スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~

空松蓮司

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第62話 チェーンソーウーマン

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 ガガガガガガッ!! と連続した発砲音が響く。姿勢を低くし、流れ弾はシールドピースで防ぐ。

(エネルギーは無限じゃない。そろそろかな)

 射撃が止まる。

(G-AGE!)

 僕は立ち上がり、G-AGEの引き金に指を掛ける。けど、

「!?」

 僕は引き金に指を掛けた所で止まった。

「シキっちょ……?」
(なんだろうこの感じ……肌がピリつく。淀んだプレッシャーを感じる……!?)

 月上さんやツバサさんとはまた種類の違うプレッシャー……あの襲撃犯じゃない。一体誰だ?

「あ? なんだお前!!」

 襲撃犯の目がこっちに向く。その時、

「……吾輩わがはいの眠りをさまたげた罪は重いぞ」

 キュイィィィン!!! と甲高い音が荷物棚から聞こえた。全員が音の方向を向いた時にはそこにはもう何も無く、人影が襲撃犯の前に降りていた。

「あれは……」

 人影の正体は先ほど荷物棚に寝ていた人物だ。ただ当然寝袋は脱いでいて、代わりに白衣を羽織り、手には回転する刃の武器――チェーンソーを持っている。


「てめっ――!?」

 2閃。
 1閃目で襲撃犯ご自慢のサブマシンガンを斬り裂き、2閃目で襲撃犯の右腕を肩から斬り落とす。
 
「くっそ!!」

 襲撃犯は2歩下がるが、すぐさま追撃されチェーンソーに左腕も斬られる。

(ただのチェーンソーじゃない。回転する実体の刃の上に、さらにレーザーの刃が回転している。凄まじい破壊力だ。見てる限りかなり癖のある武器だけど、完璧に使いこなしている。何者だあの人)

 チェーンソーの使い手の姿を観察する。
 黒ニットの服で、上から白衣を羽織っていて、下はミニスカート。スカートには大量の工具が括り付いている。寝袋は脱いだくせにアイマスクは付けたままだ。科学者とか研究者とか、そういう印象を受ける。
 髪は基本黒だけどインナーカラーは黄緑のボブカット。常ににやけていて、得体の知れない雰囲気がある。

「ちくしょう! チェーンソーだと……!? ふざけた武器を使いやがって!!」

 すでに勝負はついている。完全に白衣の女性の間合いだ。しかも襲撃犯は両腕を失い、武器を持つことすらできない。
 なのに白衣の女性はすぐにとどめはささず、襲撃犯の両脚を斬り落とした。

「ぐっ!?」

 襲撃犯は立つこともできず床に倒れるが、白衣の女性は襲撃犯の髪を引っ張り上げ、座席に座らせる。

「ふざけた武器か。確かにな。音はうるさいし重いし繊細、唯一の長所と言えば破壊力ぐらいか。なぜ吾輩がこの武器をチョイスしているか、気になるだろう?」

 すでに襲撃犯は戦意を喪失。瞳には涙が浮かんでいる。

「死を重くするためさ。このゲームでは痛みも無いし、死んだとて生き返る。死に重みが無い。君のような人間を罰するためにはただ殺すだけでは軽いんだ。だけどねェ、このチェーンソーで頭のてっぺんから股の先まで斬られると、結構なトラウマ体験になるんだよ。物理的に君の体を痛めつけることはできないが、このやり方なら精神を蝕むことができる」
「あ、あぁ……!?」

 これ見よがしに白衣の女性はチェーンソーをキュインキュインと鳴らす。

「この音がいいんだ。耳をつんざくこの音が良い。スペースガールの体を削る際はもっと良い音が鳴る。魂に響く音だ」
「ご、ごめんなさい……すみません。ちょっと新しい武器を試したくて、はしゃいだだけです。乗客をキルしたことはちゃんと償い――」
「おっと勘違いしないでくれ。吾輩は君が乗客をキルしたことを責めているわけではない。そんなもの勝手にすればいいさ。吾輩の脳でノルアドレナリンとアドレナリンが分泌されているのはひとえに熟睡を邪魔されたためだよ」

 チェーンソーの音が鳴り響く。

「まぁ、ゲーム内で意識を絶つことはできないから実際には目を瞑って横になっていただけだけどねぇ」
「じゃ、じゃあ、熟睡じゃない……!」
「ふむ確かに。あっはっは! 別になんだっていいじゃないか。ムカついたから殺す。ただそれだけさ」

 列車が停止する。

(着いたかな。だとしたらもう少しで警察職の人が来る。時間を稼ごう)

 僕は白衣の女性に近づき、G-AGEを女性の後頭部に突きつける。

「や、やめてください。後は警察に任せましょう。その方はもう戦意を喪失しています……」
「ふむ。だから? もし吾輩が負けていたらコイツは吾輩を躊躇なくキルしていただろう。吾輩が戦意を喪失し、涙を流しながら懇願してもキルしていただろう。なのに吾輩が勝った場合は容赦しろと? コイツが戦意を喪失した場合は加減しろと? 常日頃から思っていたけど、世の中狂人クレイジーに甘いとは思わんかね」
「えっと、どっちが勝っていたとしても僕は止めてました。別に、誰に甘いとかってわけじゃありません。もし僕がクレイジーな人間に甘いのなら……僕はあなたを止めていない」
「おっと、可愛い顔して、結構言うじゃないか」

 白衣の女性は左手をぴくりと動かす。

「う、動いたら撃ちます」
「そうかい? それなら仕方ない」

 女性はチェーンソーを持った右手と、手ぶらの左手を上げる。
 そうやって白旗を演出しつつも、すぐさま体を反転させ、僕に斬りかかってきた。

(だと思った)

 1撃、2撃、3撃。僕がチェーンソーを躱すと、女性はニターっと笑って攻撃の手を止めた。

「やるねェ君! 完全に見切っている!」
(チェーンソーはかなり重いはず。なのに速い。なにか仕掛けが――)
「じゃあ、こんなのはどうだい?」

 女性はチェーンソーを持ってない左手を僕に向けた。
 白衣の長い裾から、銃口が覗く。

(仕込み銃!!)

 僕はG-AGEを撃ち、仕込み銃を撃ち抜く。

「――早いねェ。別に早撃ちは性分じゃないが、先手を取って撃ち負けるのは初めてだ」

 形状から見て散弾銃ショットガン。反応があと0.01秒遅れていたらやられていた!

「……いい加減にしないと、遊びじゃ済みませんよ」
「!?」

 僕が殺気を向けると、女性は素早く後ろへ下がった。

「面白いな、君。1つ確信だ。君は彼女を助けるために吾輩に立ち塞がったわけじゃない。

 奥の車両から多数の足音が響いてくる。
 足音を聞くと、白衣の女性は戦闘態勢を解いた。

「ふむ。もうちょっと君と遊びたいけど、そろそろうるさい連中が来る。吾輩はおいとましよう」

 女性は列車の壁にチェーンソーで穴を空ける。

「あなたは……」
「吾輩はロゼッタだ。君がこの街の住民ならば、また会うこともあるだろう」

 ロゼッタ――そう名乗ったお姉さんは穴から外に出て行った。

(面白い人だ……)

 入れ違いになって、軍服を着たお姉さんたちが僕達のいる車両に入ってくる。僕とチャチャさんが状況を説明し、襲撃犯は逮捕。事件は一件落着となった。
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