魔王山田、誠実に異世界を征服する

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第一部《魔王VS勇者》編

第38話【魔王山田、魔法を厳選する】

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魔王城執務室。

山田は椅子に座ったまま、腕を組んでうなっていた。

(これまでなるべく魔法の枠はケチってきたけど、そろそろ便利な新規魔法でも習得しようかなぁ)

彼の頭に、習得済みの魔法リストが浮かぶ。

攻撃魔法《ファイア》《アイス》《サンダー》《インパクト》

防御魔法《プロテクト》

回復魔法《ヒール》

飛行魔法《フライ》

腐食魔法《ロット》

(先代魔王の話と勇者の魔法の数を考えると、多分俺も“超魔力”で20以上は覚えられると思うけど、すでに8かぁ……枠埋めるのためらうなぁ……入れ替えできればなぁ……サンダーとかいらないし)

そのとき執務室の扉がノックされ、サイリスが静かに入ってきた。

「魔王様、どうかされましたか?」

山田は少し考えてから口を開いた。

「ちょっと聞きたいんだけど、サイリスって魔法いくつ使えるんだ? 無理には聞かないけど」

彼女は微笑を浮かべ、丁寧に答える。

「10でございます。先日、また魔力を譲渡頂いたので、追加で習得できそうです」

「毎回占有使い切ってるってこと? マジかぁ」

「新しい魔法を習得されるのですか?魔王様でしたら、まだまだ余裕があるかと思いますが」

山田はどこか悩ましげに視線を遠くに向ける。

「そうなんだけどね。やっぱり領土拡張見据えて覚えたいし、悩むなぁ」

サイリスは、じっと山田の顔を見つめた。

「ん?どうかした? 俺なんか変?」

視線に気づいた山田が首をかしげると、彼女はすぐに目を逸らした。

「い、いえ。失礼しました」

「やっぱり疲れてるんじゃ? 最近ボーっとしてることあるし、休暇取る?」

「いえ、お気遣いありがとうございます。問題ございませんので」

「そっか。じゃあちょっと、みんなを集めてもらっていいかな?」

 * * *

魔王城講義室。

椅子が大量に並べられ、山田やサイリス、レイラの他、ギギ、親衛隊など多数の魔族が座っている。壇上にはセラとべリアムの姿。

セラは緊張で縮こまっていた。

「……あの、魔王様。本当に私が……?ギギ様の方が適任なのでは……?」

「ギギは戦闘特化みたいだし。っていうかそんなに緊張してたら進まないな、今回はベリアム中心にするか」

「わかりました!」

山田は座ったまま後ろを向くと大きな声で皆に伝える。

「今日みんなに集まってもらったのはもちろん魔法の勉強だ。ベリアムからみんながあまり知らないような便利魔法について紹介してもらって、あとは各々が質問する形で。早速始めてくれ」

ベリアムが魔法書を片手に講義を始める。

「はい! ではまずは知る人ぞ知る《メンタルドレイン》です。これは相手のモチベーションを削って自らのやる気を高める魔法で、戦闘ではあまり使い道がないですが、出世競争や商売では便利です。ただ、至近距離でやる必要があり、バレると確実に険悪になります」

講義室がざわついた。早速山田が尋ねる。

「それは魔力の強さに応じて効果が変わるのか?」

「はい。例えば魔王様が使われると、相手が鬱になって死にたくなってしまうかもしれません」

(是非欲しいな)

「ありがとう。続けてくれ」

「はい。次は《マナステッチ》です。道具なしで魔力糸で縫合ができるため、衛生兵には必須魔法ですが、普段の生活でも補修に便利に使えます。占有も微々たるものです」

「それは衣服以外でも?例えば鎧とか」最前列に座っているギギが質問する。

「はい。原理はよくわからないのですが、金属鎧や靴なども補修できるようです」

皆が興味深そうに聞き入り、レイラも熱心にメモを取っている。

「他に習得者がゼロに近い魔法なんかはないのか?」

「そうですね……」

べリアムが考えていると、側に立っていたセラが声を上げる。

「……あの、それでしたら《コール》がございます」

「なんだそれ?」

「それが、用途も全く不明で占有も異常に大きいということだけが記録に残っております」

(呼び出し?召喚か?)

「興味深いな。また詳しく教えてくれ。では続けてくれ」

 * * *

魔王城会議室。

「ベリアム、さっきの講義良かったぞ。また頼む」

「ありがとうございます!」

「魔王様、これが《コール》の魔法書です」

セラが山田に魔法書を差し出す。

「ありがとう、ってこれ中身真っ白じゃないか?」

「はい。ですので内容もよくわからず」

「ふーん、まぁ俺が保管しとく。さて二人に相談なんだ」

セラとベリアムが真剣に耳を傾ける。

「実は《アース》を取得しようと思ってるんだ。ギギに土の操作を見せてもらったんだけど、俺の魔力なら一気に道が作れそうだろ?」

「確かに魔王様ほどの魔力でしたら可能かと」

「あと地面陥没させたら飛べない勇者も下に落ちて生き埋めにできるんじゃないかって。暴走状態になっても埋まったままなら放置しておけばいいし、そのうち力尽きるだろ。なんで早く思いつかなかったかなぁ」

隣で聞いていたサイリスが目を見開く。

山田がレイラを見る。

「あーレイラ、すまんな」

「いえ……もう昔のことですから……」

「それでご相談というのは?アースの用途ですか?」

べリアムが山田に尋ねる。

「いや、アースで道を作っても雨が降ったら意味ないだろ?なんかいい魔法ないかなって」

「それでしたら《ソイルフィックス》が。土を固める魔法です。魔王様だと鉄のように固めてしまうかもしれませんが調整もできますので」

「そんな魔法があるのか、ふむふむ」

(街をちゃんとした道でつなぐ。これぞシミュレーションの定番。やるしかない!)

「よし、2つとも習得しよう。セラ、魔法書をお願いできるか?」

「はい、急いでお持ちします!」


【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
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