追放された令嬢ですが、隣国公爵と白い結婚したら溺愛が止まりませんでした ~元婚約者? 今さら返り咲きは無理ですわ~

ふわふわ

文字の大きさ
25 / 40

第25話 「旦那様が奥様に夢中らしい」屋敷がざわつく日

しおりを挟む
◆第25話 「旦那様が奥様に夢中らしい」屋敷がざわつく日

リーザが帰っていった日の午後。

エテルナは書庫で静かに本を整理していた。
アウレリオとのやりとりを思い返し、胸がじんわり温かい。

――“胸が落ち着かないのは確かだ”

あの言葉を思い出すと、顔が熱くなる。

「だ、だめですわ……わたくし、浮かれすぎ……!」

そう呟いた瞬間だった。

廊下の向こうから、メイドたちのひそひそ声が聞こえてきた。

「聞いた? 旦那様、奥様に嫉妬なさったらしいわよ!」

「えぇっ!? あの冷徹と噂される旦那様が!?」

「奥様のご友人を“男性か?”って疑われたって話よ。
 しかも、耳まで真っ赤だったんですって!」

「まあまあまあっ!!」

(ちょ、ちょっと待って!?)

エテルナは慌てて本を棚に押し込み、扉をそっと閉めた。

廊下のメイド二人は、まだ熱心に囁き合っている。

「つまり……旦那様が奥様をお慕いしているということよね?」

「もう完全に“奥様至上主義”よ! 素敵すぎる……!」

(い、いつそんな誤解が!?)

エテルナは顔を覆った。


---

◆アウレリオ当主側でも……

当主執務室でも、側近たちが妙にそわそわしていた。

「……あの、旦那様。ひとつ確認してもよろしいでしょうか」

筆頭執事フローレンが、珍しく遠慮がちに口を開く。

「なんだ?」

アウレリオは書類から目を離さない。

「本日……奥様に、嫉妬をなさった、という噂が……」

「……は?」

アウレリオが顔を上げた。眉間にしわ。

「嫉妬? 私が?」

執事と護衛二名は目を合わせ、こくこくと頷く。

「皆そう言っております」

「……私は事実を尋ねただけだ。
 エテルナの友人が“男性か”と確認したのみで……いや、違う。あれは……」

(……あれは完全に嫉妬と受け取られる行動だったのでは?)

アウレリオ自身が内心で混乱していた。

「旦那様。
 奥様がお越しになってからというもの、顔つきが丸くなられたという声も多く……」

「丸くなっていない」

即答。

「ですが、昨日の夕餉後……廊下で奥様と肩が触れただけで、表情が緩んでおいででした」

「緩んでいない」

「……目撃者が八名おります」

「…………」

アウレリオは言葉を失った。

(……見られていたのか)

自覚があっただけに、否定しても苦しい。

護衛ラヴェッリはにやりと笑う。

「旦那様、いよいよ“奥様に心奪われた”説が確定しておりますな」

「奪われていない!!」

だが耳が赤い。

完全に図星。


---

◆エテルナ、屋敷中から過剰保護される

その日の午後。

エテルナが庭を散歩しようとすると、庭師が慌てて飛んできた。

「奥様っ、日差しが強いです! こちら日傘を!」

「えっ、あ、ありがとうございます……?」

さらに廊下を歩けば――

「奥様、段差があります! お気をつけて!」

「奥様、お水をどうぞ! 喉が乾いているはずです!」

「奥様、歩く速度が速すぎませんか!? 危険です!」

(ちょ、ちょっと!?)

もはや過剰なほどの過保護。

エテルナは混乱してアウレリオの執務室へ向かった。


---

◆旦那様、誤解に気づく

「旦那様、お話が……」

扉が開いた瞬間、数名の側近がアウレリオの机を囲んでいた。

そして一斉に振り返り――

「「「奥様ぁぁ!!」」」

エテルナ、固まる。

アウレリオ、頭を抱える。

「……解散しろと言ったはずだ」

「しかし旦那様、奥様が来られたので!」

「黙れ」

アウレリオの静かな一言で、側近たちは蜘蛛の子を散らすように退散した。

二人きりになり、エテルナは恐る恐る尋ねた。

「旦那様……いったい、何が起こっているのでしょう?」

アウレリオは深いため息をついた。

「……誤解だ。
 私は嫉妬などしていないし、側近たちが騒いでいるだけだ」

「……では本当に、嫉妬は……?」

エテルナがむずがゆそうに問いかけると、アウレリオの耳が赤く染まった。

「……私は、君が誰かに心を奪われるのが嫌だと思った。
 ただ、それだけだ」

「旦那様……」

その言葉に、胸がきゅっと締め付けられる。

アウレリオは目を逸らしながら言った。

「……ああもう、側近どもが騒いで面倒だ。
 だが――君が私の妻である以上、私が守るのは当然だ」

エテルナの頬は熱くなるばかりだった。


---

◆そして屋敷では、新たな噂が生まれる

廊下の奥で、側近たちがひそひそ。

「聞きました!? 旦那様、“奥様の心を奪われるのが嫌だ”と!!」

「完全に恋じゃない!!?」

「いやもう、これは……本気だな」

「結婚は白い結婚と聞いていたが……これは期待できる……!」

屋敷中が恋愛観測隊と化した。

当の本人たちはまだ“仮夫婦”のつもりなのに。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】捨てられ令嬢の冒険譚 〜婚約破棄されたので、伝説の精霊女王として生きていきます〜

きゅちゃん
恋愛
名門エルトリア公爵家レオンと婚約していた伯爵令嬢のエレナ・ローズウッドは、レオンから婚約破棄を宣言される。屈辱に震えるエレナだが、その瞬間、彼女にしか見えない精霊王アキュラが現れて...?!地味で魔法の才能にも恵まれなかったエレナが、新たな自分と恋を見つけていくうちに、大冒険に巻き込まれてしまう物語。

婚約破棄? 国外追放?…ええ、全部知ってました。地球の記憶で。でも、元婚約者(あなた)との恋の結末だけは、私の知らない物語でした。

aozora
恋愛
クライフォルト公爵家の令嬢エリアーナは、なぜか「地球」と呼ばれる星の記憶を持っていた。そこでは「婚約破棄モノ」の物語が流行しており、自らの婚約者である第一王子アリステアに大勢の前で婚約破棄を告げられた時も、エリアーナは「ああ、これか」と奇妙な冷静さで受け止めていた。しかし、彼女に下された罰は予想を遥かに超え、この世界での記憶、そして心の支えであった「地球」の恋人の思い出までも根こそぎ奪う「忘却の罰」だった……

『婚約破棄された令嬢、白い結婚で第二の人生始めます ~王太子ざまぁはご褒美です~』

鷹 綾
恋愛
「完璧すぎて可愛げがないから、婚約破棄する」―― 王太子アルヴィスから突然告げられた、理不尽な言葉。 令嬢リオネッタは涙を流す……フリをして、内心ではこう叫んでいた。 (やった……! これで自由だわーーーッ!!) 実家では役立たずと罵られ、社交界では張り付いた笑顔を求められる毎日。 だけど婚約破棄された今、もう誰にも縛られない! そんな彼女に手を差し伸べたのは、隣国の若き伯爵家―― 「干渉なし・自由尊重・離縁もOK」の白い結婚を提案してくれた、令息クリスだった。 温かな屋敷、美味しいご飯、優しい人々。 自由な生活を満喫していたリオネッタだったが、 王都では元婚約者の評判がガタ落ち、ざまぁの嵐が吹き荒れる!? さらに、“形式だけ”だったはずの婚約が、 次第に甘く優しいものへと変わっていって――? 「私はもう、王家とは関わりません」 凛と立つ令嬢が手に入れたのは、自由と愛と、真の幸福。 婚約破棄が人生の転機!? ざまぁ×溺愛×白い結婚から始まる、爽快ラブファンタジー! ---

【完結】家族に愛されなかった辺境伯の娘は、敵国の堅物公爵閣下に攫われ真実の愛を知る

水月音子
恋愛
辺境を守るティフマ城の城主の娘であるマリアーナは、戦の代償として隣国の敵将アルベルトにその身を差し出した。 婚約者である第四王子と、父親である城主が犯した国境侵犯という罪を、自分の命でもって償うためだ。 だが―― 「マリアーナ嬢を我が国に迎え入れ、現国王の甥である私、アルベルト・ルーベンソンの妻とする」 そう宣言されてマリアーナは隣国へと攫われる。 しかし、ルーベンソン公爵邸にて差し出された婚約契約書にある一文に疑念を覚える。 『婚約期間中あるいは婚姻後、子をもうけた場合、性別を問わず健康な子であれば、婚約もしくは結婚の継続の自由を委ねる』 さらには家庭教師から“精霊姫”の話を聞き、アルベルトの側近であるフランからも詳細を聞き出すと、自分の置かれた状況を理解する。 かつて自国が攫った“精霊姫”の血を継ぐマリアーナ。 そのマリアーナが子供を産めば、自分はもうこの国にとって必要ない存在のだ、と。 そうであれば、早く子を産んで身を引こう――。 そんなマリアーナの思いに気づかないアルベルトは、「婚約中に子を産み、自国へ戻りたい。結婚して公爵様の経歴に傷をつける必要はない」との彼女の言葉に激昂する。 アルベルトはアルベルトで、マリアーナの知らないところで実はずっと昔から、彼女を妻にすると決めていた。 ふたりは互いの立場からすれ違いつつも、少しずつ心を通わせていく。

追放された無能才女の私、敵国最強と謳われた冷徹公爵に「お飾りの婚約者になれ」と命じられました ~彼の呪いを癒せるのは、世界で私だけみたい~

放浪人
恋愛
伯爵令嬢エリアーナは、治癒魔法が使えない『無能才女』として、家族からも婚約者の王子からも虐げられる日々を送っていた。 信じていたはずの妹の裏切りにより、謂れのない罪で婚約破棄され、雨の降る夜に家を追放されてしまう。 絶望の淵で倒れた彼女を拾ったのは、戦場で受けた呪いに蝕まれ、血も涙もないと噂される『冷徹公爵』クロード・フォン・ヴァレンシュタインだった。 「俺の“お飾り”の婚約者になれ。お前には拒否権はない」 ――それは、互いの利益のための、心のない契約のはずだった。 しかし、エリアーナには誰にも言えない秘密があった。彼女の持つ力は、ただの治癒魔法ではない。あらゆる呪いを浄化する、伝説の*『聖癒の力』*。 その力が、公爵の抱える深い闇を癒やし始めた時、偽りの関係は、甘く切ない本物の愛へと変わっていく。 これは、全てを失った令嬢が自らの真の価値に目覚め、唯一無二の愛を手に入れるまでの、奇跡の物語。

完】異端の治癒能力を持つ令嬢は婚約破棄をされ、王宮の侍女として静かに暮らす事を望んだ。なのに!王子、私は侍女ですよ!言い寄られたら困ります!

仰木 あん
恋愛
マリアはエネローワ王国のライオネル伯爵の長女である。 ある日、婚約者のハルト=リッチに呼び出され、婚約破棄を告げられる。 理由はマリアの義理の妹、ソフィアに心変わりしたからだそうだ。 ハルトとソフィアは互いに惹かれ、『真実の愛』に気付いたとのこと…。 マリアは色々な物を継母の連れ子である、ソフィアに奪われてきたが、今度は婚約者か…と、気落ちをして、実家に帰る。 自室にて、過去の母の言葉を思い出す。 マリアには、王国において、異端とされるドルイダスの異能があり、強力な治癒能力で、人を癒すことが出来る事を… しかしそれは、この国では迫害される恐れがあるため、内緒にするようにと強く言われていた。 そんな母が亡くなり、継母がソフィアを連れて屋敷に入ると、マリアの生活は一変した。 ハルトという婚約者を得て、家を折角出たのに、この始末……。 マリアは父親に願い出る。 家族に邪魔されず、一人で静かに王宮の侍女として働いて生きるため、再び家を出るのだが……… この話はフィクションです。 名前等は実際のものとなんら関係はありません。

聖獣使い唯一の末裔である私は追放されたので、命の恩人の牧場に尽力します。~お願いですから帰ってきてください?はて?~

雪丸
恋愛
【あらすじ】 聖獣使い唯一の末裔としてキルベキア王国に従事していた主人公”アメリア・オルコット”は、聖獣に関する重大な事実を黙っていた裏切り者として国外追放と婚約破棄を言い渡された。 追放されたアメリアは、キルベキア王国と隣の大国ラルヴァクナ王国の間にある森を彷徨い、一度は死を覚悟した。 そんな中、ブランディという牧場経営者一家に拾われ、人の温かさに触れて、彼らのために尽力することを心の底から誓う。 「もう恋愛はいいや。私はブランディ牧場に骨を埋めるって決めたんだ。」 「羊もふもふ!猫吸いうはうは!楽しい!楽しい!」 「え?この国の王子なんて聞いてないです…。」 命の恩人の牧場に尽力すると決めた、アメリアの第二の人生の行く末はいかに? ◇◇◇ 小説家になろう、カクヨムでも連載しています。 カクヨムにて先行公開中(敬称略)

【完結】辺境伯の溺愛が重すぎます~追放された薬師見習いは、領主様に囲われています~

深山きらら
恋愛
王都の薬師ギルドで見習いとして働いていたアディは、先輩の陰謀により濡れ衣を着せられ追放される。絶望の中、辺境の森で魔獣に襲われた彼女を救ったのは、「氷の辺境伯」と呼ばれるルーファスだった。彼女の才能を見抜いたルーファスは、アディを専属薬師として雇用する。

処理中です...