婚約破棄されたのでサブスク聖女始めました ―平民がダメ?なら侯爵令嬢にしますが、だから何?―

ふわふわ

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第32話 一緒にやった方が楽だと、全員が気づく

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第32話 一緒にやった方が楽だと、全員が気づく

 

 気づけば、
 王宮で“相談”という言葉を聞く回数が増えていた。

 命令じゃない。
 指示でもない。
 ましてや、圧でもない。

 「どう思いますか」
 「一緒に確認してもらえますか」

 ――その前置き。

「……これ、
 昔じゃ考えられなかったよね」

 私は、医務局から届いた相談書を読みながら呟いた。

 内容は単純。
 判断基準に照らせば問題ない。
 でも念のため、意見を聞きたい。

 “責任を押しつける相談”じゃない。
 “共有する相談”。

 午前中。
 定例の合同打ち合わせが行われた。

 医務局。
 文官部門。
 侍女長。
 そして――私。

 以前なら、
 全員が私の顔色をうかがっていた場だ。

「このケースですが」

 発言したのは、
 まだ若い文官だった。

「判断基準上は問題ありませんが、
 後続の対応を考えると、
 こちらの案が楽かと」

 “楽”。

 その言葉が、
 誰にも否定されなかった。

「確かに」

「それなら、
 次回も流用できますね」

「記録も簡単だ」

 私は、黙って聞いていた。

 議論が、
 私抜きで進んでいく。

 それが、
 一番いい。

 打ち合わせ後。
 宰相が、少し感慨深そうに言った。

「……皆、
 前より表情が柔らかい」

「でしょ」

 私は、頷く。

「恐怖がなくなると、
 余裕が出る」

「余裕が出ると?」

「人に聞ける」

 午後。
 王太子ステルヴィオが、
 珍しく昼の時間帯に現れた。

「……最近、
 “俺が決める”って
 言わなくなったな」

「いいこと」

 私は、即答する。

「決める人が、
 増えたってことだから」

 王太子は、
 少しだけ笑った。

「父上も、
 似たようなことを言っていた」

「何て?」

「“全部自分で決めていた頃より、
 今の方が楽だ”と」

「それが答え」

 私は、紅茶を一口飲む。

「一人で抱える権力は、
 重いだけ」

「分けた権力は、
 調整が必要だけど、
 楽」

 王太子は、
 少し考えてから言った。

「……君、
 本当に権力に興味がないな」

「ないよ」

 私は、即答する。

「興味があるのは、
 生活」

「楽で、
 安定してて、
 急に壊れないやつ」

 彼は、吹き出した。

「……結果的に、
 一番強い」

 夜。
 私は、今日の記録をまとめながら考える。

 反対から始まった改革。
 条件付きの同意。
 本音の衝突。
 数字による整理。

 その先に残ったのは――
 協力した方が楽だ、という共通認識。

 誰も理想を語らない。
 誰も正義を振りかざさない。

 ただ、
 楽で、
 続けられて、
 壊れにくい。

 それだけ。

「さて」

 私は、ペンを置く。

「これで、
 “戻したい派”は
 完全に消えたかな」

 もう、戻す理由がない。

 だって今は――
 一緒にやった方が、
 全員が楽なのだから。

 安定したサブスク生活は、
 いつの間にか――
 **国全体の“最適解”**になっていた。

 次に変わるとしたら、
 制度じゃない。

 この“当たり前”を、
 どう次の世代に渡すか。

 それが、
 次の課題だ。
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