76 / 115
第一部《魔王VS勇者》編
第75話【魔王山田、バルロック王と決闘する】
しおりを挟む魔軍司令部。
「魔王様。ただ今戻りました! 関所は全て押さえました!」
ダリスが勢いよく報告に現れる。
「すごいな。もう制圧したのか」
「ありがとうございます。敵軍は指揮系統が混乱しているようで士気もかなり低いですね」
「よし、それじゃ……」
山田が静かに立ち上がった。
「終わらせるぞ」
* * *
ファーレン王国・首都サンロック。
魔軍の大攻勢によって、ファーレン王国軍は次々と制圧されていった。
各地で兵士が武器を捨て、次々投降していった。
上空から戦況を見渡す山田のもとに、ダリスが数人の部下を連れて飛来する。
「魔王様。主要な施設は押さえました。あとは王宮だけです」
「ご苦労。親衛隊を連れて行ってくる。ダリスも来るか?」
山田の誘いに、ダリスが一瞬だけ迷うような表情を浮かべた。
「大陸最強と言われるバルロック王とやり合ってみたいですが、俺が離れるわけにも」
「少しぐらい大丈夫じゃないか? まだ切り札があるかもしれないし、こっちも万全の体制で行くぞ」
「ありがとうございます! 少し待ってください」
ダリスが部下へ指示を出すと、しばらくして数名の精鋭たちが合流する。
「お待たせしました。禁軍の精鋭数名も呼びました」
「頼もしいな。行くか」
* * *
王宮。
王宮を護る騎士が襲いかかるも、親衛隊と禁軍の兵士たちが容赦なく斬り伏せていく。床に転がる武具と血の中、巨大な扉がきしむ音を立てて開かれた。
その先に広がっていたのは、広大な玉座の間だった。
「待ちくたびれたぞ、魔王」
玉座にどっしりと腰掛けていたバルロック王が立ち上がる。
「陛下! 我々も!」
騎士団長チェスターの声に応じて、騎士たちが一斉に武器を構える。広間に張り詰めた気配が漂った。
山田とバルロック王が正面から睨み合う。
「行け」
山田の一言で、ダリスとアイラを除いた親衛隊と禁軍兵士が前へ躍り出る。剣戟の音と魔法の光が玉座の間を満たしていく。
しばらくして──すべての騎士が地に伏していた。
「勝負になってねーな。こいつらも結構強いはずなんだがな」
バルロック王が苦笑する。
「こちとら散々勇者と殺し合ってるからな」
「勇者か……あんな化け物とやり合って撃退したんだろ? 大したもんだ」
「で、降参するのか? その様子だとやる気満々みたいだが。その盾はなんだ」
山田が目を留めたのは、バルロック王が構える巨大な盾だった。
「これはファーレン王国の国王が代々引き継ぐ神器──“アリアンシールド”だ」
「まーた神器か。聖剣と違って勇者以外でも持てるんだな」
「随分詳しいじゃねーか。さて、始めようぜ。三人まとめてでもいい……っ?!」
言い終える前に、アイラの姿が一瞬にして広間を駆ける。
斬撃が盾に弾かれ、音が鋭く響いた。
「……あっぶねぇ。ったく、魔王の配下はどいつもこいつもとんでもない強さだな」
アイラの目に殺気が宿る。
「アイラ、交代だ。ダリス、思う存分やってこい」
「ありがとうございます」
ダリスが剣を抜いて進み出る。
「魔王様、申し訳ありません」
アイラが悔しそうに戻ってくる。
「さっきのはなんだ?」
「はい。足に《アクセル》を。いつも奇襲で使っています」
「よく転倒しないな。──お、始まるぞ」
ダリスがバルロック王に斬りかかる。重厚な盾に阻まれ、すぐさま反撃が返ってくる。
「かってぇな」
「悪いが、あらゆる攻撃を防ぐとお墨付きの盾だ」
鋭い剣技の応酬。だが時間が経つにつれダリスの身体に傷が増えていく。
距離を取り、再び剣を構えたダリスが駆ける。
「《インパクト》!」
剣から放たれた衝撃が盾を上に弾き上げた。
「ぐっ!」
わずかな隙にダリスがバルロック王の懐に踏み込む。
「《アクセル》!」
剣が閃き、王の腕から血飛沫があがる。時間を与えずダリスが次々と連撃を叩き込む。
盾でしのぎきれず、ついにバルロック王が膝をつき、血を吐いた。
「がはっ……つえーな……」
ダリスが静かに山田の元へ戻る。
「魔王様。終わりました」
「お疲れ。さっきのって勇者がやってたやつか?」
「はい。またやり合う機会があったらやり返すつもりだったんですが」
「なるほどね」
山田は倒れたバルロック王の方へと歩いていく。
「すまねぇな。お前とやり合ってみたかったんだが、このザマだ」
「俺と戦いたいのか? いいぞ」
そう言って山田が《ヒール》をかけると、バルロック王の傷がみるみる癒えていく。
「は……?」
呆然とするバルロック王の隣で、ダリスが素っ頓狂な声を漏らす。
「魔王様?!」
「ほら、立て。アイラ、開始の合図を頼む」
「は、はいっ!」
アイラが急ぎ前に出る。
「もう色々とわけがわからんが、せっかくだから全力でいかせてもらうぜ」
バルロック王が剣と盾を構える。
山田は懐から魔導球を取り出した。
アイラが金貨を取り出し、上に弾く。落下と同時にバルロック王が猛然と駆け出す。
「よっと」
山田が魔導球に《インパクト》を加えて投げると、球は光のように飛んでいく。
盾に激突した瞬間、激しい衝撃でバルロック王が壁まで吹き飛ばされる。
「ほいっと」
もう一発。球が盾に叩きつけられ、盾が壁にめり込み、バルロック王の鎧が粉砕された。
「あの盾すごいな。本当に壊れないぞ」 山田が感心する。
「あの……魔王様……」
「なんだ? ダリス」
「いや、なんか自信なくなりそうです……」
ダリスがうなだれる。
「なんでだ? あいつ生きてるかな。生きてたらヒールしないと。おっと球も回収回収」
軽い足取りで歩いていく山田を見送りながら、ダリスとアイラは顔を見合わせて苦笑した。
【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
1
あなたにおすすめの小説
元万能技術者の冒険者にして釣り人な日々
於田縫紀
ファンタジー
俺は神殿技術者だったが過労死して転生。そして冒険者となった日の夜に記憶や技能・魔法を取り戻した。しかしかつて持っていた能力や魔法の他に、釣りに必要だと神が判断した様々な技能や魔法がおまけされていた。
今世はこれらを利用してのんびり釣り、最小限に仕事をしようと思ったのだが……
(タイトルは異なりますが、カクヨム投稿中の『何でも作れる元神殿技術者の冒険者にして釣り人な日々』と同じお話です。更新が追いつくまでは毎日更新、追いついた後は隔日更新となります)
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
神様の忘れ物
mizuno sei
ファンタジー
仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。
わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件
フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。
だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!?
体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
