『勘違い殿下の逆恨みは、鉄壁の公爵家に砕け散る~聖女と元婚約者が手を取り合った結果~』

ふわふわ

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第15話 聖女の活躍

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第15話 聖女の活躍

王都アークライトの王宮、正殿の奥にある治療室。

重厚な扉が開き、イセッタ、ソニア、ルクシオの一団が入ってきた。  
部屋の中央には、豪奢な天蓋付きのベッド。  
そこに横たわるのは、王の末弟――第二王子、重い魔力枯渇症に苦しむ青年だった。

王族、貴族、重臣たちが、周囲を固く取り囲んでいる。  
皆の視線が、一斉にソニアに注がれた。

中には、明らかに疑いの色を隠さない者もいた。

最近、王都で広がった噂――  
「平民出身の聖女の力は、偽物ではないか」  
「最近、力が不安定になっているらしい」

その噂の効果が、ここに現れていた。

エクウス王太子は、部屋の隅に控えていた。  
顔は青白く、視線を逸らしている。

イセッタは、静かに周囲を見回した。

(殿下……ここにいるのね)

ルクシオが、イセッタのすぐ後ろに立ち、冷たい視線を王族たちに送っていた。  
ノルドハイムの私兵団は、廊下で待機。  
万一の事態に備えて。

王が、ベッドの脇から声を上げた。

「ソニア聖女……頼む。  
末弟の命を、救ってくれ」

ソニアは深く一礼し、ベッドに近づいた。

「かしこまりました」

彼女は両手を王子の上にかざし、目を閉じた。

部屋が、静まり返る。

最初は何も起こらなかった。

貴族の一人が、小さく鼻で笑った。

「やはり……噂通りか」

だが、次の瞬間――

柔らかな白い光が、ソニアの手から溢れ出した。

光は優しく、しかし力強く、王子の体を包み込む。

魔力枯渇症の黒い瘴気が、光に触れて溶けていく。

王子が、苦しげに息を吐いていた顔が、徐々に穏やかになる。

光はどんどん強くなり、部屋全体を照らし始めた。

聖女の力――本物の、圧倒的な癒やしの光。

貴族たちが、息を呑んだ。

「これは……!」

「なんて美しい……」

「噂など、嘘だったのだ!」

光が収まり、ソニアが手を下ろした。

王子が、ゆっくりと目を開けた。

「……ここは?」

王が、涙を浮かべて駆け寄る。

「生きておる……! 生きておるぞ!」

部屋が、歓喜に包まれた。

ソニアは、少しふらつきながら、イセッタの方を振り返った。

イセッタが、すぐに支える。

「よくやったわ、ソニア」

ソニアは、疲れた笑顔で頷いた。

「ありがとう……イセッタ様」

王が、ソニアに深く頭を下げた。

「聖女よ……感謝する。  
王国は、貴女に借りを作った」

貴族たちも、次々と感謝と称賛の言葉を贈る。

噂は、一瞬で払拭された。

いや、それどころか――  
ソニアの名は、王国中に「真の聖女」として轟くことになった。

治療が終わり、一団が治療室を出る。

廊下で、エクウスが待ち構えていた。

彼は、イセッタと目が合うと、ぎくりと肩を震わせた。

イセッタは、静かに近づき、優雅に一礼した。

「殿下、お久しぶりです」

エクウスが、青ざめた顔で呟く。

「イセッタ……」

ルクシオが、一歩前に出て、エクウスを冷たく見据えた。

「王太子殿下。  
北の街道での襲撃事件、ご存知ですか?」

エクウスの顔が、真っ白になった。

「な、何のことだ……」

イセッタが、懐から一枚の紙を取り出した。

街道で押収した、側近の署名入り命令書。

「これに、殿下の印が押されていますわ」

周囲の貴族たちが、ざわめく。

エクウスが、後ずさる。

「そ、それは……偽物だ! 俺はそんな――」

ルクシオが、低い声で言った。

「捕虜の供述も、すでに取ってあります。  
貴方の側近が、金を渡して雇ったと」

エクウスは、壁に背を預け、崩れ落ちそうになった。

イセッタは、静かに微笑んだ。

「殿下……  
もう、私たちに手は出せませんわ」

彼女は、ルクシオとソニアを連れ、廊下を去った。

背後で、エクウスが、初めて味わう絶望に震えていた。

その夜、レーヴェント公爵屋敷。

イセッタは、ルクシオとソニアと三人で、応接室に座っていた。

「今日で、噂は完全に消えたわ」

イセッタが紅茶を注ぎながら言う。

ソニアが、ほっと息を吐く。

「よかった……  
私、ちゃんと役に立てて」

ルクシオが、ソニアに優しく微笑んだ。

「貴女の力は、王国を救った。  
これからは、もっと堂々と胸を張れ」

ソニアが、目を潤ませて頷く。

イセッタは、ルクシオの手を取った。

「あなたがいてくれて、よかった」

ルクシオが、強く握り返す。

「これからも、ずっと傍にいる」

三人で、穏やかな夜を過ごした。

一方、王宮。

エクウスは、私室に閉じこもり、側近たちに詰め寄られていた。

「殿下……街道の件が、すでに貴族たちの耳に入っています」

「このままでは、貴族会議で……」

エクウスは、頭を抱えた。

「なぜ……  
なぜ、何もできない……!」

彼の復讐は、すべて失敗に終わっていた。

イセッタの手は、鉄壁の守りに守られ、  
ソニアの力は、民衆の支持を集め、  
ルクシオの軍事力は、王家すら牽制する。

届かない手は、ただ空を掻くだけ。

聖女の活躍は、王国に光をもたらした。

そして、イセッタたちの絆は、さらに強くなった。

エクウスの陰謀は、静かに、しかし確実に、  
彼自身を追い詰めていく――。

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