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第三十九話 並び立つという選択
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第三十九話 並び立つという選択
帝国の長期協定を断ってから、王都は不思議な均衡の上にあった。
帝国は露骨な圧力をかけない。
王家も挑発しない。
商人連合は静かに内陸流通を強化し続ける。
揺れていた天秤は、いま、水平に近い。
王城の回廊。
「帝国使節より通達。現行条件を維持すると」
報告が届く。
つまり――様子見。
カイゼルはゆっくりと頷く。
「無理に押さない、か」
「こちらが折れぬと分かったのでしょう」
ユリウスが淡々と答える。
勝利ではない。
だが敗北でもない。
自立の第一歩。
夜。
公爵邸の庭園。
月明かりの下、私は一人で立っていた。
「……来ると思っておりました」
足音。
振り返らずとも分かる。
「いつから気づいていた」
カイゼルの声。
「評議会のときから」
私はゆっくり振り返る。
以前とは違う顔。
焦りも、怒りもない。
ただ、責任を背負った男の顔。
「俺は未熟だった」
率直な言葉。
「ええ」
否定しない。
「だが」
彼は続ける。
「逃げなかった」
「存じております」
沈黙。
風が木々を揺らす。
「レティシア」
名を呼ばれる。
「俺の隣に立つか」
甘い囁きではない。
懇願でもない。
覚悟の問い。
「守ると決めた」
「ええ」
「だが一人では重い」
正直な言葉。
私は目を細める。
「王は孤独なものですわ」
「分かっている」
「それでも、支えは必要」
私は静かに歩み寄る。
「並び立つとは、支えることではございません」
彼がわずかに息をのむ。
「共に背負うことです」
甘さも、拍手も、幻想もない。
「覚悟はございますか」
「ある」
即答。
迷いはない。
私は小さく笑う。
「ならば」
夜風が柔らかく吹く。
「私は隣に立ちましょう」
支えるのではない。
従うのでもない。
並び立つ。
王と王妃として。
遠く、王城の塔が月に照らされる。
揺れた王座。
だが落ちなかった。
そして今。
孤独な背中は、二つになる。
甘い未来ではない。
楽な道でもない。
だが。
選んだ道。
並び立つという選択。
それが、国の新しい形となるのですわ。
帝国の長期協定を断ってから、王都は不思議な均衡の上にあった。
帝国は露骨な圧力をかけない。
王家も挑発しない。
商人連合は静かに内陸流通を強化し続ける。
揺れていた天秤は、いま、水平に近い。
王城の回廊。
「帝国使節より通達。現行条件を維持すると」
報告が届く。
つまり――様子見。
カイゼルはゆっくりと頷く。
「無理に押さない、か」
「こちらが折れぬと分かったのでしょう」
ユリウスが淡々と答える。
勝利ではない。
だが敗北でもない。
自立の第一歩。
夜。
公爵邸の庭園。
月明かりの下、私は一人で立っていた。
「……来ると思っておりました」
足音。
振り返らずとも分かる。
「いつから気づいていた」
カイゼルの声。
「評議会のときから」
私はゆっくり振り返る。
以前とは違う顔。
焦りも、怒りもない。
ただ、責任を背負った男の顔。
「俺は未熟だった」
率直な言葉。
「ええ」
否定しない。
「だが」
彼は続ける。
「逃げなかった」
「存じております」
沈黙。
風が木々を揺らす。
「レティシア」
名を呼ばれる。
「俺の隣に立つか」
甘い囁きではない。
懇願でもない。
覚悟の問い。
「守ると決めた」
「ええ」
「だが一人では重い」
正直な言葉。
私は目を細める。
「王は孤独なものですわ」
「分かっている」
「それでも、支えは必要」
私は静かに歩み寄る。
「並び立つとは、支えることではございません」
彼がわずかに息をのむ。
「共に背負うことです」
甘さも、拍手も、幻想もない。
「覚悟はございますか」
「ある」
即答。
迷いはない。
私は小さく笑う。
「ならば」
夜風が柔らかく吹く。
「私は隣に立ちましょう」
支えるのではない。
従うのでもない。
並び立つ。
王と王妃として。
遠く、王城の塔が月に照らされる。
揺れた王座。
だが落ちなかった。
そして今。
孤独な背中は、二つになる。
甘い未来ではない。
楽な道でもない。
だが。
選んだ道。
並び立つという選択。
それが、国の新しい形となるのですわ。
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