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第2話 聖女ですが、定時勤務はお断りします
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第2話 聖女ですが、定時勤務はお断りします
王宮からの呼び出しは、予想より早かった。
婚約破棄から三日目。
まだ私の周囲では「円満解消だったらしい」「聖女様、余裕すぎない?」などという噂が、上品とも下品ともつかない速度で広まっている最中だというのに。
「シャマル・マセラティ公爵令嬢、至急登城を」
――至急、ね。
私は朝の紅茶を半分ほど残したまま、ため息をついた。
「呼び出し理由、聞いてる?」
侍女に尋ねると、困ったような顔で首を横に振られる。
「『今後の聖女としての在り方について』とだけ……」
「はいはい、分かりやすい」
要するに、話し合いという名の“既成事実化”だ。
王宮の会議室に通されると、そこには国王陛下、宰相、そして数名の高官が揃っていた。
全員が一様に、「説得する側の顔」をしている。
「シャマル」
国王が、重々しく口を開く。
「婚約は解消されたが、聖女としての責務は変わらぬ」
「うん、それは分かってる」
私は素直に頷いた。
そこで否定するほど子どもでもない。
「だがな、聖女は王宮に常駐し、国民のため尽くす存在だ」
――出た、常駐。
「えー……」
思わず声が漏れた。
「それ、前提として疑っていい?」
空気が一瞬、止まる。
「疑う、とは?」
「だってさ。
怪我人が出るたびに即治癒、疫病が出たら即対応。
それは分かるよ?」
私は指を一本立てた。
「でも、何も起きてない時間まで王宮で待機する必要、ある?」
宰相が眉をひそめる。
「聖女様、それは万一に備えて――」
「万一って、毎日起きるものじゃないでしょ」
私は首を傾げた。
「それに、私が王宮に常駐してると、
『聖女がいるから大丈夫』って油断、絶対出ると思うんだけど」
誰も即答できなかった。
その沈黙を見て、私は確信する。
ああ、やっぱり誰も“効率”で考えてなかったんだな、と。
「必要な時に呼んでくれれば、全力でやるよ」
「でも、何もない時間まで拘束されるのは、ちょっと割に合わない」
国王が低く唸る。
「……聖女が、そのような損得勘定を口にするとは」
「命の話だからこそでしょ」
私は間髪入れずに返した。
「無償奉仕が当たり前って考え方、
長く続いた国ほど、見直した方がいいと思うよ」
今度は、完全に誰も言葉を挟めなくなった。
私は追撃する。
「だから提案。
非常勤。呼び出し制。拘束時間は時給換算」
「……時給?」
宰相が鸚鵡返しに呟いた。
「うん。
拘束される時間が発生したら、その分だけ」
私はにっこりもしなかったし、睨みもしなかった。
ただ、事務的に話しただけだ。
「それが嫌なら、別にいいよ。
無理に使ってもらわなくても」
――ここで、国王の顔色が変わった。
“使わなくてもいい”
その選択肢が、最初から存在しなかったことに、ようやく気づいたらしい。
「……少し、時間をもらおう」
「どうぞ」
私は即答した。
「その間、急患が出たら呼んでね。
その時は、ちゃんと仕事するから」
会議室を出るとき、背後から重たい視線を感じた。
でも振り返らない。
私は聖女だけど、
人生を王宮に預けた覚えはない。
「さて」
廊下の窓から差し込む光を見ながら、私は小さく呟く。
「サブスク生活、ちゃんと成立させないとね」
安定は、自分で作るものだ。
王宮からの呼び出しは、予想より早かった。
婚約破棄から三日目。
まだ私の周囲では「円満解消だったらしい」「聖女様、余裕すぎない?」などという噂が、上品とも下品ともつかない速度で広まっている最中だというのに。
「シャマル・マセラティ公爵令嬢、至急登城を」
――至急、ね。
私は朝の紅茶を半分ほど残したまま、ため息をついた。
「呼び出し理由、聞いてる?」
侍女に尋ねると、困ったような顔で首を横に振られる。
「『今後の聖女としての在り方について』とだけ……」
「はいはい、分かりやすい」
要するに、話し合いという名の“既成事実化”だ。
王宮の会議室に通されると、そこには国王陛下、宰相、そして数名の高官が揃っていた。
全員が一様に、「説得する側の顔」をしている。
「シャマル」
国王が、重々しく口を開く。
「婚約は解消されたが、聖女としての責務は変わらぬ」
「うん、それは分かってる」
私は素直に頷いた。
そこで否定するほど子どもでもない。
「だがな、聖女は王宮に常駐し、国民のため尽くす存在だ」
――出た、常駐。
「えー……」
思わず声が漏れた。
「それ、前提として疑っていい?」
空気が一瞬、止まる。
「疑う、とは?」
「だってさ。
怪我人が出るたびに即治癒、疫病が出たら即対応。
それは分かるよ?」
私は指を一本立てた。
「でも、何も起きてない時間まで王宮で待機する必要、ある?」
宰相が眉をひそめる。
「聖女様、それは万一に備えて――」
「万一って、毎日起きるものじゃないでしょ」
私は首を傾げた。
「それに、私が王宮に常駐してると、
『聖女がいるから大丈夫』って油断、絶対出ると思うんだけど」
誰も即答できなかった。
その沈黙を見て、私は確信する。
ああ、やっぱり誰も“効率”で考えてなかったんだな、と。
「必要な時に呼んでくれれば、全力でやるよ」
「でも、何もない時間まで拘束されるのは、ちょっと割に合わない」
国王が低く唸る。
「……聖女が、そのような損得勘定を口にするとは」
「命の話だからこそでしょ」
私は間髪入れずに返した。
「無償奉仕が当たり前って考え方、
長く続いた国ほど、見直した方がいいと思うよ」
今度は、完全に誰も言葉を挟めなくなった。
私は追撃する。
「だから提案。
非常勤。呼び出し制。拘束時間は時給換算」
「……時給?」
宰相が鸚鵡返しに呟いた。
「うん。
拘束される時間が発生したら、その分だけ」
私はにっこりもしなかったし、睨みもしなかった。
ただ、事務的に話しただけだ。
「それが嫌なら、別にいいよ。
無理に使ってもらわなくても」
――ここで、国王の顔色が変わった。
“使わなくてもいい”
その選択肢が、最初から存在しなかったことに、ようやく気づいたらしい。
「……少し、時間をもらおう」
「どうぞ」
私は即答した。
「その間、急患が出たら呼んでね。
その時は、ちゃんと仕事するから」
会議室を出るとき、背後から重たい視線を感じた。
でも振り返らない。
私は聖女だけど、
人生を王宮に預けた覚えはない。
「さて」
廊下の窓から差し込む光を見ながら、私は小さく呟く。
「サブスク生活、ちゃんと成立させないとね」
安定は、自分で作るものだ。
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