入ってきた。

「殿下……さらに、北からの情報です」

男爵が差し出した紙には、詳細が書かれていた。

イセッタとルクシオが、毎日のように視察を共にし、夜は図書室やバルコニーで語り合う。  
家臣たちが、二人の婚約を祝福する雰囲気。

エクウスは、紙を床に投げ捨てた。

「許さない……  
絶対に、許さない……!」

彼は立ち上がり、部屋を歩き回った。

「イセッタは、俺の婚約者だったはずだ!  
なのに、あの北の男に……!  
そしてソニアまで、あいつと一緒に……!」

胸の奥で、黒い感情が爆発していた。

嫉妬。  
屈辱。  
そして、復讐心。

エクウスは、男爵を振り返った。

「計画を、始動しろ」

男爵が青ざめる。

「殿下……それは……」

「黙れ」

エクウスは冷たく言った。

「まずは、刺客を放て」

男爵の目が見開かれた。

「刺客……でございますか?」

「北の街道に、盗賊団を装った者を送れ。  
イセッタの馬車を襲わせろ。  
怪我で済めばいい。  
死んでも……構わん」

男爵は震える声で進言した。

「しかし……ノルドハイムの護衛は強力です。  
ルクシオ公爵の私兵団は、王国最強と――」

「なら、もっと数を揃えろ」

エクウスは、机の引き出しから金貨の袋を取り出した。

「金はいくらでも出す。  
裏社会の傭兵、暗殺ギルド……すべて使え」

彼の瞳に、狂気の光が宿っていた。

「イセッタが、北で幸せそうにしているのが……  
許せない」

男爵は深く頭を下げ、退室した。

エクウスは、一人残り、窓辺に立った。

雪の降る北の空を想像しながら、呟いた。

「待っていろ……  
お前たちが、俺から奪ったものを……  
すべて、取り返す……」

復讐計画が、本格的に始動した。

一方、ノルドハイム城。

イセッタは、ルクシオと並んで、領地の地図を広げていた。

「この鉱山の産出を、南の交易路で運べば……」

ルクシオが頷く。

「貴女の商業網を使えば、利益は三倍になる」

二人は笑い合い、互いの手を自然に重ねた。

その時、家臣が急ぎ足で入ってきた。

「公爵殿!  
王都から、緊急の書状です」

ルクシオが封筒を受け取り、開封した。

内容は、王家の重病患者の治療依頼――ソニア聖女へのものだった。

イセッタが眉を寄せる。

「王宮から……?」

ルクシオが、低い声で言った。

「タイミングが、妙だ」

イセッタは頷いた。

「ええ。  
最近、王都でソニアの力に疑問を呈する噂が広がっているらしいわ」

彼女は、静かに微笑んだ。

「でも、これはチャンスよ」

ソニアが部屋に入ってきた。

「私……行きます」

声は少し震えていたが、決意に満ちていた。

「私の力が本物だと、証明するために」

イセッタはソニアの手を取った。

「一緒に帰りましょう。  
でも、護衛はしっかりね」

ルクシオが立ち上がった。

「俺も同行する。  
私の私兵団を、半分連れて」

イセッタが驚く。

「でも、領地が……」

ルクシオはまっすぐ彼女を見た。

「貴女の安全が、最優先だ」

銀灰色の瞳に、強い意志が宿っている。

イセッタの胸が、熱くなった。

「ありがとう……ルクシオ」

三人は、王都への帰還を決めた。

だが、彼らはまだ知らなかった。

王宮の奥深くで、エクウスが放った刺客が、すでに北の街道に潜んでいることを。

復讐の刃が、静かに近づいていた。

イセッタとルクシオの絆は、試練を迎えようとしていた。

北の雪は、静かに降り続き――

すべてを、白く覆い隠すように。

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