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第十六話 偽りの功績
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第十六話 偽りの功績
王宮の大会議室。
重厚な扉が閉まり、外の音を遮断する。
集められたのは財務官、軍務官、そして数名の重臣。
机の中央には、山のような書類。
その一番上に置かれているのは、例の帳簿の写しだった。
「確認を進めた結果、いくつかの功績が再分類されます」
筆頭財務官が静かに言う。
「再分類?」
軍務官が眉をひそめる。
「軍備改革の設計案、初期提案者はカーディス令嬢」 「港湾整備の資金繰り調整も同様」
空気が重くなる。
「では、殿下の功績は」
「最終承認者であることは事実です」
だが、と続く。
「実務設計と資金調整は、別です」
その言葉は、淡々としている。
だが意味は鋭い。
会議後、国王は静かに報告を受ける。
「名義の修正は必要か」
側近が問う。
「今すぐではない」
国王は目を細める。
「だが事実は、把握しておく」
王太子の評価は、内部で静かに修正され始めていた。
一方、アルヴィオンの私室。
「再分類とはどういうことだ!」
怒声が響く。
側近は冷静だ。
「功績の内訳が整理されただけでございます」
「整理だと?」
アルヴィオンは書類を叩く。
「私が承認したのだ!」
「はい」
側近は頷く。
「ですが、設計と補填の記録が明確になりました」
その一文が刺さる。
――設計と補填。
彼は承認した。 だが設計はしていない。
「今さら何を」
「今まで曖昧だった部分が、明確になっただけです」
曖昧。
その曖昧さが、彼の功績を支えていた。
今は、それが消えつつある。
同じ頃、カーディス公爵邸。
書斎の窓辺で、アデルフィーナは帳簿を閉じる。
「王宮内で功績の整理が進んでおります」
執事が報告する。
「そう」
彼女は穏やかだ。
「事実確認は、必要ですもの」
侍女が小さく問う。
「公にされるのでしょうか」
「今はまだ」
淡々と答える。
「ですが、記録は消えません」
机の上には整然と並ぶ書類。
彼女の筆跡。 彼女の設計。
それは飾りではない。
「お嬢様は、悔しくないのですか」
侍女は思わず口にする。
「殿下の功績とされていたのに」
アデルフィーナは少し考える。
「婚約者の功績は、共有でございます」
静かな声。
「ですが、婚約が終了した以上、共有も終了いたします」
それだけ。
感情はない。
線引きだけ。
王宮。
ミレイアは廊下で、二人の令嬢の囁きを聞く。
「再分類ですって」 「設計は公爵令嬢だったらしいわ」
足が止まる。
「何を話しているの?」
声をかけると、二人は慌てて頭を下げる。
「い、いえ……」
だが視線は、どこか冷たい。
ミレイアは胸の奥に熱を感じる。
「どうして今さら」
彼女の立場は、王太子の功績の上に築かれていた。
その功績が揺らげば。
自分も揺らぐ。
夜。
王都の上空を雲が流れる。
アルヴィオンは机に向かい、帳簿を睨み続けていた。
「……私の名だ」
そこに記された事業名。
だが横に添えられた注釈が、重い。
――設計:アデルフィーナ・カーディス。
名義の虚構が、少しずつ剥がれていく。
その一方で、カーディス邸では静かな夜が流れていた。
アデルフィーナは庭を眺める。
風が薔薇を揺らす。
棘は変わらない。
「偽りは、長くは持ちません」
彼女は呟く。
「記録は、正直ですから」
歯車はさらに軋む。
暴かれたのは数字だけではない。
王太子という名の装飾。
その内側が、少しずつ露わになっていく。
王宮の大会議室。
重厚な扉が閉まり、外の音を遮断する。
集められたのは財務官、軍務官、そして数名の重臣。
机の中央には、山のような書類。
その一番上に置かれているのは、例の帳簿の写しだった。
「確認を進めた結果、いくつかの功績が再分類されます」
筆頭財務官が静かに言う。
「再分類?」
軍務官が眉をひそめる。
「軍備改革の設計案、初期提案者はカーディス令嬢」 「港湾整備の資金繰り調整も同様」
空気が重くなる。
「では、殿下の功績は」
「最終承認者であることは事実です」
だが、と続く。
「実務設計と資金調整は、別です」
その言葉は、淡々としている。
だが意味は鋭い。
会議後、国王は静かに報告を受ける。
「名義の修正は必要か」
側近が問う。
「今すぐではない」
国王は目を細める。
「だが事実は、把握しておく」
王太子の評価は、内部で静かに修正され始めていた。
一方、アルヴィオンの私室。
「再分類とはどういうことだ!」
怒声が響く。
側近は冷静だ。
「功績の内訳が整理されただけでございます」
「整理だと?」
アルヴィオンは書類を叩く。
「私が承認したのだ!」
「はい」
側近は頷く。
「ですが、設計と補填の記録が明確になりました」
その一文が刺さる。
――設計と補填。
彼は承認した。 だが設計はしていない。
「今さら何を」
「今まで曖昧だった部分が、明確になっただけです」
曖昧。
その曖昧さが、彼の功績を支えていた。
今は、それが消えつつある。
同じ頃、カーディス公爵邸。
書斎の窓辺で、アデルフィーナは帳簿を閉じる。
「王宮内で功績の整理が進んでおります」
執事が報告する。
「そう」
彼女は穏やかだ。
「事実確認は、必要ですもの」
侍女が小さく問う。
「公にされるのでしょうか」
「今はまだ」
淡々と答える。
「ですが、記録は消えません」
机の上には整然と並ぶ書類。
彼女の筆跡。 彼女の設計。
それは飾りではない。
「お嬢様は、悔しくないのですか」
侍女は思わず口にする。
「殿下の功績とされていたのに」
アデルフィーナは少し考える。
「婚約者の功績は、共有でございます」
静かな声。
「ですが、婚約が終了した以上、共有も終了いたします」
それだけ。
感情はない。
線引きだけ。
王宮。
ミレイアは廊下で、二人の令嬢の囁きを聞く。
「再分類ですって」 「設計は公爵令嬢だったらしいわ」
足が止まる。
「何を話しているの?」
声をかけると、二人は慌てて頭を下げる。
「い、いえ……」
だが視線は、どこか冷たい。
ミレイアは胸の奥に熱を感じる。
「どうして今さら」
彼女の立場は、王太子の功績の上に築かれていた。
その功績が揺らげば。
自分も揺らぐ。
夜。
王都の上空を雲が流れる。
アルヴィオンは机に向かい、帳簿を睨み続けていた。
「……私の名だ」
そこに記された事業名。
だが横に添えられた注釈が、重い。
――設計:アデルフィーナ・カーディス。
名義の虚構が、少しずつ剥がれていく。
その一方で、カーディス邸では静かな夜が流れていた。
アデルフィーナは庭を眺める。
風が薔薇を揺らす。
棘は変わらない。
「偽りは、長くは持ちません」
彼女は呟く。
「記録は、正直ですから」
歯車はさらに軋む。
暴かれたのは数字だけではない。
王太子という名の装飾。
その内側が、少しずつ露わになっていく。
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