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第31話 味方になった人は、もう裏切らない
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第31話 味方になった人は、もう裏切らない
人が本当に味方になる瞬間は、
賛成したときじゃない。
助けられたときでもない。
――捨てられなかったと知ったときだ。
最近、それをはっきり感じる。
王宮の廊下ですれ違う人たちの視線が、
変わった。
探るでもなく、
怯えるでもなく、
期待するでもない。
確認してくる。
――この仕組みは、
まだ続くか?
午前。
定例会議の場で、
ひとつの小さな異変があった。
「……その件ですが」
発言したのは、
かつて私に“前例がない”と食ってかかってきた人物だ。
以前なら、
周囲の顔色を見てから話していた。
今は違う。
「判断基準に沿えば、
この対応で問題ありません」
言い切った。
しかも、
私の方を見ずに。
私は、何も言わなかった。
必要がない。
会議後、
宰相が小声で言う。
「……ずいぶん、
変わりましたね」
「うん」
私は、頷く。
「守られた人は、
守る側に回る」
午後。
以前、判断が遅れて数字を落とした元責任者――
今は補佐の立場の彼が、
資料を持ってきた。
「聖女殿、
確認を」
「どうしたの」
「判断基準の見直し案です」
私は、少し驚いた。
「君が?」
「はい」
彼は、少し照れたように続ける。
「……同じ失敗を、
他の人にさせたくなくて」
それが、
“味方”だ。
利害じゃない。
恐怖でもない。
経験だ。
夕方。
王太子ステルヴィオが、
いつもの場所に現れた。
「……最近、
裏で動く連中が減った」
「当然」
私は、即答する。
「裏で動く理由が、
なくなった」
「切られない。
話せば聞かれる。
失敗しても、
立て直せる」
「全部、
分かっちゃったからね」
王太子は、少し考えてから言った。
「……怖くないのか?」
「何が?」
「人が、
離れなくなったことが」
私は、少しだけ考える。
「怖いよ」
正直に言った。
「でもね」
一拍置く。
「裏切られるより、
重たい」
「でも、
その重さは」
私は、窓の外を見る。
「責任の重さ」
王太子は、
静かに息を吐いた。
「……父上も、
同じことを言っていた」
「“人が残る国は、
扱いづらいが、
強い”と」
「正解」
私は、頷く。
夜。
私は、今日の記録を閉じた。
反対派は、
声を失ったわけじゃない。
ただ――
孤立した。
そして、
切られなかった人たちは、
もう戻らない。
なぜなら、
戻る理由がない。
「さて」
私は、軽く伸びをする。
「これで、
“サブスク聖女”は
個人の制度じゃなくなったね」
一人の聖女の都合から始まった話は、
いつの間にか――
人を縛らず、人を残す仕組みになった。
味方になった人は、
もう裏切らない。
だってこの国は、
裏切るより――
一緒にやった方が、
ずっと楽だと知ってしまったのだから。
人が本当に味方になる瞬間は、
賛成したときじゃない。
助けられたときでもない。
――捨てられなかったと知ったときだ。
最近、それをはっきり感じる。
王宮の廊下ですれ違う人たちの視線が、
変わった。
探るでもなく、
怯えるでもなく、
期待するでもない。
確認してくる。
――この仕組みは、
まだ続くか?
午前。
定例会議の場で、
ひとつの小さな異変があった。
「……その件ですが」
発言したのは、
かつて私に“前例がない”と食ってかかってきた人物だ。
以前なら、
周囲の顔色を見てから話していた。
今は違う。
「判断基準に沿えば、
この対応で問題ありません」
言い切った。
しかも、
私の方を見ずに。
私は、何も言わなかった。
必要がない。
会議後、
宰相が小声で言う。
「……ずいぶん、
変わりましたね」
「うん」
私は、頷く。
「守られた人は、
守る側に回る」
午後。
以前、判断が遅れて数字を落とした元責任者――
今は補佐の立場の彼が、
資料を持ってきた。
「聖女殿、
確認を」
「どうしたの」
「判断基準の見直し案です」
私は、少し驚いた。
「君が?」
「はい」
彼は、少し照れたように続ける。
「……同じ失敗を、
他の人にさせたくなくて」
それが、
“味方”だ。
利害じゃない。
恐怖でもない。
経験だ。
夕方。
王太子ステルヴィオが、
いつもの場所に現れた。
「……最近、
裏で動く連中が減った」
「当然」
私は、即答する。
「裏で動く理由が、
なくなった」
「切られない。
話せば聞かれる。
失敗しても、
立て直せる」
「全部、
分かっちゃったからね」
王太子は、少し考えてから言った。
「……怖くないのか?」
「何が?」
「人が、
離れなくなったことが」
私は、少しだけ考える。
「怖いよ」
正直に言った。
「でもね」
一拍置く。
「裏切られるより、
重たい」
「でも、
その重さは」
私は、窓の外を見る。
「責任の重さ」
王太子は、
静かに息を吐いた。
「……父上も、
同じことを言っていた」
「“人が残る国は、
扱いづらいが、
強い”と」
「正解」
私は、頷く。
夜。
私は、今日の記録を閉じた。
反対派は、
声を失ったわけじゃない。
ただ――
孤立した。
そして、
切られなかった人たちは、
もう戻らない。
なぜなら、
戻る理由がない。
「さて」
私は、軽く伸びをする。
「これで、
“サブスク聖女”は
個人の制度じゃなくなったね」
一人の聖女の都合から始まった話は、
いつの間にか――
人を縛らず、人を残す仕組みになった。
味方になった人は、
もう裏切らない。
だってこの国は、
裏切るより――
一緒にやった方が、
ずっと楽だと知ってしまったのだから。
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