スナイパー・イズ・ボッチ ~一人黙々とプレイヤースナイプを楽しんでいたらレイドボスになっていた件について~

空松蓮司

文字の大きさ
67 / 113

第67話 砂塵の死神

しおりを挟む
 トランクの中、僕は布を被ったその兵器を肩で押し、移動させる。

「おっっっっっもいっ!!!!」

 スペースガールの体は現実の体より遥かに馬力も上だと思うけど、それでも重すぎる!!

『やれやれ。商品に手を付けるなんざ、運搬屋失格だな』

 トランク内部の中心には円形の昇降機がある。その上に兵器を乗せ、僕は兵器の上に跨る。天井が円形に開き、昇降機が上昇。昇降機は空いた天井にピッタリハマった所で止まる。

 トランクの上、僕は被せた布を引っぺがす。
 現れる砲台、4基24の砲身――

『最大連射数1万3千発のTW式ガトリング砲、戦場の死神! MGL-13!! レーザー式だから弾詰まりもない。思いっきりぶちかませ!!!』
「はい!!」

 僕はガトリング砲の操縦席に乗り、取っ手――操縦桿を握る。
 ガトリング砲の両脇についた操縦桿、その内側にはそれぞれ4つのボタンが付いている。ちょうど親指を除く4本の指で握り込める位置にボタンはある。

(ボタンの役割は聞いている。少し試すか)

 まず右手側の操縦桿に付いたボタン。ボタンは上から順に『発砲』、『高速右旋回』、『前進』、『固定』の役割を持つ。固定を押している間はガトリング砲の可動域は完全にロックされ、砲口照準は一切動かない。逆に固定を押していない間は操縦桿を振り回して砲口の向きを調整可能。

 中指を押し込み、高速右旋回を試してみる。するとキャタピラーより上、ガトリング砲・操縦席を乗せた砲台が右に旋回し、ガトリング砲と操縦席も当然の如く右を向いた。ガトリング砲の可動域は全方向60度ほどなので、右に回り込まれたら旋回するしかない。

 前進のボタンを押し込むと砲台のキャタピラーが動き前進した。

 左手側もほとんど役割は同じ。『発砲』、『高速左旋回』、『後退』、『リセット』。リセットはキャタピラーの向きと砲台の向きを揃える役割を持つ。リセットを押すと砲台が回り、キャタピラーと同じ方向を向くわけだ。

 手札の確認完了。

「いきます!!」

 発砲ボタンを押し、射撃を始める。
 音は凄いし震度2~3程度の地震のような揺れが体を襲ってくる。けれど砲口のブレは僅かで、狙いはちゃんとつく。それにしてもまぁ――

「すっごい……!」

 赤いレーザーの弾丸が数えきれないほど発射される。レーザーの雨だ。盗賊は1機また1機と数を減らす。

(1発1発の威力が高い。相手がシールドで防御しても構わず貫いている!!!)

 勘違いされがちだけど、ガトリング砲は全ての砲身から一斉に弾が発射されているわけじゃない。
 束ねられた砲身を回転させ、順番に正位置から発砲している。射撃を終えた砲身は他の5本の砲身が発砲している間に排莢・装填・冷却を行い、順番が来たら発砲しまた排莢・装填・冷却を完了させる。これを繰り返す。

 だけどレーザー式の場合、排莢・装填の手間はない。クールタイムは文字通り冷却に全てを注いでいる。
 レーザーは熱の塊と言っていい。威力が高いレーザーほどまた温度も高いと見ていい。つまり、威力を求めれば求めるほどレーザーの熱は強くなり、1撃で砲身は強い熱を持つ。高威力を維持しつつ連射すれば、あっという間に砲身は溶けてしまうだろう。

 しかしガトリング砲は砲身を交代させるため、冷却の間を作れるわけだ。高い威力を保ちながら、高速で弾を連射することができる。

 僕がなにを言いたいかって? 決まっているじゃないか。このガトリング砲で弾をばら撒くのはさいっっっっこうに楽しいってことだよっ!!

「……面白いなぁ! このゲーム!!」

 狙撃の快感とはまた別の快感がガトリングにはある!

 それにしても、

(……やっぱり、おかしいな)

 盗賊たちのおかしな点……それは撃破されても消えないこと。僕の所持金も増えていない。
 通常スペースガールは破壊されれば跡形も無く消え、倒した者にチップの半分が入るはず。

 考えられる可能性は破壊されたように見せてなんらかの武装で生き延びていること。あるいはスペースガールではないという可能性。きっと後者がドンピシャだ。

(凄く良い動きだ。そこらのスペースガールなら20秒で全滅している)

 残り17機のスペースガールは『慣れた』と言わんばかりにガトリング砲を避けはじめ、左右に散ってトラックを挟み込んできた。

(動きが機械的過ぎる。それぞれに『個性』を感じない。照準の定め方、避ける際の動作、バイクの乗り方、どれも共通している)

 僕は高速右旋回と左旋回を使いこなし、なんとか牽制するも敵機の数を減らせない。やがて相手も撃ち始めてくる。僕とイヴさんはシールドピースでなんとか射撃を弾く。

「イヴさん! もっと全速で、思いっきりハンドルを切ってもらって大丈夫です!」
『いいのか? あたしが自由にやったら車体のブレは半端じゃないぞ。とても照準を合わせるなんてできない!』
「問題ありません! どっちみちこのままじゃジリ貧です!」
『了解だ相棒! 一緒に地獄に行ってやらぁ!!』

 トラックが速度を上げる。イヴさんはそのハンドル捌きで上手く敵陣営から距離を作った後、Uターンして集団の中央を突破。2機を撥ね飛ばす。でもまだその2機は健在、トラックに轢かれた程度じゃ死なない。けれど、

『2匹浮いたぞ!』
「……良い腕です、イヴさん! ――バレットピース!!」

 僕はバレットピース6基で空に撃ち上がった2機を集中して射撃し撃破。激しく揺れる車体の上でなんとか照準を合わせ、ガトリング砲でさらに地上の2機を撃破。

「凄いですねこのトラック。これだけ大きな車体なのに小回りが利く」
『あたしの自慢のトラックだからな』

 よし、これなら……。

「イヴさん! 次囲まれた時、トラックを回転させることはできますか!?」
『はぁ!? ――まったく、お前さんはとんでもないことばっかり言いやがるな。いいぜ、乗った!』

 残り13。ガトリング砲でさらに1機落とすも、トラックは囲まれ始める。

(誘導上手い。砂漠という不安定な足場でよくもここまで――口だけじゃない。イヴさん、あなたは1流のドライバーだ)

 完全に包囲網が完成する。

「今です!」
『よっしゃあ!』

 ここだ。ここで決める。

(横Gきた。回旋まわる!!)

 トラックが回転を始める。

(トラックの右回転にさらに砲台の右回転を合わせて高速スピン。全方位を時差無く撃つ!!)

 高速スピンしながら敵機それぞれに照準を合わせる。トラックが1回転を終えると同時に、4機を撃破。

(このトラックの馬力ならもう1回転いけるはず……頼むイヴさん!!)
『いっけぇ!!!』

 さらにトラックが回転。
 最初の一回転で巻き上がった砂が敵機の視界を妨げる。もちろん、こっちの視界も砂で埋まる。

(見えない。けれど、全機の位置は記憶している)

 見えない位置からの射撃はさすがに防げないでしょ!

「踊れ、雑兵ぞうひょう!!」


――二回転を終え、トラックは止まる。


 巻き上げた砂が散り、周囲の風景が明らかになる。
 そこにあったのは砂に埋まる人型メカの群れだけ。

――全機撃破。

「寸分狂いなし」
「……やれやれ。ブラボーだよ、サムライスナイパー」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

癒し目的で始めたVRMMO、なぜか最強になっていた。

branche_noir
SF
<カクヨムSFジャンル週間1位> <カクヨム週間総合ランキング最高3位> <小説家になろうVRゲーム日間・週間1位> 現実に疲れたサラリーマン・ユウが始めたのは、超自由度の高いVRMMO《Everdawn Online》。 目的は“癒し”ただそれだけ。焚き火をし、魚を焼き、草の上で昼寝する。 モンスター討伐? レベル上げ? 知らん。俺はキャンプがしたいんだ。 ところが偶然懐いた“仔竜ルゥ”との出会いが、運命を変える。 テイムスキルなし、戦闘ログ0。それでもルゥは俺から離れない。 そして気づけば、森で焚き火してただけの俺が―― 「魔物の軍勢を率いた魔王」と呼ばれていた……!? 癒し系VRMMO生活、誤認されながら進行中! 本人その気なし、でも周囲は大騒ぎ! ▶モフモフと焚き火と、ちょっとの冒険。 ▶のんびり系異色VRMMOファンタジー、ここに開幕! カクヨムで先行配信してます!

親がうるさいのでVRMMOでソロ成長します

miigumi
ファンタジー
VRが当たり前になった時代。大学生の瑞希は、親の干渉に息苦しさを感じながらも、特にやりたいことも見つからずにいた。 そんなある日、友人に誘われた話題のVRMMO《ルーンスフィア・オンライン》で目にしたのは――「あなたが求める自由を」という言葉。 軽い気持ちでログインしたはずが、気づけば彼女は“ソロ”で世界を駆けることになる。 誰にも縛られない場所で、瑞希は自分の力で強くなることを選んだ。これは、自由を求める彼女のソロ成長物語。 毎日22時投稿します。

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。 ──────── 自筆です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

もふもふと味わうVRグルメ冒険記 〜遅れて始めたけど、料理だけは最前線でした〜

きっこ
ファンタジー
五感完全再現のフルダイブVRMMO《リアルコード・アース》。 遅れてゲームを始めた童顔ちびっ子キャラの主人公・蓮は、戦うことより“料理”を選んだ。 作るたびに懐いてくるもふもふ、微笑むNPC、ほっこりする食卓―― 今日も炊事場でクッキーを焼けば、なぜか神様にまで目をつけられて!? ただ料理しているだけなのに、気づけば伝説級。 癒しと美味しさが詰まった、もふもふ×グルメなスローゲームライフ、ここに開幕!

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。 ─────── 自筆です。 アルファポリス、第18回ファンタジー小説大賞、奨励賞受賞

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

兄貴のお嫁さんは異世界のセクシー・エルフ! 巨乳の兄嫁にひと目惚れ!!

オズ研究所《横須賀ストーリー紅白へ》
ファンタジー
夏休み前、友朗は祖父の屋敷の留守を預かっていた。 その屋敷に兄貴と共に兄嫁が現れた。シェリーと言う名の巨乳の美少女エルフだった。 友朗はシェリーにひと目惚れしたが、もちろん兄嫁だ。好きだと告白する事は出来ない。 兄貴とシェリーが仲良くしているのを見ると友朗は嫉妬心が芽生えた。 そして兄貴が事故に遭い、両足を骨折し入院してしまった。 当分の間、友朗はセクシー・エルフのシェリーとふたりっきりで暮らすことになった。

処理中です...