魔王山田、誠実に異世界を征服する

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第一部《魔王VS勇者》編

第35話【魔王山田、グッズを販売する】

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王都カレスタ某所。

裏通りの一角にひっそりと佇む建物。バルガスとイリヤが建物の前で立ち話をしていると、山田が現れた。

「よう、来たぞ」 

「魔王様、お待ちしておりました」

「悪いね。お忍びで来てもらって」 

「日中堂々と商会に行ったらみんなビビって客減るだろうからな」 

「ご配慮感謝いたします」

バルガスが深々と頭を下げる。

「……今日はサイリスはいないんだね? ライラがガッカリしそうだ」 イリヤが尋ねる。

「あぁ、ちょっと別件でな。そろそろ残党の掃除が始まるからバタバタしてるんだ」

「いよいよ始まるのかい」

「魔王様、お話の続きは中で」

バルガスが建物の奥へと案内した。

 * * *

「おぉ……この服めちゃくちゃいいな」

「ありがとうございます! お似合いですよ。ご希望でしたら礼服に軍服、外交で圧力をかける服などもご用意できますよ」 

ライラが笑顔で応えた。

「なんだい、その物騒な服は」 イリヤが呆れる。

(魔族の人類アレルギーが薄まってきたらライラに魔軍の軍服とか発注しようかな。カッコよけりゃみんな飛びつくだろ)

「ゲオルグ、この前は世話になったな。鉄は今後も無限に需要あるだろうし、頼りにしてるぞ」

「ありがとうございます。さすが魔王様、未来が見えておられる」 ゲオルグが頭を下げる。

「魔王様、実はご相談がございまして」 それまでやりとりを聞いていたフリオが身を乗り出した。

「お、なんだ?」

「我が商会は富裕層よりも一般向けの宝飾品を得意としておりまして……魔王様のペンダントを一般向けに販売したいのです」

「ペンダント? 俺の?」

「はい。身につけていると“魔王様に敵対する意思はない”と意思表示できる、という売り文句で売り出したいと考えております」

「面白いこと考えたね。でもアピールだけしても意味ないだろ?」 イリヤが聞く。

「もちろん。ただ現在の王都の状況を考えると確実に売れますので……なんとか魔王様のお力で。もちろん利益は魔王様にも還元いたします」 

「フリオもだんだん遠慮なくなってきたね」 ライラが呆れたように言った。

(面白いこと考えるな……今もすでに“意味もなく王国民に手を出したら消し炭にするぞ”と命令してるんだけど。王国民は魔族だからと勝手にビビってるわけで……丸儲けだな)

「よし、乗った。販売を許可しよう。兵士にもペンダントについて伝えておく。つけていればなんでも見逃すってわけじゃないからな」

「ありがとうございます! すでにいくつか作っておりまして……ライラも見てもらえるか?」 フリオがケースを取り出す。

「もちろん」

「それでしたら私も魔王様仕様の馬車などを作りたいですな。皆安心して乗るでしょう。魔王様、是非!」

バルガスが熱のこもった声を上げる。

「えっ! それなら私も魔王デザインのカバンを!」 

「食品もできそうだね。魔王パンとか?」

(こいつら魔王をなんだと思ってるんだ……ま、儲かるからいいか)

「わかったわかった。また具体的なリスト作って提案してくれ」

 * * *

「魔王様、実はいくつかの商会長から魔王様に会いたいと打診を受けておりまして」バルガスが話題を切り出した。

「魔族との取引に前向きなところ出てきたのか。いい兆候だ」

「マギア方面に運んでいくのは見られていますからね」 ゲオルグが補足する。

「かといって貢がされてる様子もなく私たちが羽振りがいいのを見て焦ったんだろうね」 イリヤが笑った。

「じゃあそろそろ認可制も検討するか。軌道に乗ってきたらぼったくるけど」

「あの……私達は……」バルガスが不安そうに聞く。

「初期会員ってことで特別に免除だ。泣いて喜べ」

「ありがとうございます!」 それを聞いてバルガスは感激の面持ちで頭を下げた。

「もう少し他の商会は締め出してほしいなぁ……」 ライラがつぶやく。

(こいつ心の声がダダ漏れになってやがる)

「あと東のブルーネの商人からも相談されてるんだ。このまま王国との取引を続けて大丈夫なのかって。大丈夫だって言ってやったんだけどね」

「ブルーネか。海沿いの商業国家だから是非欲しいな」

「私が言う筋合いじゃないけど王国みたいにやったらどうなんだい?」

「イリヤってなんだかんだで優しいよな。そろそろ挨拶に行こうかな」


【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
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