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依存していた年上彼女を諦めきれないので一度だけ電話をかける
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「なんでああなったんだろうな」
岳寅はコンビニの前で一人で立っていた。背後のコンビニには明かりが灯る。一方で外は暗闇に包まれていた。岳寅は手に持っていたコーヒー缶を口につけた。ごくりと岳寅の喉が鳴った。岳寅はコーヒー缶を口から離し。そして息を吐いた。白い吐息が外へと流れた。
「僕が悪いのは分かってるんだけどな」
岳寅は満月が浮かぶ空を見上げた。
二日前岳寅は動物園に訪れていた。隣には晴乃がいた。岳寅はダウンジャケットにジーンズという格好だった。いずれも安価で買えるものだ。それでも高校生でアルバイトをしていない岳寅にとってそれなりの出費だ。一方晴乃は下にロングスカート、上はブランド品と思われるコート着用していた。腕にはピンク色の小型の腕時計を巻いていた。その日の天気予報は朝から晩まで晴だった。だというのに二人が動物園に来園した昼頃には曇り模様となっていた。
「ねえ雨降りそうだね」
傘を持たない晴乃が言った。目の前にはライオンの展示場がある。ライオンは草むらの上に座りながら真っすぐと人間の方を見ている。
「そうだね、せっかくの動物園なのに雨降ったら嫌だな」
岳寅は空を見上げならそう言うと晴乃の顔を見た。晴乃も微笑など微塵もない表情で空を仰いでいる。岳寅は口を閉じ顎に皴作りながらポケットに手を入れた。晴乃は仰ぐの止めると岳寅の視線を合わせた。だが一瞬で視線を切った。
「ねえもう帰らない?」
晴乃が言った。
「いやなんで帰るの? まだ来て二時間しか経ってないけど」
岳寅は顎を前に出し瞬きを何度も繰り返していた。
「だって雨降ったらわたしたち傘持ってないから動物園楽しめないからね。だから動物園はまた今度こよ?」
晴乃はようやく岳寅に目を合わせながら話した。岳寅の瞬きは止まっていた。その視線は少しずつアスファルトで舗装されて地面に落ちていった。
「いや次会えるのって確か三週間後だよね。だったらもう少し居ようよ? どっかカフェに入ってもいいし」
「仕方ないでしょ。わたしは社会人だし、岳寅くんは二週間後には期末テストでしょ? 来年は受験なんだからそろそろ勉強に力入れないと」
「それはそうだけど」
「だからわたしとの会うのも我慢しないと」
晴乃がそう発言すると岳寅は顔が上がった。晴乃は微笑んでいた。だが岳寅の顔は真逆で口を引き締め眉間に皴を寄せていた。
「それは嫌だよ。晴乃と会えないならテストなんてどうでもいいよ」
「テストを軽視するって進学はどうでもいいってこと? それってわたしとの将来を考えてないってことだよね」
晴乃は岳寅を指差しながら言った。その眉間には岳寅と同じように眉間に皴が出来ていた。
「ちゃんと将来のことは考えてるよ。ただ僕にとっては晴乃との時間が一番大切なんだよ」
「わたしじゃなくて『わたしとの時間』なんだね。岳寅君が大切なのは」
「いや晴乃のことが大切だよ。晴乃抜きの人生なんて考えられないし」
岳寅は力が抜けた顔で言った。岳寅の視線の先には依然として睨んでいる晴乃の姿があった。
「岳寅くんはわたしに比重を置きすぎだよ。少しは他のことにも目を配ってよ」
「それじゃ晴乃のこと愛していないみたいじゃないか」
「何事にもバランスが大事なのよ。わたしばっか重視してると場合によっては他の大切なものを失うよ」
晴乃の表情が少し緩んだ。だが相変わらず目力のある視線を岳寅に浴びせていた。
「僕は晴乃さえいれば他はどうでもいいよ」
岳寅がそう返すとしばらく間が空いた。座っていたライオンは立ち上がり吠えた。それを合図にするかのように晴乃は一言吐いた。
「今の岳寅くんとはこれ以上付き合えない。さようなら」
晴乃は背を向けると駆け足で岳寅から離れてしまう。岳寅は追うとしたが髪の毛にひんやりとした感触を味わう。それは一回だけはなかった。地面にはパシャパシャと音が鳴り、髪の毛はあっという間に濡れてしまった。岳寅はその場で立ち尽くしたまま空を見上げた。透明の線が岳寅の顔に降り注ぐ。その状態で岳寅は小さく口を動かした。
「これからどうすればいいんだよ」
満月を見上げていた岳寅はコーヒーを飲み終えると空き缶をごみ箱に捨てた。そしてショルダーバッグから携帯電話を取り出した。岳寅は画面を指で操作すると携帯電話は耳に当てた。携帯電話からはプルプルとコール音が何度も鳴った。やがて岳寅は耳から携帯電話を離す。するとコール音が止み女性の声がした。
「岳寅くんなんのよう?」
「いや晴乃と話がしたくて」
岳寅は再度携帯電話を耳に当てた。岳寅の表情に笑みができていた。
「もう別れたんだから話すことはないでしょ」
「僕としてはもう一度晴乃とやり直したいんだ」
「なんで振られたか分かってるの?」
晴乃に尋ねられた岳寅はすぐに返事ができなかった。岳寅は笑みが消えた顔で口を噤んでいた。その間に目の前の車道を車両が何台も通過していった。目の先から車両が消える瞬間、岳寅はようやく口を開いた。
「晴乃に依存しすぎていたから」
「そうよ。今の岳寅くんは大事な時期なの。それをわたしという存在で邪魔したくないの。だから今は会えない」
岳寅の耳に晴乃の声が入ってきた。岳寅はすぐさま口を動かした。だが岳寅が声を発する前にツーツーと話中音が携帯電話から流れてきた。携帯電話を持つ腕は垂れ下がり揺れていた。岳寅は動物園の時のように空を見上げながら立ち尽くすことしかできなかった。
岳寅の肩に雪が降った。とても小さな雪だった。岳寅はコンビニの前でコーヒーを飲んでいた。あの日と違い空にまだ月は上っていない。コーヒー片手に岳寅は携帯電話を手にした。画面には12時と表示されていた。岳寅はふとアルバムアプリを開いた。一年前以上を遡るとかつて愛した人の写真が何百枚と保存されていた。一枚、一枚見る岳寅の目尻は下がっていた。そのとき岳寅の携帯電話の画面が着信音と共に切り替わった。画面には晴乃のフルネームが表示されていた。岳寅は「え」と声を漏らしながらも電話に出ることも切ることもできなかった。岳寅は何度目から分からない着信音を聞くと画面をタッチした。そして耳に携帯電話を当てた。
「もしもし僕だけど、どうかしたの?」
「うん、ちょっとだけ話がしたいかなーって思って」
携帯電話から晴乃の声が流れてくる。岳寅の表情に笑みが広がっていた。岳寅はすぐに言葉を返す。
「要件はなに、晴乃」
「一年ぶりだね『晴乃』って呼ばれるの」
「そうだね。えらく懐かしく感じるね」
「あれからどう? 大学には合格できた?」
「無事第一志望に合格できたよ」
「第一志望って昔言ってたとこ」
「いや違うよ。あれから第一志望変えたんだ。ほらあのA大学だよ」
「えっそこに合格したんだ。大学行っていないわたしからしたら羨ましいよ」
「まああれから色々あったからね。晴乃の方はどうなの? 高校卒業して働いてもう六年だろ?」
「相変わらずかな」
「そっか。てか要件って世間話だけなの?」
「半分そうかな。まあ残りの半分はいらないかな」
「なんでさ」
岳寅が言った。目の前の歩道には雪が積もっており、その上の一組の男女が歩いていた。
「それだけ順調そうならわたしはもういらないよね」
晴乃が返事をすると岳寅の顔から笑みが飛び去った。
「それって復縁ってこと?」
「うんそうだよ。わたしから振ったから言いにくいけど、今の岳寅くんならわたしはいないほうがいいね」
「個人的にはいてほしいよ。けどまた晴乃が付き合ってしまうとまた頼りっきりになりそうだから元に戻るのは止めてよく」
「そっか。強くなってね岳寅。じゃあね。好きだったよ」
「僕も好きだったよ。ありがとう晴乃」
そう言うと岳寅は電話を切った。携帯電話をショルダーバッグに収納すると目の前を見た。依然として雪は降り続けていた。岳寅は口角を緩めると雪の道を歩き始めた。
岳寅はコンビニの前で一人で立っていた。背後のコンビニには明かりが灯る。一方で外は暗闇に包まれていた。岳寅は手に持っていたコーヒー缶を口につけた。ごくりと岳寅の喉が鳴った。岳寅はコーヒー缶を口から離し。そして息を吐いた。白い吐息が外へと流れた。
「僕が悪いのは分かってるんだけどな」
岳寅は満月が浮かぶ空を見上げた。
二日前岳寅は動物園に訪れていた。隣には晴乃がいた。岳寅はダウンジャケットにジーンズという格好だった。いずれも安価で買えるものだ。それでも高校生でアルバイトをしていない岳寅にとってそれなりの出費だ。一方晴乃は下にロングスカート、上はブランド品と思われるコート着用していた。腕にはピンク色の小型の腕時計を巻いていた。その日の天気予報は朝から晩まで晴だった。だというのに二人が動物園に来園した昼頃には曇り模様となっていた。
「ねえ雨降りそうだね」
傘を持たない晴乃が言った。目の前にはライオンの展示場がある。ライオンは草むらの上に座りながら真っすぐと人間の方を見ている。
「そうだね、せっかくの動物園なのに雨降ったら嫌だな」
岳寅は空を見上げならそう言うと晴乃の顔を見た。晴乃も微笑など微塵もない表情で空を仰いでいる。岳寅は口を閉じ顎に皴作りながらポケットに手を入れた。晴乃は仰ぐの止めると岳寅の視線を合わせた。だが一瞬で視線を切った。
「ねえもう帰らない?」
晴乃が言った。
「いやなんで帰るの? まだ来て二時間しか経ってないけど」
岳寅は顎を前に出し瞬きを何度も繰り返していた。
「だって雨降ったらわたしたち傘持ってないから動物園楽しめないからね。だから動物園はまた今度こよ?」
晴乃はようやく岳寅に目を合わせながら話した。岳寅の瞬きは止まっていた。その視線は少しずつアスファルトで舗装されて地面に落ちていった。
「いや次会えるのって確か三週間後だよね。だったらもう少し居ようよ? どっかカフェに入ってもいいし」
「仕方ないでしょ。わたしは社会人だし、岳寅くんは二週間後には期末テストでしょ? 来年は受験なんだからそろそろ勉強に力入れないと」
「それはそうだけど」
「だからわたしとの会うのも我慢しないと」
晴乃がそう発言すると岳寅は顔が上がった。晴乃は微笑んでいた。だが岳寅の顔は真逆で口を引き締め眉間に皴を寄せていた。
「それは嫌だよ。晴乃と会えないならテストなんてどうでもいいよ」
「テストを軽視するって進学はどうでもいいってこと? それってわたしとの将来を考えてないってことだよね」
晴乃は岳寅を指差しながら言った。その眉間には岳寅と同じように眉間に皴が出来ていた。
「ちゃんと将来のことは考えてるよ。ただ僕にとっては晴乃との時間が一番大切なんだよ」
「わたしじゃなくて『わたしとの時間』なんだね。岳寅君が大切なのは」
「いや晴乃のことが大切だよ。晴乃抜きの人生なんて考えられないし」
岳寅は力が抜けた顔で言った。岳寅の視線の先には依然として睨んでいる晴乃の姿があった。
「岳寅くんはわたしに比重を置きすぎだよ。少しは他のことにも目を配ってよ」
「それじゃ晴乃のこと愛していないみたいじゃないか」
「何事にもバランスが大事なのよ。わたしばっか重視してると場合によっては他の大切なものを失うよ」
晴乃の表情が少し緩んだ。だが相変わらず目力のある視線を岳寅に浴びせていた。
「僕は晴乃さえいれば他はどうでもいいよ」
岳寅がそう返すとしばらく間が空いた。座っていたライオンは立ち上がり吠えた。それを合図にするかのように晴乃は一言吐いた。
「今の岳寅くんとはこれ以上付き合えない。さようなら」
晴乃は背を向けると駆け足で岳寅から離れてしまう。岳寅は追うとしたが髪の毛にひんやりとした感触を味わう。それは一回だけはなかった。地面にはパシャパシャと音が鳴り、髪の毛はあっという間に濡れてしまった。岳寅はその場で立ち尽くしたまま空を見上げた。透明の線が岳寅の顔に降り注ぐ。その状態で岳寅は小さく口を動かした。
「これからどうすればいいんだよ」
満月を見上げていた岳寅はコーヒーを飲み終えると空き缶をごみ箱に捨てた。そしてショルダーバッグから携帯電話を取り出した。岳寅は画面を指で操作すると携帯電話は耳に当てた。携帯電話からはプルプルとコール音が何度も鳴った。やがて岳寅は耳から携帯電話を離す。するとコール音が止み女性の声がした。
「岳寅くんなんのよう?」
「いや晴乃と話がしたくて」
岳寅は再度携帯電話を耳に当てた。岳寅の表情に笑みができていた。
「もう別れたんだから話すことはないでしょ」
「僕としてはもう一度晴乃とやり直したいんだ」
「なんで振られたか分かってるの?」
晴乃に尋ねられた岳寅はすぐに返事ができなかった。岳寅は笑みが消えた顔で口を噤んでいた。その間に目の前の車道を車両が何台も通過していった。目の先から車両が消える瞬間、岳寅はようやく口を開いた。
「晴乃に依存しすぎていたから」
「そうよ。今の岳寅くんは大事な時期なの。それをわたしという存在で邪魔したくないの。だから今は会えない」
岳寅の耳に晴乃の声が入ってきた。岳寅はすぐさま口を動かした。だが岳寅が声を発する前にツーツーと話中音が携帯電話から流れてきた。携帯電話を持つ腕は垂れ下がり揺れていた。岳寅は動物園の時のように空を見上げながら立ち尽くすことしかできなかった。
岳寅の肩に雪が降った。とても小さな雪だった。岳寅はコンビニの前でコーヒーを飲んでいた。あの日と違い空にまだ月は上っていない。コーヒー片手に岳寅は携帯電話を手にした。画面には12時と表示されていた。岳寅はふとアルバムアプリを開いた。一年前以上を遡るとかつて愛した人の写真が何百枚と保存されていた。一枚、一枚見る岳寅の目尻は下がっていた。そのとき岳寅の携帯電話の画面が着信音と共に切り替わった。画面には晴乃のフルネームが表示されていた。岳寅は「え」と声を漏らしながらも電話に出ることも切ることもできなかった。岳寅は何度目から分からない着信音を聞くと画面をタッチした。そして耳に携帯電話を当てた。
「もしもし僕だけど、どうかしたの?」
「うん、ちょっとだけ話がしたいかなーって思って」
携帯電話から晴乃の声が流れてくる。岳寅の表情に笑みが広がっていた。岳寅はすぐに言葉を返す。
「要件はなに、晴乃」
「一年ぶりだね『晴乃』って呼ばれるの」
「そうだね。えらく懐かしく感じるね」
「あれからどう? 大学には合格できた?」
「無事第一志望に合格できたよ」
「第一志望って昔言ってたとこ」
「いや違うよ。あれから第一志望変えたんだ。ほらあのA大学だよ」
「えっそこに合格したんだ。大学行っていないわたしからしたら羨ましいよ」
「まああれから色々あったからね。晴乃の方はどうなの? 高校卒業して働いてもう六年だろ?」
「相変わらずかな」
「そっか。てか要件って世間話だけなの?」
「半分そうかな。まあ残りの半分はいらないかな」
「なんでさ」
岳寅が言った。目の前の歩道には雪が積もっており、その上の一組の男女が歩いていた。
「それだけ順調そうならわたしはもういらないよね」
晴乃が返事をすると岳寅の顔から笑みが飛び去った。
「それって復縁ってこと?」
「うんそうだよ。わたしから振ったから言いにくいけど、今の岳寅くんならわたしはいないほうがいいね」
「個人的にはいてほしいよ。けどまた晴乃が付き合ってしまうとまた頼りっきりになりそうだから元に戻るのは止めてよく」
「そっか。強くなってね岳寅。じゃあね。好きだったよ」
「僕も好きだったよ。ありがとう晴乃」
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