81 / 115
第一部《魔王VS勇者》編
第80話【レイラ王女、兄に会う】
しおりを挟む魔王国がファーレン王国に侵攻を始めた頃。
王都カレスタにあるアリアン正教の教会でレイラは神父と言い争っていた。
「ですからカシウス様に会わせることはできません」
「これは王命です。あなた方はライエル王国と対立されるおつもりですか」
「カシウス様はアリアン正教の信徒となりました。彼が庇護を求めている以上、引き渡しには応じられません」
「そうですか」
レイラが傍らの女性になにかを伝える。
「どうされましたか?」 神父が尋ねる。
「明日の新聞であなたの寄付金横領の告発記事が掲載されます。すでに複数の新聞社が準備を進めています」 レイラが淡々と告げた。
「い、一体なにを……!」
「証拠も揃っています。聖都アークにいらっしゃる教皇聖下もいずれ知ることになりますね」
「ま、まさか……あれはデルロイ公爵に騙されて……」 神父が動揺する。
「恐らく過去の人身売買への関与も疑われると思いますので申し開きは父にお願いします。公爵は処刑されましたが」
「レイラ様! あなたのような方がこのような脅迫行為を!」
「私は事実を述べているだけです。ただ、兄に会わせて頂けるのでしたら……父も穏便に済ませるかもしれませんね。兄のことを心配していますから」
神父が全身を震わせレイラを睨みつけると、護衛の兵士がレイラの前に出る。
「いかがされますか?」
* * *
「お久しぶりです。お兄様」
「レ、レイラ?! どうしてここに……」
カシウスが立ち上がって壁際に後ずさる。
「お兄様の様子を見てきて欲しいとお父様にお願いされたんです」
「父上が? 誰も通すなと言ったのに、どうして……」
「兄に会いたいと丁寧にお願いしたら神父様は通してくれましたよ」
「くっ……もういいだろう。私は元気だと父上に伝えてくれ」
レイラがカシウスに近付いていく。
「お兄様。王城にお戻りになりませんか?」
「え? 王城? なにを言って……魔王が禁止したじゃないか!」
「山田様に許可して頂きましたので戻っても大丈夫ですよ」
「今更何を……あいつのせいで私がどんな目に遭ったか!」
「大変だったそうですね。山田様ももう少し考えるべきだったとおっしゃってました」
「さっきから山田……様? 一体どうしたんだ。本当にレイラなのか?」
カシウスの目にかすかに怯えの色が浮かぶ。
レイラが更に近付いていく。
「妹に向かってひどいことを言いますね。あなたの妹のレイラですよ」
「ち、近寄るな! まさか洗脳されて……」
レイラはカシウスの前に立つと微笑みながら兄を見上げる。
「洗脳だなんて。山田様はそのようなことはされません」
そう言ってカシウスの腕に触れる。直後、カシウスがよろめいた。
「っ?! 今なにをした! 来るなっ!」
慌てて逃げようとして尻餅をつく。レイラから逃げるように部屋の隅に向かう。
「お兄様。どこに逃げるのですか。外に逃げても味方はいませんよ」
「来るなっ! お前一体どうしたんだ!」
部屋の隅に追い詰められたカシウスの前に立つと、レイラは兄を見下ろして言った。
「お兄様。私、勇者を殺したんです」
部屋に一瞬沈黙が落ちた。
何を言われたのかわからずカシウスが呆然とする。
「は? ゆ、勇者……?」
「スラン様ですよ。本当に悩みましたが、決断するしかなかったんです」
「何を言って……そんなことできるわけが……」
「私に未練があったみたいで簡単に引っかかってくれました」
淡々と語るレイラに怯えきったカシウスが震え始める。
「私は人類の敵になってしまったんです。もう後戻りできないんです。わかって頂けますか?」
「レ……レイ……」
「山田様の支配を盤石にするためにお兄様が必要なんです」
「わ、私……ひぃっ……」
「カシウス」
突然名前で呼ばれたカシウスが恐怖で目を見開く。
「いつまで隠れているのですか? 」
「かっ……ひっ……」
「私の味方は大勢います。いつでも引きずり出せます」
顔が真っ青になっているカシウスにレイラが告げた。
「それとも、あなたも勇者のようになりたいですか?」
「た、たすけ……たすけて……」
「あなたは私の人形です。今後は私の言う通りに動いてください。いいですね?」
【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
1
あなたにおすすめの小説
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。
最強賢者の最強メイド~主人もメイドもこの世界に敵がいないようです~
津ヶ谷
ファンタジー
綾瀬樹、都内の私立高校に通う高校二年生だった。
ある日、樹は交通事故で命を落としてしまう。
目覚めた樹の前に現れたのは神を名乗る人物だった。
その神により、チートな力を与えられた樹は異世界へと転生することになる。
その世界での樹の功績は認められ、ほんの数ヶ月で最強賢者として名前が広がりつつあった。
そこで、褒美として、王都に拠点となる屋敷をもらい、執事とメイドを派遣してもらうことになるのだが、このメイドも実は元世界最強だったのだ。
これは、世界最強賢者の樹と世界最強メイドのアリアの異世界英雄譚。
スライムに転生した俺はユニークスキル【強奪】で全てを奪う
シャルねる
ファンタジー
主人公は気がつくと、目も鼻も口も、体までもが無くなっていた。
当然そのことに気がついた主人公に言葉には言い表せない恐怖と絶望が襲うが、涙すら出ることは無かった。
そうして恐怖と絶望に頭がおかしくなりそうだったが、主人公は感覚的に自分の体に何かが当たったことに気がついた。
その瞬間、謎の声が頭の中に鳴り響いた。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
