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第3章 月の巫女の花を求めて、いざ森へ
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「それでは、わたくしどもは予定通り、王都を発ちます! カレンを万全の状態にするため、月の巫女の花を見つけだすのだ!」
早朝の王城前広場。王太子レオン殿下の高らかな声が響き渡り、わたくし――フランボワーズ・ド・シャルティエはその様子を少し離れた場所から見つめていた。
出発の日がついに来てしまった、というのが正直な感想である。ほんの数週間前までは、わたくしは「婚約破棄された捨てられ令嬢」として平穏に暮らせるはずだったのだが……。いまや王太子殿下と聖女カレン様に巻き込まれ、危険かもしれない“月の巫女の花探しの旅”へ同行することになってしまった。
「フランボワーズ様、どうかお気をつけて行ってらっしゃいませ」
見送りに来てくれた母が、わたくしの手をぎゅっと握りしめる。
「大丈夫ですわ、お母様。セイラン殿下も可能な限りサポートしてくださると仰っていましたし、護衛騎士も大勢いますもの」
そう微笑んではみるものの、母の表情は不安げだ。わたくし自身も、不安がないと言えば嘘になる。
しかし、同時にわくわくした高揚感もあるのが不思議だ。珍しい薬草や動物に出会えるかもしれないし、何より今回の目的である“月の巫女の花”は昔から文献にだけ存在した幻の花。錬金術マニアとしては、こんなに胸が躍る話はそうそうない。
◇ 旅の一行
今回の旅には、次のメンバーが参加する。
王太子レオン殿下……旅の発起人。やる気だけは十分だが、政務を放棄しているため王宮内での評判は悪化中。
聖女カレン様……体調が安定しないままの参加。殿下と離れたくないと言い張り、無理をおして馬車に乗る。
フランボワーズ(わたくし)……錬金術&薬草学担当。護衛騎士に守られながら、実地調査と薬の調合を担う。
騎士団数名……国王陛下とセイラン殿下の手配により選ばれた護衛要員。皆が頭を抱えているが、王太子命令には逆らえない。
従者や侍女数名……カレン様や殿下の身の回りの世話をするが、危険地帯には深入りしない方針。
本当は第二王子セイラン殿下も同行を申し出てくれたが、王都を空けると政務に大きな支障が出るため、やむなく断念したらしい。ただし、「何かあればすぐに連絡するように」と、使いの鳥(魔力で通信できる特殊な使い魔)を一羽渡してくださった。
「もしものときは、必ず知らせてくれ。……フランボワーズ、どうか無事で」
そう言われたとき、わたくしは少し胸がきゅんとした。
◇ 出発、そして早速のトラブルの予感
王都から東に延びる街道を、わたくしたち一行は馬車数台と騎馬隊で進んでいく。大通りこそ整備されているが、辺境へ近づくにつれ道は荒れ、森や湿地が増えてくる。
「ねえ、フランボワーズ。あんた、本当にあの花の在処を知ってるんでしょうね?」
馬車の中、レオン殿下がやや疑いの目でこちらを見てくる。
「いえ、“確実にここにある”と断言できるほどの情報はありませんわ。あくまでも古文献を元に推測しただけです」
「なんだ、そうなのか? まあいい。俺はカレンのためならどこへでも行くからな」
殿下が意気込みを示す一方、ソファに座るカレン様はうつむいたまま。体調が芳しくないらしく、暑さと馬車の揺れで少し辛そうだ。
「カレン様、無理をなさらないで。お水を飲んでくださいな」
「……ありがとう、フランボワーズ様。すみません、足を引っ張っちゃって」
申し訳なさそうに微笑む彼女。その顔色の悪さが気になって、わたくしは簡易的に作った鎮静薬を差し出す。
「少し飲むだけで、楽になるはずです。眠くなるかもしれませんが……」
「はい、ありがとうございます……」
彼女は言われるがまま、薬を口に含む。しばらくすると、呼吸が落ち着き、目を閉じて小さく微睡(まどろ)み始めた。
「カレンの看病は任せたぞ、フランボワーズ。お前のその薬、本当によく効くらしいからな」
レオン殿下は軽い調子で言うが、内心では相当に不安なのだろう。カレン様をこんな状態で旅に連れ出して大丈夫なのかと、わたくしのほうがハラハラする。
――そして、出発して一日目の夜。早くも最初のトラブルがやってきた。
◇ 夜営地での不穏な影
森の手前にある小さな宿場町で、一行は夜営の準備を整えた。宿といっても質素な建物が数件あるだけの田舎町だが、疲れを癒やすには十分だ。
わたくしは今夜も薬の調合や道具のチェックをしようと、早めに夕食を済ませて部屋へ戻ろうとした。そのとき――誰かの話し声が聞こえた。
「……あの婚約破棄された侯爵令嬢だろ? 聞いた話じゃ、聖女よりすごい錬金術を使うとか……」
「しかも、運がやたら良いんだって? もしあれを自分のものにできたら……いやあ、いい金ヅルになるかもな」
怪しい男たちの笑い声が、廊下の先から響く。どうやら旅人風の男二人組が宿の片隅で酒を呑み交わしながら、わたくしについて話しているようだ。
(ひょっとして、わたくしが同行していることを知った不逞の輩が、何かを企んでいる……?)
不安にかられて耳を澄ますが、すぐに騎士が通りかかり、彼らは口をつぐんでしまった。
「フランボワーズお嬢様、こんなところにいらしたのですね」
護衛の騎士が声をかけてくる。どうやら巡回中らしい。
「先ほど、見慣れない男たちがうろついていました。万が一のこともありますので、今夜は部屋の鍵をしっかりお閉めください」
「……ええ、わかりました。ありがとうございます」
王太子殿下やカレン様は二階の部屋で休んでいる。騎士たちは宿の周囲を警護しているらしいが、男たちの声に妙な嫌な予感がする。
わたくしが何か事件に巻き込まれる可能性もあるし、あるいはカレン様が狙われるかもしれない。こんな辺境の地、まさか賊や山賊が出ないとも限らない。
結局、その夜は不安でなかなか眠れなかった。もっとも、【らっきーすとらいく】があるから大丈夫……かもしれないが、油断は禁物だ。
◇ 道中のモンスターと“らっきーすとらいく”
翌日、森の入り口付近へたどり着いた一行。まだ深くは入っていないが、辺りは鬱蒼(うっそう)と茂る木々に囲まれ、昼間なのに少し薄暗い。
王太子殿下は先頭に立ち、騎士たちが周囲を警戒しながら進む。カレン様は体調を考慮して馬車に乗ったままだ。わたくしも馬車に同乗していたが、「少し外の空気を吸いたいわ」と言って下車することにした。研究家の血が騒ぐのだ。珍しい植物が目に入るたびに、写真(スケッチ)を撮りたい気持ちになる。
と、そのとき。森の奥から奇妙な鳴き声が聞こえた。
「グルルルル……」
「な、なんだ!? 魔物か……?」
騎士たちが剣や槍を構える。視線の先に現れたのは、黒い毛並みを持った狼のような獣。普通の狼よりも体が大きく、目は赤く光っている。
「出たな、魔狼か……!」
騎士の一人が叫ぶ。どうやら森には一定数の魔物が棲みついていると聞いていたが、こんなに早く遭遇するとは思わなかった。
魔狼は低く唸り声をあげ、こちらを睨みつける。わたくしは思わず馬車の横へ後ずさる。
「フランボワーズ、下がってろ! 騎士たち、迎撃だ!」
レオン殿下は腕をまくり、胸に佩(は)いた短剣を抜いた。普段は政務を放り出している殿下だが、一応剣術は習っているらしい。
騎士たちが隊列を組み、魔狼を包囲しようとする……が、魔狼は素早く動き回っては威嚇するだけで、なかなか攻撃範囲に入ってこない。
「くっ……どうする? 森の奥から仲間を呼ばれたら面倒だ」
騎士が焦る。わたくしも何かできないかと考えを巡らせる。手元にあるのは、簡易的な麻酔薬スプレーや煙幕など、護身用に作ってきた錬金道具だけ。魔力で操るわけではないし、どれほど効果があるか……。
だが、ここで突然、魔狼が予想外の方向へ動いた。なんと、馬車のほうへ向かって突進し始めたのだ。
「まずい! カレン様が……!」
わたくしは咄嗟に腰から小瓶を取り出すと、先端の噴射口を魔狼の方向に向ける。騎士たちが追いつくより先に、魔狼はもう馬車の車輪に飛びかかろうとしている。
「うりゃっ――っ!」
勢いでスプレーを噴射した。白い煙がシュッと広がり、魔狼は鼻面を刺激されて身をよじる。おそらく麻酔草や刺激成分を混ぜたもので、かなり強い刺激があるはず。
「グルルッ……!」
魔狼は一瞬、動きを止めるように首を振り、その場に倒れ込んだ。どうやら効いたらしい。しかし――。
「まだ気絶はしていない……! 騎士殿、今です!」
すかさず騎士たちが魔狼を取り囲み、剣を突きつける。魔狼は完全に行動不能になる寸前まで弱っているが、息はあるようだ。
「助かった……フランボワーズ様か? 今の薬はなんだ……!」
「森でいざというときにと思って作った煙幕兼麻酔スプレーですわ。効きすぎたら危なかったですが、なんとかなりましたね」
そう安堵していると、なぜか急に森の奥から大きな物音がした。
「……! 追加の魔物かもしれない、みんな警戒しろ!」
騎士たちが構えると、茂みがバサバサと揺れて――出てきたのは、普通の鹿だった。どうやら、魔狼の捕食対象だったのか、逃げ遅れた鹿が驚いてここへ飛び出してきたようだ。
「なあんだ……びっくりした」
騎士たちが胸をなでおろし、レオン殿下もホッと息をつく。わたくしはというと、突発的にスプレーを使ったせいで指先がジンジンしているが、倒れ込んだ魔狼を見やりながら思う。
(良かった……【らっきーすとらいく】の恩恵か、ちょうどいいタイミングで麻酔が効いてくれたわ)
カレン様は馬車の中で震えていたが、ケガはないようだ。何よりだ。このように道中、どんな魔物やトラブルが待ち受けているかわからない。改めてこの旅の危険を思い知らされる出来事だった。
結局、その魔狼は動けないほど弱っており、騎士たちが森の奥へ遠ざけて放すことになった。とどめを刺す案も出たが、レオン殿下が「わざわざ殺す必要もないだろう」と言い、助ける形にしたのだ。どうやら殿下も、根っからの悪人というわけではないらしい。
◇ 迷いの森に足を踏み入れる
そんな騒動を経て、わたくしたち一行はさらに森の奥へと進む。道中、小川に架かる橋が壊れていたり、ぬかるみに車輪がはまりかけたり、細かなトラブルはいくつもあったが、【らっきーすとらいく】のおかげか大事には至らなかった。
「この先にある古い街道を抜ければ、月の巫女の花が見つかるとされる“月蝕の森”に近づくはずです」
地図を広げながら、わたくしは皆に説明する。森の名前からしていかにも怪しい雰囲気だが、文献によれば“月が沈むときに花弁が光り出す”などという伝承があるらしい。
王太子殿下もカレン様も、そこに希望を見出している様子だ。もしその花が見つかれば、カレン様の不安定な魔力を安定させ、聖女としての力を発揮できるようになる――そう信じている。
「へえ、面白いじゃないか。俺はそんな伝説、本当だと思っていなかったが……実際に見てみたいな、カレンも興味あるだろう?」
「……はい。見てみたいです、レオン様……」
カレン様はやはり体が怠そうだが、精神的には少しだけ前向きになったのか、弱々しく微笑んでいる。
(この調子でうまくいくといいのだけど……)
しかし、一方でわたくしは心の奥にひっかかるものを感じていた。
王太子殿下は「カレンのため」と言いながら、どこか自分の欲求を優先しているようにも見える。そもそも、月の巫女の花を探すという行動そのものが、王族としては冒険的すぎる。
何より、カレン様の不調が本当に魔力の乱れだけなのか――以前、手をとって魔力を感じ取ったときに抱いた違和感はまだ消えていない。
(もしかすると、この旅の途中で、カレン様の“聖女としての秘密”が明らかになるかもしれない……)
◇ 突如現れる“不審者”たち
それから数日、比較的平穏に旅は進んだ。森の中腹にある小高い丘で野営をすることになり、騎士たちがテントを張る。レオン殿下とカレン様は専用の大きなテントを使い、わたくしや従者たちは簡易テントで夜を過ごす手はずだ。
食事の準備も整い、わたくしは焚き火のそばで温かいスープをすすっていた。すると、森のほうからひそひそと複数の足音が近づいてくるのがわかる。
「誰だ? そこにいるのは!」
騎士たちが声を上げると、影から出てきたのは――あの宿場町で会話を盗み聞きした男たちではないか。
「よお、こんなところで野営とは、ずいぶん物好きだなあ」
男の一人が薄ら笑いを浮かべる。隣には似たような風貌の仲間が数名。どう見てもただの旅人や行商人には見えない。腰には武器らしきものを忍ばせている。
「我々は王太子殿下の護衛騎士だ。貴様らはいかなる用件でここに来た?」
騎士が厳しい声で問いただすと、男は肩をすくめる。
「へえ、王太子殿下とな? そりゃあ立派なお方がご同行とは知らなかった。俺たちはただ、噂を聞いてね。“珍しい花を探している錬金術師がいる”って。んで、ちょっと宝探しに乗っかろうかと思ったまでさ」
その言葉に、わたくしはギクリとする。彼らの狙いはやはり、月の巫女の花や、その情報。そして、わたくしの錬金術の技術かもしれない。もしかして、護符や特効薬でも作らせて金に換えようという魂胆だろうか。
「ふざけるな! これは王家の正式な行事だ。勝手に首を突っ込むな」
騎士が一喝すると、男たちは口々に下品な笑い声をあげる。
「へっへっへ、王家って言ったって、こんな森の中では関係ないだろ? 俺たちはただ、金になりそうなものを探してるだけさ。お前らこそ、危ない目に遭いたくなければ、素直に協力したらどうだ?」
レオン殿下もテントから顔を出し、険しい表情を浮かべる。
「おい、下賤(げせん)な輩が王族に口を利くとはいい度胸だな。今すぐ立ち去らなければ、お前たち全員……」
脅しをかけようとする殿下だが、男たちは人数が多い上、夜の森に仲間が潜んでいるかもしれない。わたくしは嫌な汗が流れるのを感じる。
「ひっ……レオン様……」
カレン様が不安そうに殿下の後ろに隠れる。状態が万全なら、カレン様の奇跡でどうにかなる場面かもしれないが、いまの彼女は魔力が不安定。奇跡どころか、また暴走してしまう危険もある。
「フランボワーズ……」
わたくしがどうにかできるのかと、殿下や騎士たちの視線が集まる。だが、相手は複数のならず者。スプレー一本でどうにかなる相手ではない。
しかし、ここで奇妙な“風”が森の奥から吹いた。枝葉がざわめき、月明かりが揺れる。それと同時に、わたくしの胸の奥が熱くなるような感覚――これが【らっきーすとらいく】の兆候かもしれない。
(こんなときに運が向くなんて、ちょっと都合良すぎじゃないかしら……でも信じてみるしかない!)
「……殿下、騎士の皆さん、あそこを見てください!」
思わず木立のほうを指差す。すると、ならず者たちが一斉にそちらを向く。その瞬間――バサッ! バサッ!と大きな羽音が響き、無数のコウモリたちが飛び立った。
どうやら、騒ぎに驚いて巣穴から一気に出てきたらしい。夜空を埋め尽くすようにコウモリが舞い、男たちは慌てて身を伏せる。
「うわっ、なんだこれ……!」
「目に入る! やめろ!」
男たちが混乱している隙に、騎士たちが一気に詰め寄り、武器を奪い、腕を押さえ込む。まさに棚ぼたのチャンスだ。
「くそっ……こんな偶然があるか……!」
押さえつけられた男が悔しそうに唸るが、騎士長が容赦なく縄をかける。わたくしもホッと胸をなでおろした。
(やっぱり【らっきーすとらいく】かもしれない……! この絶妙なタイミングでコウモリの群れが飛び出すなんて、普通ならありえないわ)
男たちはそのまま拘束され、帰り道にある駐在所まで引き渡すことになる。相手がどんな悪事を企んでいたかは定かではないが、彼らが旅の障害となるのは間違いなかった。
◇ 深まる不安と、救いの月明かり
騒動が落ち着いた夜更け、わたくしは森の外れにある小さな滝の近くで、一人で月を見上げていた。明日の行程もなかなか厳しいが、今日のうちに少し水を汲んでおきたかったのだ。
「フランボワーズ様……こんな遅い時間に、どうされたのですか?」
振り返ると、カレン様がそこに立っていた。体調を崩しているはずなのに、心配になってついてきたのだろうか。
「まあ、カレン様……休んでいないとダメじゃありませんか。夜は冷えますし、お身体に障りますわ」
「ごめんなさい……でも、さっきの騒ぎを見ていたら、怖くて眠れなくて……フランボワーズ様の姿が見えなかったから、つい気になってしまって」
カレン様のか細い声が、夜の静寂に溶ける。わたくしは苦笑しながら、彼女の肩にそっとショールをかけてあげる。
「ありがとう……」
「いえいえ。ちょうど水を汲んでいただけですわ。ほら、あそこの岩の裏側に小さな滝壺があって、冷たくて綺麗なお水が汲めそうなんです」
満天の星空と、柔らかな月明かり。森の静寂の中で、わたくしたちはしばし何も言わず景色を眺めた。
やがて、カレン様がぽつりとつぶやく。
「……王太子殿下は、わたしのことを心配してくれるけれど、最近はとても焦っているようにも見えるんです。“早く奇跡を取り戻させたい”、って。わたしは殿下のお役に立てているんでしょうか……」
不安そうな瞳が、わたくしを見上げる。
「カレン様、あまり自分を責めないでください。きっと殿下は、自分の無力さを痛感して焦っているのだと思います。あなたが好きで、でも助けられないもどかしさもあるでしょうし……」
「でも、わたしがもっと早くに奇跡をコントロールできていれば、殿下がこんな危険な旅をする必要だってないのに……」
その言葉に、わたくしは胸が痛む。彼女は本当に殿下のことを大切に思っているのだろう。けれど、同時に思う。
(王太子と聖女……それは本来“理想の組み合わせ”だと国民に期待されている。しかし、現実はうまく噛み合っていない。二人とも、どこかで無理をしているんじゃないだろうか)
わたくしはそっと、カレン様の手を握った。
「無理をしてしまえば、余計に魔力は乱れます。あなたの体調が戻るまでは、奇跡を無理やり使わないほうがいい。――それでも殿下が焦るようなら、わたくしが止めますから」
「フランボワーズ様が……?」
「ええ。わたくし、婚約破棄された身とはいえ、一応“元婚約者”ですもの。レオン殿下には遠慮なく言えると思いますわ」
そう微笑むと、カレン様は小さく笑った。
「……ありがとうございます。なんだか、あなたはいつも不思議な安心感をくれる。王太子殿下が“お前は変なところで運がいいから、そばにいると何とかなる”って言ってた理由がわかるかもしれません」
(ああ、そこですか……【らっきーすとらいく】の話ですね)
とは思ったが、彼女が少しでも気が休まるならそれでいい。
◇ そして、見え始めた光
そんなふうに月夜の滝のほとりで話していると、ふいに木々の奥からふわりと光が差した気がした。
「……今、光らなかったかしら?」
カレン様も同じタイミングで気づいたようで、目を見開く。
「ええ、見えました。何か光るものが……」
わたくしはそっと足音を忍ばせ、木立の向こうへ回り込む。すると、月光が差し込む小さな空き地に、一輪の花が揺れていた。白く透き通った花びらが、一瞬だけ淡い光を放ったのだ。
「これって……もしかして、月の巫女の花……?」
伝承によると、本来はもっと大きな群生地があるはずだが、こんな辺境に一輪だけ咲いていてもおかしくはない。
わたくしがそっと近づいてみると、花びらの形状や手触りが、古文献の記述と似ていることに気づく。月の光を浴びている間、花の中心部が淡く光っているのも特徴と一致する。
「すごい……こんなところに咲いていたなんて……」
カレン様は呆然と花を見つめている。やや息が上がっている様子だが、それでも興奮しているようだ。
(これがもし本物なら……カレン様の魔力を安定させる手がかりになるかも)
「……カレン様、ここに立っていてください。この花に触れて、あなたの魔力がどう反応するかを試したいんです」
「は、はい……」
そしてわたくしは、カレン様の手をそっと誘導し、花びらに近づける。そこへ月光が差し込むと、花びらの揺らぎが一段と増す。微かに光りが強まった――かに見えた、その瞬間。
「……っ!?」
カレン様が突然、苦しそうに顔を歪めた。
「どうしました!? 大丈夫ですか?」
「……わかりません、胸がキリキリして……」
彼女は額に手を当て、片膝をつく。花が光ったまま、まるでカレン様の魔力を吸い寄せるかのように、周囲の空気が不穏に震えている。
「まさか、花のほうが彼女を拒んでいる……?」
確かに、伝承によれば“月の巫女の花”は真に聖なる魔力を持つ者には力を貸すが、不純な力や偽りの魔力を持つ者には拒絶反応を示すことがあるとか……。
(ということは、カレン様が真の聖女じゃない……? まさかそんな……)
「フランボワーズ……様……どうして……体が……熱い……」
カレン様はうわごとのように呟き、気を失いそうになる。急いで支えようとした瞬間、花びらがひときわ強い光を放ち――すっと闇に溶けるかのように、その姿を失った。
「え……消えた……?」
わたくしは呆然とそこに立ち尽くす。地面を見ると、花の茎すら残っていない。まるで幻だったかのように、その場には草の葉だけが揺れている。
カレン様は辛うじて意識を保っているが、その頬は蒼白だ。
「こんなことって……どういうことなの……」
わたくしは思わず呟く。予想していたのは、“花を見つけたらカレン様が救われる”という、いわば“希望の展開”だった。だが、現実は真逆。花はカレン様を拒絶したかのように姿を消した。
このままでは、わたくしたちが目指す“月の巫女の花の群生地”にたどり着いても、同じことが起きるかもしれない。カレン様の体がもたない可能性すらある。
しかも、今の彼女の様子を見る限り、“本当に聖女なのか”という疑念がますます強まってしまう。
「とりあえず、テントへ戻りましょう……。今日はもう休んで、明日以降の方針を殿下や騎士たちと相談しないと」
わたくしはカレン様を支えながら、ゆっくりと野営地へ戻る。彼女の脈をとりながら、頭の中は混乱しっぱなしだ。
(いったいカレン様は何者なの? 本当に聖女なのか、それとも……?)
もしかすると、彼女自身も自分の正体を知らないでいるのかもしれない。王太子レオン殿下は“奇跡を起こした”という噂を鵜呑みにして、彼女を聖女と信じているだけなのではないか。
だけど、それを今すぐ殿下に問い詰めたところで、何が変わるのだろう。カレン様を否定することは、同時に“レオン殿下が間違った選択をしていた”と突きつけることになる。それはつまり、国内の混乱を招くかもしれない。
――夜空を見上げると、月はどこか寂しげに薄雲に隠れていた。まるで、この先の行方を暗示するように。
月の巫女の花を探す旅は、単なる薬草探しでは終わらない予感がする。むしろ、カレン様が抱える“秘密”を暴き立て、王家の在り方を大きく揺るがす事態になりかねない。
わたくしは胸の奥で大きく息をつき、カレン様を優しく抱きかかえる。その頬は冷たく、震えが止まらない。
「――どうか、この旅が大きな災いに転ばず、少しでも良い方向へ進みますように……」
まだ見ぬ“月の巫女の花”の群生地へ向かう道程は、波乱の幕開けを告げている。それでも進まなければならない。わたくしにできることは、薬草学と【らっきーすとらいく】を最大限活かして、カレン様と皆を守ること――そして、真実を見届けることだけだ。
こうして、わたくしたちは先行きの不安を抱えながらも、さらに森の奥深くへと足を踏み入れていく。
果たして“月の巫女の花”は本当にカレン様を救ってくれるのか。それとも、この花をきっかけに隠された事実が明るみに出て、すべてが崩れ落ちてしまうのか。
――旅はまだ続く。
今は、ただ足を止めないこと。そして、この森の先に眠る“何か”をこの目で確かめること。
わたくしはカレン様を支えながら、そっと決意を新たにするのだった。
早朝の王城前広場。王太子レオン殿下の高らかな声が響き渡り、わたくし――フランボワーズ・ド・シャルティエはその様子を少し離れた場所から見つめていた。
出発の日がついに来てしまった、というのが正直な感想である。ほんの数週間前までは、わたくしは「婚約破棄された捨てられ令嬢」として平穏に暮らせるはずだったのだが……。いまや王太子殿下と聖女カレン様に巻き込まれ、危険かもしれない“月の巫女の花探しの旅”へ同行することになってしまった。
「フランボワーズ様、どうかお気をつけて行ってらっしゃいませ」
見送りに来てくれた母が、わたくしの手をぎゅっと握りしめる。
「大丈夫ですわ、お母様。セイラン殿下も可能な限りサポートしてくださると仰っていましたし、護衛騎士も大勢いますもの」
そう微笑んではみるものの、母の表情は不安げだ。わたくし自身も、不安がないと言えば嘘になる。
しかし、同時にわくわくした高揚感もあるのが不思議だ。珍しい薬草や動物に出会えるかもしれないし、何より今回の目的である“月の巫女の花”は昔から文献にだけ存在した幻の花。錬金術マニアとしては、こんなに胸が躍る話はそうそうない。
◇ 旅の一行
今回の旅には、次のメンバーが参加する。
王太子レオン殿下……旅の発起人。やる気だけは十分だが、政務を放棄しているため王宮内での評判は悪化中。
聖女カレン様……体調が安定しないままの参加。殿下と離れたくないと言い張り、無理をおして馬車に乗る。
フランボワーズ(わたくし)……錬金術&薬草学担当。護衛騎士に守られながら、実地調査と薬の調合を担う。
騎士団数名……国王陛下とセイラン殿下の手配により選ばれた護衛要員。皆が頭を抱えているが、王太子命令には逆らえない。
従者や侍女数名……カレン様や殿下の身の回りの世話をするが、危険地帯には深入りしない方針。
本当は第二王子セイラン殿下も同行を申し出てくれたが、王都を空けると政務に大きな支障が出るため、やむなく断念したらしい。ただし、「何かあればすぐに連絡するように」と、使いの鳥(魔力で通信できる特殊な使い魔)を一羽渡してくださった。
「もしものときは、必ず知らせてくれ。……フランボワーズ、どうか無事で」
そう言われたとき、わたくしは少し胸がきゅんとした。
◇ 出発、そして早速のトラブルの予感
王都から東に延びる街道を、わたくしたち一行は馬車数台と騎馬隊で進んでいく。大通りこそ整備されているが、辺境へ近づくにつれ道は荒れ、森や湿地が増えてくる。
「ねえ、フランボワーズ。あんた、本当にあの花の在処を知ってるんでしょうね?」
馬車の中、レオン殿下がやや疑いの目でこちらを見てくる。
「いえ、“確実にここにある”と断言できるほどの情報はありませんわ。あくまでも古文献を元に推測しただけです」
「なんだ、そうなのか? まあいい。俺はカレンのためならどこへでも行くからな」
殿下が意気込みを示す一方、ソファに座るカレン様はうつむいたまま。体調が芳しくないらしく、暑さと馬車の揺れで少し辛そうだ。
「カレン様、無理をなさらないで。お水を飲んでくださいな」
「……ありがとう、フランボワーズ様。すみません、足を引っ張っちゃって」
申し訳なさそうに微笑む彼女。その顔色の悪さが気になって、わたくしは簡易的に作った鎮静薬を差し出す。
「少し飲むだけで、楽になるはずです。眠くなるかもしれませんが……」
「はい、ありがとうございます……」
彼女は言われるがまま、薬を口に含む。しばらくすると、呼吸が落ち着き、目を閉じて小さく微睡(まどろ)み始めた。
「カレンの看病は任せたぞ、フランボワーズ。お前のその薬、本当によく効くらしいからな」
レオン殿下は軽い調子で言うが、内心では相当に不安なのだろう。カレン様をこんな状態で旅に連れ出して大丈夫なのかと、わたくしのほうがハラハラする。
――そして、出発して一日目の夜。早くも最初のトラブルがやってきた。
◇ 夜営地での不穏な影
森の手前にある小さな宿場町で、一行は夜営の準備を整えた。宿といっても質素な建物が数件あるだけの田舎町だが、疲れを癒やすには十分だ。
わたくしは今夜も薬の調合や道具のチェックをしようと、早めに夕食を済ませて部屋へ戻ろうとした。そのとき――誰かの話し声が聞こえた。
「……あの婚約破棄された侯爵令嬢だろ? 聞いた話じゃ、聖女よりすごい錬金術を使うとか……」
「しかも、運がやたら良いんだって? もしあれを自分のものにできたら……いやあ、いい金ヅルになるかもな」
怪しい男たちの笑い声が、廊下の先から響く。どうやら旅人風の男二人組が宿の片隅で酒を呑み交わしながら、わたくしについて話しているようだ。
(ひょっとして、わたくしが同行していることを知った不逞の輩が、何かを企んでいる……?)
不安にかられて耳を澄ますが、すぐに騎士が通りかかり、彼らは口をつぐんでしまった。
「フランボワーズお嬢様、こんなところにいらしたのですね」
護衛の騎士が声をかけてくる。どうやら巡回中らしい。
「先ほど、見慣れない男たちがうろついていました。万が一のこともありますので、今夜は部屋の鍵をしっかりお閉めください」
「……ええ、わかりました。ありがとうございます」
王太子殿下やカレン様は二階の部屋で休んでいる。騎士たちは宿の周囲を警護しているらしいが、男たちの声に妙な嫌な予感がする。
わたくしが何か事件に巻き込まれる可能性もあるし、あるいはカレン様が狙われるかもしれない。こんな辺境の地、まさか賊や山賊が出ないとも限らない。
結局、その夜は不安でなかなか眠れなかった。もっとも、【らっきーすとらいく】があるから大丈夫……かもしれないが、油断は禁物だ。
◇ 道中のモンスターと“らっきーすとらいく”
翌日、森の入り口付近へたどり着いた一行。まだ深くは入っていないが、辺りは鬱蒼(うっそう)と茂る木々に囲まれ、昼間なのに少し薄暗い。
王太子殿下は先頭に立ち、騎士たちが周囲を警戒しながら進む。カレン様は体調を考慮して馬車に乗ったままだ。わたくしも馬車に同乗していたが、「少し外の空気を吸いたいわ」と言って下車することにした。研究家の血が騒ぐのだ。珍しい植物が目に入るたびに、写真(スケッチ)を撮りたい気持ちになる。
と、そのとき。森の奥から奇妙な鳴き声が聞こえた。
「グルルルル……」
「な、なんだ!? 魔物か……?」
騎士たちが剣や槍を構える。視線の先に現れたのは、黒い毛並みを持った狼のような獣。普通の狼よりも体が大きく、目は赤く光っている。
「出たな、魔狼か……!」
騎士の一人が叫ぶ。どうやら森には一定数の魔物が棲みついていると聞いていたが、こんなに早く遭遇するとは思わなかった。
魔狼は低く唸り声をあげ、こちらを睨みつける。わたくしは思わず馬車の横へ後ずさる。
「フランボワーズ、下がってろ! 騎士たち、迎撃だ!」
レオン殿下は腕をまくり、胸に佩(は)いた短剣を抜いた。普段は政務を放り出している殿下だが、一応剣術は習っているらしい。
騎士たちが隊列を組み、魔狼を包囲しようとする……が、魔狼は素早く動き回っては威嚇するだけで、なかなか攻撃範囲に入ってこない。
「くっ……どうする? 森の奥から仲間を呼ばれたら面倒だ」
騎士が焦る。わたくしも何かできないかと考えを巡らせる。手元にあるのは、簡易的な麻酔薬スプレーや煙幕など、護身用に作ってきた錬金道具だけ。魔力で操るわけではないし、どれほど効果があるか……。
だが、ここで突然、魔狼が予想外の方向へ動いた。なんと、馬車のほうへ向かって突進し始めたのだ。
「まずい! カレン様が……!」
わたくしは咄嗟に腰から小瓶を取り出すと、先端の噴射口を魔狼の方向に向ける。騎士たちが追いつくより先に、魔狼はもう馬車の車輪に飛びかかろうとしている。
「うりゃっ――っ!」
勢いでスプレーを噴射した。白い煙がシュッと広がり、魔狼は鼻面を刺激されて身をよじる。おそらく麻酔草や刺激成分を混ぜたもので、かなり強い刺激があるはず。
「グルルッ……!」
魔狼は一瞬、動きを止めるように首を振り、その場に倒れ込んだ。どうやら効いたらしい。しかし――。
「まだ気絶はしていない……! 騎士殿、今です!」
すかさず騎士たちが魔狼を取り囲み、剣を突きつける。魔狼は完全に行動不能になる寸前まで弱っているが、息はあるようだ。
「助かった……フランボワーズ様か? 今の薬はなんだ……!」
「森でいざというときにと思って作った煙幕兼麻酔スプレーですわ。効きすぎたら危なかったですが、なんとかなりましたね」
そう安堵していると、なぜか急に森の奥から大きな物音がした。
「……! 追加の魔物かもしれない、みんな警戒しろ!」
騎士たちが構えると、茂みがバサバサと揺れて――出てきたのは、普通の鹿だった。どうやら、魔狼の捕食対象だったのか、逃げ遅れた鹿が驚いてここへ飛び出してきたようだ。
「なあんだ……びっくりした」
騎士たちが胸をなでおろし、レオン殿下もホッと息をつく。わたくしはというと、突発的にスプレーを使ったせいで指先がジンジンしているが、倒れ込んだ魔狼を見やりながら思う。
(良かった……【らっきーすとらいく】の恩恵か、ちょうどいいタイミングで麻酔が効いてくれたわ)
カレン様は馬車の中で震えていたが、ケガはないようだ。何よりだ。このように道中、どんな魔物やトラブルが待ち受けているかわからない。改めてこの旅の危険を思い知らされる出来事だった。
結局、その魔狼は動けないほど弱っており、騎士たちが森の奥へ遠ざけて放すことになった。とどめを刺す案も出たが、レオン殿下が「わざわざ殺す必要もないだろう」と言い、助ける形にしたのだ。どうやら殿下も、根っからの悪人というわけではないらしい。
◇ 迷いの森に足を踏み入れる
そんな騒動を経て、わたくしたち一行はさらに森の奥へと進む。道中、小川に架かる橋が壊れていたり、ぬかるみに車輪がはまりかけたり、細かなトラブルはいくつもあったが、【らっきーすとらいく】のおかげか大事には至らなかった。
「この先にある古い街道を抜ければ、月の巫女の花が見つかるとされる“月蝕の森”に近づくはずです」
地図を広げながら、わたくしは皆に説明する。森の名前からしていかにも怪しい雰囲気だが、文献によれば“月が沈むときに花弁が光り出す”などという伝承があるらしい。
王太子殿下もカレン様も、そこに希望を見出している様子だ。もしその花が見つかれば、カレン様の不安定な魔力を安定させ、聖女としての力を発揮できるようになる――そう信じている。
「へえ、面白いじゃないか。俺はそんな伝説、本当だと思っていなかったが……実際に見てみたいな、カレンも興味あるだろう?」
「……はい。見てみたいです、レオン様……」
カレン様はやはり体が怠そうだが、精神的には少しだけ前向きになったのか、弱々しく微笑んでいる。
(この調子でうまくいくといいのだけど……)
しかし、一方でわたくしは心の奥にひっかかるものを感じていた。
王太子殿下は「カレンのため」と言いながら、どこか自分の欲求を優先しているようにも見える。そもそも、月の巫女の花を探すという行動そのものが、王族としては冒険的すぎる。
何より、カレン様の不調が本当に魔力の乱れだけなのか――以前、手をとって魔力を感じ取ったときに抱いた違和感はまだ消えていない。
(もしかすると、この旅の途中で、カレン様の“聖女としての秘密”が明らかになるかもしれない……)
◇ 突如現れる“不審者”たち
それから数日、比較的平穏に旅は進んだ。森の中腹にある小高い丘で野営をすることになり、騎士たちがテントを張る。レオン殿下とカレン様は専用の大きなテントを使い、わたくしや従者たちは簡易テントで夜を過ごす手はずだ。
食事の準備も整い、わたくしは焚き火のそばで温かいスープをすすっていた。すると、森のほうからひそひそと複数の足音が近づいてくるのがわかる。
「誰だ? そこにいるのは!」
騎士たちが声を上げると、影から出てきたのは――あの宿場町で会話を盗み聞きした男たちではないか。
「よお、こんなところで野営とは、ずいぶん物好きだなあ」
男の一人が薄ら笑いを浮かべる。隣には似たような風貌の仲間が数名。どう見てもただの旅人や行商人には見えない。腰には武器らしきものを忍ばせている。
「我々は王太子殿下の護衛騎士だ。貴様らはいかなる用件でここに来た?」
騎士が厳しい声で問いただすと、男は肩をすくめる。
「へえ、王太子殿下とな? そりゃあ立派なお方がご同行とは知らなかった。俺たちはただ、噂を聞いてね。“珍しい花を探している錬金術師がいる”って。んで、ちょっと宝探しに乗っかろうかと思ったまでさ」
その言葉に、わたくしはギクリとする。彼らの狙いはやはり、月の巫女の花や、その情報。そして、わたくしの錬金術の技術かもしれない。もしかして、護符や特効薬でも作らせて金に換えようという魂胆だろうか。
「ふざけるな! これは王家の正式な行事だ。勝手に首を突っ込むな」
騎士が一喝すると、男たちは口々に下品な笑い声をあげる。
「へっへっへ、王家って言ったって、こんな森の中では関係ないだろ? 俺たちはただ、金になりそうなものを探してるだけさ。お前らこそ、危ない目に遭いたくなければ、素直に協力したらどうだ?」
レオン殿下もテントから顔を出し、険しい表情を浮かべる。
「おい、下賤(げせん)な輩が王族に口を利くとはいい度胸だな。今すぐ立ち去らなければ、お前たち全員……」
脅しをかけようとする殿下だが、男たちは人数が多い上、夜の森に仲間が潜んでいるかもしれない。わたくしは嫌な汗が流れるのを感じる。
「ひっ……レオン様……」
カレン様が不安そうに殿下の後ろに隠れる。状態が万全なら、カレン様の奇跡でどうにかなる場面かもしれないが、いまの彼女は魔力が不安定。奇跡どころか、また暴走してしまう危険もある。
「フランボワーズ……」
わたくしがどうにかできるのかと、殿下や騎士たちの視線が集まる。だが、相手は複数のならず者。スプレー一本でどうにかなる相手ではない。
しかし、ここで奇妙な“風”が森の奥から吹いた。枝葉がざわめき、月明かりが揺れる。それと同時に、わたくしの胸の奥が熱くなるような感覚――これが【らっきーすとらいく】の兆候かもしれない。
(こんなときに運が向くなんて、ちょっと都合良すぎじゃないかしら……でも信じてみるしかない!)
「……殿下、騎士の皆さん、あそこを見てください!」
思わず木立のほうを指差す。すると、ならず者たちが一斉にそちらを向く。その瞬間――バサッ! バサッ!と大きな羽音が響き、無数のコウモリたちが飛び立った。
どうやら、騒ぎに驚いて巣穴から一気に出てきたらしい。夜空を埋め尽くすようにコウモリが舞い、男たちは慌てて身を伏せる。
「うわっ、なんだこれ……!」
「目に入る! やめろ!」
男たちが混乱している隙に、騎士たちが一気に詰め寄り、武器を奪い、腕を押さえ込む。まさに棚ぼたのチャンスだ。
「くそっ……こんな偶然があるか……!」
押さえつけられた男が悔しそうに唸るが、騎士長が容赦なく縄をかける。わたくしもホッと胸をなでおろした。
(やっぱり【らっきーすとらいく】かもしれない……! この絶妙なタイミングでコウモリの群れが飛び出すなんて、普通ならありえないわ)
男たちはそのまま拘束され、帰り道にある駐在所まで引き渡すことになる。相手がどんな悪事を企んでいたかは定かではないが、彼らが旅の障害となるのは間違いなかった。
◇ 深まる不安と、救いの月明かり
騒動が落ち着いた夜更け、わたくしは森の外れにある小さな滝の近くで、一人で月を見上げていた。明日の行程もなかなか厳しいが、今日のうちに少し水を汲んでおきたかったのだ。
「フランボワーズ様……こんな遅い時間に、どうされたのですか?」
振り返ると、カレン様がそこに立っていた。体調を崩しているはずなのに、心配になってついてきたのだろうか。
「まあ、カレン様……休んでいないとダメじゃありませんか。夜は冷えますし、お身体に障りますわ」
「ごめんなさい……でも、さっきの騒ぎを見ていたら、怖くて眠れなくて……フランボワーズ様の姿が見えなかったから、つい気になってしまって」
カレン様のか細い声が、夜の静寂に溶ける。わたくしは苦笑しながら、彼女の肩にそっとショールをかけてあげる。
「ありがとう……」
「いえいえ。ちょうど水を汲んでいただけですわ。ほら、あそこの岩の裏側に小さな滝壺があって、冷たくて綺麗なお水が汲めそうなんです」
満天の星空と、柔らかな月明かり。森の静寂の中で、わたくしたちはしばし何も言わず景色を眺めた。
やがて、カレン様がぽつりとつぶやく。
「……王太子殿下は、わたしのことを心配してくれるけれど、最近はとても焦っているようにも見えるんです。“早く奇跡を取り戻させたい”、って。わたしは殿下のお役に立てているんでしょうか……」
不安そうな瞳が、わたくしを見上げる。
「カレン様、あまり自分を責めないでください。きっと殿下は、自分の無力さを痛感して焦っているのだと思います。あなたが好きで、でも助けられないもどかしさもあるでしょうし……」
「でも、わたしがもっと早くに奇跡をコントロールできていれば、殿下がこんな危険な旅をする必要だってないのに……」
その言葉に、わたくしは胸が痛む。彼女は本当に殿下のことを大切に思っているのだろう。けれど、同時に思う。
(王太子と聖女……それは本来“理想の組み合わせ”だと国民に期待されている。しかし、現実はうまく噛み合っていない。二人とも、どこかで無理をしているんじゃないだろうか)
わたくしはそっと、カレン様の手を握った。
「無理をしてしまえば、余計に魔力は乱れます。あなたの体調が戻るまでは、奇跡を無理やり使わないほうがいい。――それでも殿下が焦るようなら、わたくしが止めますから」
「フランボワーズ様が……?」
「ええ。わたくし、婚約破棄された身とはいえ、一応“元婚約者”ですもの。レオン殿下には遠慮なく言えると思いますわ」
そう微笑むと、カレン様は小さく笑った。
「……ありがとうございます。なんだか、あなたはいつも不思議な安心感をくれる。王太子殿下が“お前は変なところで運がいいから、そばにいると何とかなる”って言ってた理由がわかるかもしれません」
(ああ、そこですか……【らっきーすとらいく】の話ですね)
とは思ったが、彼女が少しでも気が休まるならそれでいい。
◇ そして、見え始めた光
そんなふうに月夜の滝のほとりで話していると、ふいに木々の奥からふわりと光が差した気がした。
「……今、光らなかったかしら?」
カレン様も同じタイミングで気づいたようで、目を見開く。
「ええ、見えました。何か光るものが……」
わたくしはそっと足音を忍ばせ、木立の向こうへ回り込む。すると、月光が差し込む小さな空き地に、一輪の花が揺れていた。白く透き通った花びらが、一瞬だけ淡い光を放ったのだ。
「これって……もしかして、月の巫女の花……?」
伝承によると、本来はもっと大きな群生地があるはずだが、こんな辺境に一輪だけ咲いていてもおかしくはない。
わたくしがそっと近づいてみると、花びらの形状や手触りが、古文献の記述と似ていることに気づく。月の光を浴びている間、花の中心部が淡く光っているのも特徴と一致する。
「すごい……こんなところに咲いていたなんて……」
カレン様は呆然と花を見つめている。やや息が上がっている様子だが、それでも興奮しているようだ。
(これがもし本物なら……カレン様の魔力を安定させる手がかりになるかも)
「……カレン様、ここに立っていてください。この花に触れて、あなたの魔力がどう反応するかを試したいんです」
「は、はい……」
そしてわたくしは、カレン様の手をそっと誘導し、花びらに近づける。そこへ月光が差し込むと、花びらの揺らぎが一段と増す。微かに光りが強まった――かに見えた、その瞬間。
「……っ!?」
カレン様が突然、苦しそうに顔を歪めた。
「どうしました!? 大丈夫ですか?」
「……わかりません、胸がキリキリして……」
彼女は額に手を当て、片膝をつく。花が光ったまま、まるでカレン様の魔力を吸い寄せるかのように、周囲の空気が不穏に震えている。
「まさか、花のほうが彼女を拒んでいる……?」
確かに、伝承によれば“月の巫女の花”は真に聖なる魔力を持つ者には力を貸すが、不純な力や偽りの魔力を持つ者には拒絶反応を示すことがあるとか……。
(ということは、カレン様が真の聖女じゃない……? まさかそんな……)
「フランボワーズ……様……どうして……体が……熱い……」
カレン様はうわごとのように呟き、気を失いそうになる。急いで支えようとした瞬間、花びらがひときわ強い光を放ち――すっと闇に溶けるかのように、その姿を失った。
「え……消えた……?」
わたくしは呆然とそこに立ち尽くす。地面を見ると、花の茎すら残っていない。まるで幻だったかのように、その場には草の葉だけが揺れている。
カレン様は辛うじて意識を保っているが、その頬は蒼白だ。
「こんなことって……どういうことなの……」
わたくしは思わず呟く。予想していたのは、“花を見つけたらカレン様が救われる”という、いわば“希望の展開”だった。だが、現実は真逆。花はカレン様を拒絶したかのように姿を消した。
このままでは、わたくしたちが目指す“月の巫女の花の群生地”にたどり着いても、同じことが起きるかもしれない。カレン様の体がもたない可能性すらある。
しかも、今の彼女の様子を見る限り、“本当に聖女なのか”という疑念がますます強まってしまう。
「とりあえず、テントへ戻りましょう……。今日はもう休んで、明日以降の方針を殿下や騎士たちと相談しないと」
わたくしはカレン様を支えながら、ゆっくりと野営地へ戻る。彼女の脈をとりながら、頭の中は混乱しっぱなしだ。
(いったいカレン様は何者なの? 本当に聖女なのか、それとも……?)
もしかすると、彼女自身も自分の正体を知らないでいるのかもしれない。王太子レオン殿下は“奇跡を起こした”という噂を鵜呑みにして、彼女を聖女と信じているだけなのではないか。
だけど、それを今すぐ殿下に問い詰めたところで、何が変わるのだろう。カレン様を否定することは、同時に“レオン殿下が間違った選択をしていた”と突きつけることになる。それはつまり、国内の混乱を招くかもしれない。
――夜空を見上げると、月はどこか寂しげに薄雲に隠れていた。まるで、この先の行方を暗示するように。
月の巫女の花を探す旅は、単なる薬草探しでは終わらない予感がする。むしろ、カレン様が抱える“秘密”を暴き立て、王家の在り方を大きく揺るがす事態になりかねない。
わたくしは胸の奥で大きく息をつき、カレン様を優しく抱きかかえる。その頬は冷たく、震えが止まらない。
「――どうか、この旅が大きな災いに転ばず、少しでも良い方向へ進みますように……」
まだ見ぬ“月の巫女の花”の群生地へ向かう道程は、波乱の幕開けを告げている。それでも進まなければならない。わたくしにできることは、薬草学と【らっきーすとらいく】を最大限活かして、カレン様と皆を守ること――そして、真実を見届けることだけだ。
こうして、わたくしたちは先行きの不安を抱えながらも、さらに森の奥深くへと足を踏み入れていく。
果たして“月の巫女の花”は本当にカレン様を救ってくれるのか。それとも、この花をきっかけに隠された事実が明るみに出て、すべてが崩れ落ちてしまうのか。
――旅はまだ続く。
今は、ただ足を止めないこと。そして、この森の先に眠る“何か”をこの目で確かめること。
わたくしはカレン様を支えながら、そっと決意を新たにするのだった。
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