魔王山田、誠実に異世界を征服する

nexustide400

文字の大きさ
37 / 115
第一部《魔王VS勇者》編

第37話【ライエル王国民の日常】

しおりを挟む

王都カレスタの酒場。

「お! お前もつけてるのか」

「やっと手に入ったよ、ペンダント」

「すぐ売り切れるから俺もこの前朝から並んだよ」

「これつけてると魔族の兵士に襲われないって本当かな?」

「どうだろうな。でもつけてるとちょっと気がラクになる」

「確かに」

「正直、魔族の兵士も慣れてきたよ。悪いことしなけりゃ別に襲われるわけでもないし」

「なんか物の値段も下がってきたよな。家族と相談して少し広い部屋に引っ越そうかと思ってるんだ」

「いいなぁ、俺も採石場の仕事いって稼ごうかな。結構おいしいって聞いたし」

「マジかよ。あれって例のやつだろ? おっかねぇ」

「まぁな。でも俺達に降ってくるわけじゃないし、稼げるときに稼がないと」

 * * *

王都カレスタの公園。

「おーい! こっちだ!」

「あ、いたいた。久しぶり! 二人とも」

「久しぶり! 卒業以来だよね」

「うん。私はフーシアで就職しちゃったからね」

「無事で良かった。もうすぐ軍が攻めるって新聞に書いてたから心配してたんだぞ」

「なんとか家族みんなで脱出して王都にきたんだ」

「住むところは大丈夫? 紹介しようか?」

「ホント? ありがとう! 今、親戚のところでお世話になってるんだ。王都の方が安全って聞いて来たけど、本当に魔族が歩いてるんだね。正直怖いよ」

「確かに恐ろしいけど、別に襲われたりしないぞ」

「あ、そうだ! ペンダント買いに行ったら? ほら、これ。なんか魔王公認とかって売り出されてて、つけてると襲われないんだって」

「そうなの?」

「でもずっと売り切れてるだろ」

「友達に聞いたんだけど、ライラ商会で公認バッグも売ってるんだって。そっちは朝から並べばまだ手に入るって」

「じゃあ明日早速買いにいこうかな。本当にありがとう。また色々教えてもらえると助かるな」

「いいって。落ち着いたらまたゆっくり話そうな」

 * * *

王都カレスタの兵舎。

「お前ら、なにしてるんだ。ちゃんと準備しておかないと魔族の軍曹にどやされるぞ」

「このままでいいのかって話してたんですよ」

「どういうことだ?」

「いや、俺達魔王のために働いてるんでしょ? わけわかんないですよ」

「お前は馬鹿か。陛下がいらっしゃるだろ」

「え、でも陛下は……」

「それ以上言ったらさすがに俺も見逃せんぞ」

「すいません」

「でも陛下ってなんか変わられたよな。以前よりも堂々とされているというか」

「それってやっぱり魔王に……」

「お前、いい加減にしろ! 陛下はこのような状況下でも我々のために必死に尽力されているんだぞ」

「そ、そうですよね」

「確かデランド公爵も自ら処断されたんですよね。人身売買組織撲滅も指揮されたって」

「そうだ。今後どうなるかわからないからこそ俺達が陛下を全力でお支えするべきだろ?」

「そうですね……すいません。自分も陛下のために頑張ります」

「よし、そろそろいくぞ。今度のフーシアでの討伐戦は陛下が直接前線に来られるそうだ」

「本当ですか? 俺達も頑張らないと」

 * * *

王都カレスタのレストラン。

「今日はどうしたの? なにか話があるって?」

「ふたりとも聞いて。私ライラ商会に就職決まったの!」

「え、凄い!」

「超人気の職場だよね」

「でしょでしょ。面接でライラさんに会ったんだけどもう感動しちゃって、勢いで一生ついていきますって言っちゃった」

「あ、でもあそこめちゃくちゃ厳しいって言われてない?」

「あとほら……最近売り出してるカバン……って、それ例のやつじゃん!」

「え? 当たり前でしょ。ライラさんの新作なんだよ?」

「でも公認ってことは魔王とつながってるってことでしょ? 就職して大丈夫なの?」

「実は面接でそれとなく聞いたんだ。私も正直不安だったからね。そしたら心配いらないって」

「どういうこと? 魔王だよ?」

「詳しくは聞けなかったんだけどお金にうるさいイケメンなんだって」

「やっぱりつながってるんだ……ていうかイケメンなんだ」

「魔王なのにお金にうるさいの?」

「みんなが思ってるようなイメージじゃないって言ってた。もちろん恐ろしい力は持ってるみたいだけど」

「実際に売り出してもお咎めないってことはそうなのかもね」

「私ちょっと買うの控えてたけど、問題ないならライラ商会で買おうかな。香水も欲しいし」

「ホント? 私も商会で頑張るから是非買ってよ」

 * * *

王都カレスタの商店街。

「なにあの大行列。どこの店?」

「イリヤ商会でしょ。例のパンじゃない?」

「あー……魔王パン……大丈夫なの? あれ」

「二人とも食べてないのか。安いしめちゃくちゃ美味いぞ。うちなんて子どもが毎日あれ食べたいって」

「え、大丈夫なの? 変なもの入ってるんじゃ?」

「もうかなり食べてるけど別になにもないぞ」

「でも魔王公認って……あぁでもイリヤさんだしなぁ……あの人なら普通に魔王と商売しそう」

「前に店で言いがかりつけた客を蹴り飛ばしてたの見たことあるよ、私」

「でもなんであんなに並んでるの? 安くて美味しいから?」

「新聞に広告載ってたけどなんかいっぱい買ったら魔王ペンダントの抽選ができるって。パン以外に魔王ケーキなんかも対象らしい」

「え! 嘘! 私も並んでくる!」

「私も夫の分ないから並んでこないと。教えてくれてありがとう!」

「おーい、抽選だからなー!」


【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様

あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。 死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。 「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」 だが、その世界はダークファンタジーばりばり。 人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。 こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。 あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。 ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。 死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ! タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。 様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。 世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。 地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~

津ヶ谷
ファンタジー
 綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。 ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。  目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。 その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。  その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。  そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。  これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

処理中です...