大人気ダンジョン配信者のサポーターをやっていたけど、あまりにパワハラが酷いから辞めることにする。ん? なんか再生数激オチしているけど大丈夫?

空松蓮司

文字の大きさ
60 / 77

第60話 172層

しおりを挟む
 足を運んだのはカラオケボックス『ダウン&ダウン』。

 地上のカラオケボックスに比べると遥かにボロく、地下街のさらに地下(B1F)にあった。階段でそのカラオケボックスに入り、フリータイム(朝までのコース)でお願いする。ちなみに店主は齢70はいってるお婆さん一人で、店内は薄暗く、豆電球が明らかにキャパオーバーな範囲を照らそうとしていた。

 シアンが指定したのは部屋№12。一番奥の部屋だ。

 部屋に入ると、前の客が残したであろう汚れた皿や空のペットボトルが散乱していた。軽く掃除し、椅子に座る。

『デンモクを取ってくれ』

 デンモク……カラオケに音楽を入れる電子端末を取る。

『そこのオプションから『番号で音楽を入れる』を選択するんだ』

 そういえば昔は番号を入れて音楽を入れていたと聞く。いまだにその機能残ってるんだ。使っている奴見たことないけど。
 番号選択画面に入る。8桁数字を入れられるらしい。

『最初に『4946』と入れた後、行きたいアマツガハラの階数を選択するとそこへ飛ぶ』
「マジか……」
「なんだって?」

 俺はシアンに言われた手順を一色さんに教える。

「ホントだとしたら、まだやるのはまずいと思う」
「はい。まだシアンのアカウントにアクセスしていませんからね」
『そうだった。忘れていたよ。番号選択画面で『5656-2141』と入力してくれ』
(なんで?)
『いいからやってみなさい』

 仕方ない。言われた通り入れてみる。すると、部屋の壁に扉のような切れ目が入った。

「なに? これ」

 切れ目のついた壁が扉のように開く。
 壁の扉の中にはシアンの変装道具一式と、撮影用スマホ・バトラーが入っていた。

『私の探索セットだ。そのバトラーは足が付かないよう改造してあるし、私のアカウントにもアクセスできるようになっている』
(変装道具があるなら教えてくれよ……)
『君ではサイズが合わないだろう。あ、一色ちゃんに着せてあげれば? サイズちょうどいいんじゃないかな』

 一色さんにはちょっとばかし大きいが、許容範囲内か。

「このシアンの服、一色さんが着たらどうですか? 俺の分は別で用意してあるので」
「うん。なんかのトラブルで映り込んだら大変だし、そうする……けど……包帯とこの黒のローブだけ? 下に着る衣服は?」
『ないよそんなの』
「ないらしいです」
「……」

 ちょっと待て。てことは裸に包帯直巻きか……。
 そういえばシアンって、包帯と黒装束以外何も着てなかったな……。

「じゃあ、俺は扉側を向いて着替えるんで、一色さんは壁側を向いて着替えてください」
「わかった……絶対、振り向いちゃ……ダメ」
「わ、わかってます!」

 背後から布が擦れる音が聞こえる。こんな密室の薄暗い部屋で、裸に包帯を巻き付ける男女……なんか、背徳感があるな。

 暗い部屋の中、何とか30分ほどかけてミイラ男になる。さらに上から黒いローブを羽織る。ローブはフードから足首に掛けてあり、きっちり前も後ろもカバーできるぐらいの面積がある。

「一色さん、もう大丈夫ですか?」
「う、うん」

 振り返る。
 一色さんも立派なミイラ女になっていた。外見ではどこの誰だかわからない。
 ただ胸の部分が出っ張っているので、シアンには見えないだろうな。シアンは男女どちらかわからないぐらい胸が無――

『きみきみぃ。オリジンを内側から破壊されたいのかな?』

 申し訳ございません。
 ていうか今更だけど、一色さんは別に包帯の下に服を着ても良かったんじゃないか? シアンを完コピする必要性も無いんだし……今更だから言わないけど。

(準備OK……で、どの階層に行く?)
『172階だ』
「理由は?」
『そこへ到達できるシーカーは居ないだろうし、魔物の数も少なく環境も平穏だ』

 シアンに言われたことをそのまま一色さんに通訳。一色さんも承諾した。

「えーっと、それじゃデンモクに……4946、0172……送信、と」

 部屋にある液晶画面に文字化けしたような歌の名が映し出される。そして、スピーカーからオルゴールの音が響き始めた。

「この音は……?」

 耳から生命力をぶち込まれている気分だ。
 体に力が溢れる。

『聞く者の肉体を鼓舞する音楽だよ。バフのようなものだ』

 部屋の白い扉が真っ青に染まる。立ち上がり、扉に付いている内窓から外を見るが、さっきまでカラオケの廊下を映していたはずの窓が真っ暗になっていた。エレベーターが高速で上がっていくような音と浮遊感がする。
 音と浮遊感が止まると、外の景色が変わっていた。

『着いたよ』

 扉を開き、外に出る。
 扉の外に広がっていたのは――真夜中の廃れた都市。

「ここが……第172層」
『未来都市エリアだ』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。

幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』 電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。 龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。 そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。 盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。 当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。 今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。 ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。 ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ 「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」 全員の目と口が弧を描いたのが見えた。 一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。 作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌() 15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

転落貴族〜千年に1人の逸材と言われた男が最底辺から成り上がる〜

ぽいづん
ファンタジー
ガレオン帝国の名門貴族ノーベル家の長男にして、容姿端麗、眉目秀麗、剣術は向かうところ敵なし。 アレクシア・ノーベル、人は彼のことを千年に1人の逸材と評し、第3皇女クレアとの婚約も決まり、順風満帆な日々だった 騎士学校の最後の剣術大会、彼は賭けに負け、1年間の期限付きで、辺境の国、ザナビル王国の最底辺ギルドのヘブンズワークスに入らざるおえなくなる。 今までの貴族の生活と正反対の日々を過ごし1年が経った。 しかし、この賭けは罠であった。 アレクシアは、生涯をこのギルドで過ごさなければいけないということを知る。 賭けが罠であり、仕組まれたものと知ったアレクシアは黒幕が誰か確信を得る。 アレクシアは最底辺からの成り上がりを決意し、復讐を誓うのであった。 小説家になろうにも投稿しています。 なろう版改稿中です。改稿終了後こちらも改稿します。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

散々利用されてから勇者パーティーを追い出された…が、元勇者パーティーは僕の本当の能力を知らない。

アノマロカリス
ファンタジー
僕こと…ディスト・ランゼウスは、経験値を倍増させてパーティーの成長を急成長させるスキルを持っていた。 それにあやかった剣士ディランは、僕と共にパーティーを集めて成長して行き…数々の魔王軍の配下を討伐して行き、なんと勇者の称号を得る事になった。 するとディランは、勇者の称号を得てからというもの…態度が横柄になり、更にはパーティーメンバー達も調子付いて行った。 それからと言うもの、調子付いた勇者ディランとパーティーメンバー達は、レベルの上がらないサポート役の僕を邪険にし始めていき… 遂には、役立たずは不要と言って僕を追い出したのだった。 ……とまぁ、ここまでは良くある話。 僕が抜けた勇者ディランとパーティーメンバー達は、その後も活躍し続けていき… 遂には、大魔王ドゥルガディスが収める魔大陸を攻略すると言う話になっていた。 「おやおや…もう魔大陸に上陸すると言う話になったのか、ならば…そろそろ僕の本来のスキルを発動するとしますか!」 それから数日後に、ディランとパーティーメンバー達が魔大陸に侵攻し始めたという話を聞いた。 なので、それと同時に…僕の本来のスキルを発動すると…? 2月11日にHOTランキング男性向けで1位になりました。 皆様お陰です、有り難う御座います。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。 与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。 そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。 「──誰か、養ってくれない?」 この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

処理中です...