魔王山田、誠実に異世界を征服する

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第一部《魔王VS勇者》編

第80話【レイラ王女、兄に会う】

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魔王国がファーレン王国に侵攻を始めた頃。

王都カレスタにあるアリアン正教の教会でレイラは神父と言い争っていた。

「ですからカシウス様に会わせることはできません」

「これは王命です。あなた方はライエル王国と対立されるおつもりですか」

「カシウス様はアリアン正教の信徒となりました。彼が庇護を求めている以上、引き渡しには応じられません」

「そうですか」

レイラが傍らの女性になにかを伝える。

「どうされましたか?」 神父が尋ねる。

「明日の新聞であなたの寄付金横領の告発記事が掲載されます。すでに複数の新聞社が準備を進めています」 レイラが淡々と告げた。

「い、一体なにを……!」

「証拠も揃っています。聖都アークにいらっしゃる教皇聖下もいずれ知ることになりますね」

「ま、まさか……あれはデルロイ公爵に騙されて……」 神父が動揺する。

「恐らく過去の人身売買への関与も疑われると思いますので申し開きは父にお願いします。公爵は処刑されましたが」

「レイラ様! あなたのような方がこのような脅迫行為を!」

「私は事実を述べているだけです。ただ、兄に会わせて頂けるのでしたら……父も穏便に済ませるかもしれませんね。兄のことを心配していますから」

神父が全身を震わせレイラを睨みつけると、護衛の兵士がレイラの前に出る。

「いかがされますか?」

 * * *

「お久しぶりです。お兄様」

「レ、レイラ?! どうしてここに……」

カシウスが立ち上がって壁際に後ずさる。

「お兄様の様子を見てきて欲しいとお父様にお願いされたんです」

「父上が? 誰も通すなと言ったのに、どうして……」

「兄に会いたいと丁寧にお願いしたら神父様は通してくれましたよ」

「くっ……もういいだろう。私は元気だと父上に伝えてくれ」

レイラがカシウスに近付いていく。

「お兄様。王城にお戻りになりませんか?」

「え? 王城? なにを言って……魔王が禁止したじゃないか!」

「山田様に許可して頂きましたので戻っても大丈夫ですよ」

「今更何を……あいつのせいで私がどんな目に遭ったか!」

「大変だったそうですね。山田様ももう少し考えるべきだったとおっしゃってました」

「さっきから山田……様? 一体どうしたんだ。本当にレイラなのか?」

カシウスの目にかすかに怯えの色が浮かぶ。

レイラが更に近付いていく。

「妹に向かってひどいことを言いますね。あなたの妹のレイラですよ」

「ち、近寄るな! まさか洗脳されて……」

レイラはカシウスの前に立つと微笑みながら兄を見上げる。

「洗脳だなんて。山田様はそのようなことはされません」

そう言ってカシウスの腕に触れる。直後、カシウスがよろめいた。

「っ?! 今なにをした! 来るなっ!」

慌てて逃げようとして尻餅をつく。レイラから逃げるように部屋の隅に向かう。

「お兄様。どこに逃げるのですか。外に逃げても味方はいませんよ」

「来るなっ! お前一体どうしたんだ!」

部屋の隅に追い詰められたカシウスの前に立つと、レイラは兄を見下ろして言った。


「お兄様。私、勇者を殺したんです」


部屋に一瞬沈黙が落ちた。

何を言われたのかわからずカシウスが呆然とする。

「は? ゆ、勇者……?」

「スラン様ですよ。本当に悩みましたが、決断するしかなかったんです」

「何を言って……そんなことできるわけが……」

「私に未練があったみたいで簡単に引っかかってくれました」

淡々と語るレイラに怯えきったカシウスが震え始める。

「私は人類の敵になってしまったんです。もう後戻りできないんです。わかって頂けますか?」

「レ……レイ……」

「山田様の支配を盤石にするためにお兄様が必要なんです」

「わ、私……ひぃっ……」


「カシウス」


突然名前で呼ばれたカシウスが恐怖で目を見開く。

「いつまで隠れているのですか? 」

「かっ……ひっ……」

「私の味方は大勢います。いつでも引きずり出せます」

顔が真っ青になっているカシウスにレイラが告げた。

「それとも、あなたも勇者のようになりたいですか?」

「た、たすけ……たすけて……」


「あなたは私の人形です。今後は私の言う通りに動いてください。いいですね?」


【Invocation Protocol: ARIA/Target:YAMADA】
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