魔王山田、誠実に異世界を征服する

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第二部《転生者VS転生者》編

第120話【ノースランド連合】

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ノースランド連合。

それは大陸北部に位置するファルム共和国、グリア共和国、レモア共和国、ノルン共和国の4カ国が加盟する強固な国家連合である。

意思決定機関である最高評議会は各国の代表によって構成され、連合全体の方針を決定する。本来、こうした合議制は意思決定の遅れを招きがちだが、北部の過酷な環境がそれを許さなかった。

彼らは古くから強い団結力を持ち、生存のために最も合理的で現実的な政策を即座に採用する柔軟な強みを持っていた。

その象徴的な一つが、突出した才能を持つ若き3人の姉弟に連合軍の全権と指揮を任せるという、大胆な抜擢人事であった。

 * * *

レモア共和国の首都、その西方の要衝に位置するオルガナ要塞。

分厚い石壁に囲まれた作戦室で、3人の男女が地図を囲み、真剣な表情で議論を重ねていた。

「いよいよ帝国軍が来るのね。シュヴェルトの予想が当たったわね」

呟いたのは、長い銀髪を揺らす美女だった。 彼女の名はフレア。北方でも有数の美貌と謳われる長女であり、同時に連合最強の魔法使いでもある。

「レモアの民は反発していたが、残っていたら今頃悲惨な目に遭っていたな」

重厚な鎧に身を包んだ巨漢の男、末弟のガルムが腕を組んで言った。

「あぁ、強引にでも退去させて本当に良かったよ。残っていたらモルドラスの二の舞いだ」

地図に駒を置きながら答えたのは、人間離れした秀麗な容貌を持つ次男、シュヴェルトだ。連合の頭脳と呼ばれる彼もまた、険しい表情を崩さない。

フレアが深くため息をついた。

「モルドラスの話は未だに信じられない。あの狂った皇帝はともかく、勇者が虐殺に加担するなんて。本当かしら」

「大勢の同胞が命と引き換えに得た情報だ。間違いない」

シュヴェルトが断言すると、ガルムが悔しげに唸った。

「人類の守護者たる勇者がなぜそのようなことを……」

「本当ね。新しい勇者が誕生してあの狂人を倒してくれるのかと思ったら、狗に成り下がるなんて。反吐が出るわ」

「姉さんもガルムも、これ以上言っても仕方がないよ。ハッキリしているのは、北部の民は窮地に立たされたということだ」

その言葉に、3人の表情が改めて引き締まる。ガルムが力強く言った。

「東のノルン方面は将軍が死力を尽くして防衛すると約束された。自分達も託された以上、帝国軍を必ず撃退する」

「その通りだ、ガルム。ただ、魔軍が攻めてくる可能性は低いと考えている。これはもう願望に近いが」

「そうね。もし東西で攻勢をかけられたら、大地が味方してくれても限界があるわ」

フレアの言葉にシュヴェルトは頷き、分析を続けた。

「魔王はすでにモルドラスとファーレンの国境で帝国と睨み合っている以上、勇者を意識して北部に戦力は割きたくないはずだ」

「ノルン陥落後、攻めてこないのは少し不気味だな。兄さんの戦術が効いているのかもしれないが」

ガルムの言葉に、シュヴェルトは少し考え込む仕草を見せた。

「これも想像でしかないけど、魔王はそこまで急いでいないんじゃないかな。二人とも魔王国やライエル王国の話は聞いたと思うけど」

「困り果ててる私達とは対照的に、どんどん豊かになってるんでしょ。潜入させても入ってくる情報はお金の話ばかり。なんなのよ、あの魔王」

呆れたように言うフレアに、ガルムが続けた。

「先日の評議会でも、魔王と停戦協定を結べないか真剣に議論されていたな」

「実現したらこの苦境も少しマシにはなるね。でも、帝国軍に突破されたらなにもかも終わりだ」

シュヴェルトの言葉に、フレアとガルムが無言で頷く。

「改めて方針を確認するけど、もし勇者が来ていたら”倒せない”という前提で動くべきだと思ってる。姉さんであってもね」

シュヴェルトは姉の目を見て念を押した。

「私もそれは同意かな。そもそも勇者と魔王という存在自体が特殊で、倒せるのはお互いだけ、と考えたほうが自然」

「実際に先代勇者スランも魔王に倒されたみたいだしね。同様に、あの皇帝が来た場合も無理に倒そうとしない方がいい」

「それは断る。私が氷漬けにしてやるわ」

「姉さん……ダメだって。目的はあくまで帝国軍の撃退であって、帝国の打倒じゃない」

「ふん、わかってるわよ。でもチャンスがあったらやる。それで全て解決するんだから」

好戦的な姉の発言に、ガルムが苦笑した。

「姉さんはすぐに魔法で解決しようとするからな。以前の縁談もそれで台無しだ」

「ガルム、あんたから氷漬けにしようか?」

フレアの手元に冷気が集まり始めると、ガルムは慌てて両手を挙げて謝った。張り詰めた空気が一瞬だけ緩む。

シュヴェルトは二人のやり取りを見守った後、改めて力強く宣言した。

「ともかく、打てる手は全て打つんだ。幸い、共闘の話もギリギリ間に合いそうだ。勇者といえど、そう容易く突破させるつもりはない」

迫りくる最強の侵略者を前に、若き姉弟たちは覚悟を決めた。そして、勇者を迎え撃つ準備が着々と進められていった。


【Invocation Protocol: ARIA/Target:Surtr】



「アリア様、例の世界の経過報告です」


「あいつ倒された? そんなわけないか。ん~……ん? んんん? あれ、どういうこと?」


「嫌な予感がしますが、なにか考えがあるのかもしれません」


「なんでこの世界ってこんな奴ばっかり……これ以上介入できないし」


「少し気になることが。この街ですが……」


「細かいことは聞きたくなーい。考えたんだけど、いざとなったらあの女の派閥に入って押し付けるのはどう?」


「いよいよ女神としてのプライドすら捨て始めましたね」


「もうなりふり構ってられないわ。自分で言うのは嫌だからラファから取り巻きに相談してみて」


「はぁ……わかりました」
 
 
 
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