『勘違い殿下の逆恨みは、鉄壁の公爵家に砕け散る~聖女と元婚約者が手を取り合った結果~』

ふわふわ

文字の大きさ
27 / 30

第27話 盛大な結婚式

しおりを挟む
第27話 盛大な結婚式

夏の陽光が、王都アークライトを黄金色に染め上げる日。

王宮の隣に新設された大聖堂は、花々と絨毯で埋め尽くされていた。  
白いバラ、青いデルフィニウム、黄金のヒマワリ――  
イセッタの好きな花々が、柱や天井から優雅に垂れ下がり、聖堂全体を花園に変えていた。

今日は、イセッタ・フォン・レーヴェントとルクシオ・フォン・ノルドハイムの結婚式。

王国史上、最も盛大な式と噂されるだけあって、  
貴族はもちろん、民衆代表、商人ギルド、さらには講和使節として訪れた帝国の貴賓まで招待されていた。

聖堂の外は、人垣で埋め尽くされ、  
「イセッタ様、おめでとう!」  
「ルクシオ公爵、幸せに!」  
「賢明の令嬢万歳!」  
という歓声が、絶え間なく上がっていた。

聖堂内。

バージンロードの両脇に、貴族たちが整列。

王と王妃が、最上席に座る。

ソニアは、花嫁介添えとして、イセッタのすぐ後ろに控えていた。  
淡い水色のドレスが、彼女の金髪に映え、まるで妖精のよう。

オルガンの荘厳な調べが鳴り始め、扉が開いた。

イセッタが、父レオナルド公爵に腕を預かって、入場した。

純白のウェディングドレス。

胸元と袖に繊細なレースが施され、  
長いトレーンは、北の雪を思わせる銀糸で縁取られている。  
ヴェール越しに見える黒髪は、ダイヤのティアラで留められ、  
頰には、幸せの紅が自然に差していた。

広間が、息を呑んだ。

「美しい……」

「まるで、女神様だ……」

イセッタは、ゆっくりとバージンロードを進んだ。

父レオナルド公爵の目には、涙が浮かんでいた。

祭壇の前で、ルクシオが待っていた。

黒い礼装に、ノルドハイムの紋章を胸に。  
銀灰色の瞳は、イセッタだけを見つめ、  
普段の冷酷さはどこにもなく、ただ深い愛情に満ちている。

レオナルド公爵が、イセッタの手をルクシオに渡した。

「娘を……頼む」

ルクシオが、深く頷く。

「一生、守ります」

二人が、祭壇に並ぶ。

司祭の荘厳な声が、響く。

「ルクシオ・フォン・ノルドハイム公爵。  
イセッタ・フォン・レーヴェントを、妻として愛し、  
健やかにも病める時も、富める時も貧しき時も、  
生涯、守り続けることを誓いますか?」

ルクシオが、はっきりとした声で答えた。

「誓います」

「イセッタ・フォン・レーヴェント。  
ルクシオ・フォン・ノルドハイム公爵を、夫として愛し、  
健やかにも病める時も、富める時も貧しき時も、  
生涯、支え続けることを誓いますか?」

イセッタが、微笑みながら答えた。

「誓います」

指輪の交換。

ルクシオが、イセッタの指に、北のダイヤの指輪を滑らせる。  
イセッタが、ルクシオの指に、銀のリングを。

「これより、二人は夫婦となったことを宣言する」

司祭の言葉に、広間が歓声に包まれた。

ルクシオが、ヴェールを上げ、イセッタに優しくキスをした。

拍手と歓声が、鳴り止まない。

ソニアが、涙を拭いながら、花束を投げた。

――キャッチしたのは、若い騎士。  
周囲から、からかいの声が上がる。

式の後、王宮の大広間で披露宴。

テーブルには、王国中の珍味が並び、  
楽団が優雅な音楽を奏でる。

王が、乾杯の音頭を取った。

「新郎新婦の幸せと、王国の繁栄に!」

グラスが、一斉に掲げられた。

ルクシオが、イセッタの手を取り、ダンスフロアへ。

最初のダンスは、二人のためだけに。

優雅なワルツが、広間を満たす。

イセッタが、ルクシオの耳元で囁いた。

「幸せよ……ルクシオ」

ルクシオが、強く抱きしめた。

「俺もだ。  
貴女が、俺のすべてだ」

ダンスが終わり、貴族たちが次々と踊りに加わる。

ソニアは、若い貴族に誘われ、照れながらダンス。

彼女の笑顔は、戦場の疲れを忘れさせるほど明るい。

披露宴の最後。

イセッタが、花束を投げた。

キャッチしたのは――ソニア。

周囲から、大歓声。

「ソニア聖女、次はあなたね!」

ソニアが、真っ赤になって笑う。

夜。

新郎新婦は、王宮の離宮へ。

バルコニーで、二人は並んで星を見上げた。

「今日……本当に、夢みたい」

イセッタが、ルクシオの胸に寄りかかる。

ルクシオが、彼女を抱きしめた。

「これから、ずっと一緒だ」

二人は、再びキスをした。

聖堂の鐘が、遠くで優しく鳴っていた。

盛大な結婚式は、  
王国に、新しい希望をもたらした。

イセッタとルクシオの愛は、  
多くの人々の心を温かくした。

ソニアも、祝福に包まれ、  
新しい幸せを見つけようとしていた。

王国は、平和で、  
輝かしい未来へ向かっていた。

花びらが、夜風に舞い、  
二人の未来を、優しく祝福するように。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

離婚するはずの旦那様を、なぜか看病しています

鍛高譚
恋愛
「結婚とは、貴族の義務。そこに愛など不要――」 そう割り切っていた公爵令嬢アルタイは、王命により辺境伯ベガと契約結婚することに。 お互い深入りしない仮面夫婦として過ごすはずが、ある日ベガが戦地へ赴くことになり、彼はアルタイにこう告げる。 「俺は生きて帰れる自信がない。……だから、お前を自由にしてやりたい」 あっさりと“離婚”を申し出る彼に、アルタイは皮肉めいた笑みを浮かべる。 「では、戦争が終わり、貴方が帰るまで離婚は待ちましょう。   戦地で女でも作ってきてください。そうすれば、心置きなく別れられます」 ――しかし、戦争は長引き、何年も経ったのちにようやく帰還したベガは、深い傷を負っていた。 彼を看病しながら、アルタイは自分の心が変化していることに気づく。 「早く元気になってもらわないと、離婚できませんね?」 「……本当に、離婚したいのか?」 最初は“義務”だったはずの結婚。しかし、夫婦として過ごすうちに、仮面は次第に剥がれていく。 やがて、二人の離婚を巡る噂が王宮を騒がせる中、ベガは決意を固める――。

剣士に扮した男爵令嬢は、幽居の公子の自由を願う

石月 和花
恋愛
 両親が亡くなって男爵家を叔父に乗っ取られた令嬢のアンナは、騎士だった父から受けた手解きのお陰で、剣を手に取り冒険者として日銭を稼ぎながら弟を育てていた。  そんなある日、ひょんな事から訳ありそうな冒険者ルーフェスと知り合ったのだった。  アンナは、いつも自分の事を助けてくれるルーフェスに、段々と心が惹かれていったが、彼女にはその想いを素直に認められなかった。  何故ならアンナの目標は、叔父に乗っ取られた男爵位を取り返して身分を回復し、弟に爵位を継がせる事だったから。この願いが叶うと、冒険者のルーフェスとは会えなくなるのだ。  貴族の身分を取り戻したい気持ちと、冒険者としてルーフェスの隣に居たい気持ちの間で悩み葛藤するそんな中で、アンナはルーフェスの重大な秘密を知ってしまうのであった…… ## ファンタジー小説大賞にエントリーしています。気に入って頂けましたら、応援よろしくお願いします! ## この話は、別タイトルで小説家になろうでも掲載しています。

婚約破棄された伯爵令嬢、王の目となる

鷹 綾
恋愛
婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ミシェル・ドミニク。 しかし彼女は嘆かない。なぜならその時、父は病に伏し、家と領地の命運が彼女の肩にのしかかっていたからだ。 やがて伯爵位を継いだミシェルは、国王からある任を命じられる。 それは地方貴族の不正を監視し、裁く「王の目」――ミッシ・ドミニチへの任命だった。 相棒は、理と信仰を司るノイマン司教。 伯爵は武を率い、司教は知をもって臨む。 二人で一つの巡察使として、不正と無能を容赦なく暴いていく。 そして最初の標的は、かつて婚約を破棄した元婚約者。 これは復讐ではない。 私情を排し、制度として下される、静かで逃げ場のない裁きの物語。

お嬢様のために暴君に媚びを売ったら愛されました!

近藤アリス
恋愛
暴君と名高い第二王子ジェレマイアに、愛しのお嬢様が嫁ぐことに! どうにかしてお嬢様から興味を逸らすために、媚びを売ったら愛されて執着されちゃって…? 幼い頃、子爵家に拾われた主人公ビオラがお嬢様のためにジェレマイアに媚びを売り 後継者争い、聖女など色々な問題に巻き込まれていきますが 他人の健康状態と治療法が分かる特殊能力を持って、お嬢様のために頑張るお話です。 ※ざまぁはほんのり。安心のハッピーエンド設定です! ※「カクヨム」にも掲載しています ※完結しました!ありがとうございます!

老婆令嬢と呼ばれた私ですが、死んで灰になりました。~さあ、華麗なる復讐劇をお見せしましょうか!~

ミィタソ
恋愛
ノブルス子爵家の長女マーガレットは、幼い頃から頭の回転が早く、それでいて勉強を怠らない努力家。さらに、まだ少しも磨かれていないサファイアの原石を彷彿とさせる、深い美しさを秘めていた。 婚約者も決まっており、相手はなんと遥か格上の侯爵家。それも長男である。さらに加えて、王都で噂されるほどの美貌の持ち主らしい。田舎貴族のノブルス子爵家にとって、奇跡に等しい縁談であった。 そして二人は結婚し、いつまでも幸せに暮らしましたとさ……と、なればよかったのだが。 新婚旅行の当日、マーガレットは何者かに殺されてしまった。 しかし、その数日後、マーガレットは生き返ることになる。 全財産を使い、蘇りの秘薬を購入した人物が現れたのだ。 信頼できる仲間と共に復讐を誓い、マーガレットは王国のさらなる闇に踏み込んでいく。 ******** 展開遅めですが、最後までお付き合いいただければ、びっくりしてもらえるはず!

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

比較的に見て愛するに値しない、ということで。

ぽんぽこ狸
恋愛
 クロエは、パーティー帰りの馬車で婚約者のトリスタンに「比べて考えてみればクロエは俺を愛していない」と言われて面食らった。  彼の主張は、こうだった。  パーティーで話題を盛り上げていた伯爵令嬢のアリエルは、相手にたくさんの贈り物をしたり、相手を立てたりして愛情を伝えている。  それなのにクロエは一度だってなにもくれないし、自分はないがしろにされているということだった。  そしてそんなクロエは愛するに値しない、とまで言い切った。  それにクロエは、彼のまったく的を射てない発言を笑い飛ばして、彼と同じように比較して返したのだった。

処理中です...