『「君は飾りだ」と言われた公爵令嬢、契約通りに王太子を廃嫡へ導きました』

ふわふわ

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第三十二話 廃された名

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第三十二話 廃された名

王宮前広場。

鐘が鳴る。

朝の空気は澄んでいるのに、緊張だけが重い。

貴族、商人、兵士、そして王都の市民が集まっている。

告示が出る。

誰もがそれを知っている。

今日は、決着の日だ。

王宮バルコニーに国王が姿を現す。

その後ろに重臣。

そして一歩下がった位置に――アルヴィオン。

かつて王太子と呼ばれた男。

国王が告げる。

「王位継承順位凍結の件について、最終判断を下す」

静寂。

「履行履歴未提出のまま保証を強行し、条文を軽視した発言は、王家信用を重大に毀損した」

言葉は穏やか。

だが内容は断罪。

「よって、アルヴィオンの王位継承権を剥奪する」

広場が揺れる。

ざわめきが波になる。

廃嫡。

はっきりと告げられた。

「今後は王族の一員として地方にて責務を果たさせる」

責務。

言葉は柔らかい。

だが実質は追放。

さらに続く。

「保証債務は個人責任とする」

重臣の間に緊張が走る。

王家ではない。

彼一人。

自ら押した承認印の重さ。

アルヴィオンは動かない。

顔色は白い。

だが抗議しない。

できない。

すべて記録に残っている。

宣言。

条文否定。

履行未整備。

すべて、自分の言葉。

続いて告げられる。

「ローデン家は家格を一段降格とする」

ミレイアの息が止まる。

支援家門撤退。

縁談消滅。

そして家格降格。

社交界の椅子が消える。

広場のざわめきは、同情ではない。

「当然だ」 「履歴を軽視した」 「王命が止まった」

冷たい評価。

その日の午後。

王宮大広間。

アルヴィオンは最後の対面を求める。

相手は――アデルフィーナ。

静かな部屋。

余計な者はいない。

「……本当に終わりか」

声は低い。

もう命令ではない。

「共有契約は終了しております」

穏やかに。

「履行履歴が整えば、状況は違ったか」

一瞬の沈黙。

「契約は履歴に従います」

感情ではない。

同情でもない。

「ですが、侮辱は履歴に残ります」

静かに言い切る。

飾り。

過剰。

不要。

その言葉もまた、履歴。

アルヴィオンは目を閉じる。

初めて理解する。

信用は数字だけではない。

言葉も履歴になる。

「……私は間違ったのか」

「選択なさいました」

責めない。

慰めない。

事実だけ。

アデルフィーナは立ち上がる。

「今後のご健勝をお祈り申し上げます」

形式的な礼。

それが、最後。

救済はない。

数日後。

王都外れ。

馬車が止まる。

アルヴィオンは荷物を持ち、降りる。

王太子の紋章はない。

ただの王族。

個人債務を背負った男。

遠くに王都が見える。

自分が立っていた中心は、もう遠い。

同じ頃。

王宮。

国王直々の謝辞が、アデルフィーナへ告げられる。

「王家の信用を守った」

重臣たちが頭を下げる。

監査顧問就任の正式打診。

そして隣国王家からの正式縁談照会。

彼女は深く一礼する。

誇らず。

驕らず。

ただ受け止める。

夜。

王都の灯りが輝く。

中心に立つ者と、

外に立つ者。

違いは一つ。

履歴。

傲慢は立場を守らない。

契約は感情では動かない。

そして。

侮辱は、忘れられない。

強ザマァは終わった。

残ったのは、

記録と結果だけだった。
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