四十路のおっさん、神様からチート能力を9個もらう

霧兎

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5巻

5-3

「そうじゃなくて、話さないのかい? せっかく契約したのに?」
「確かに契約しておいたなら言っても問題ないか。ファスティ領主、全員の契約は終わってますよね?」
「ああ、大丈夫だよ」
「じゃあ、買い物前に話をしよう」

 それから俺は、ファスティ領主に事前に話していた、いろんなポーションが製作できること、それだけじゃなくて魔道具まで作れることをみんなに話した。
 そして、みんなと結んだ契約はこれを守秘するためだったことも伝える。
 加えて、今いる人間を守るためにある程度自衛できるように奴隷を雇うこと、奴隷に身を落としている可能性があるアランとセレナの親を探していることも話しておいた。
 なお、家の中の家事全般に関しては、ジーンに頼むことにした。確か、元は貴族家のメイドだったようだしな。
 さらに、もう少し人を増やすという話もしておく。
 その話に、質問がジーンとシェフィーから挙がる。
 これ以上人員は必要ないのでは? とのことだが、それの疑問に俺は答える。

「この家だけならそうなのだが、各地の気に入った所に住んでもらう人員も必要になるかもしれないだろう」

 家を手に入れても人が住まないとすぐに傷む。拠点は増やしていく方針だし、今のうちにそういうことも視野に入れておかないとな。

「さて、これで話すことは大丈夫ですかね? ファスティ領主」

 ファスティ領主に確認すると、笑みを浮かべる。

「そうだね。あと必要になればだけど、私の所の執事とメイドを教育係として派遣もできるから、もし必要になったら声をかけてね」
「配慮、感謝します。その際はぜひともお願いします」

 とりあえず、今日の話し合いは終わったな。
 ファスティ領主には何かあれば連絡を入れると言い、自分の邸に戻ってもらった。


 その後、マークは荷物を自分の部屋に置きに行った。
 この新拠点の作りを説明しておくと、下の階は作業所と店舗部分と食堂と台所とトイレ。上の階は部屋が六つほどあり、そこで生活することになっている。
 元店舗だったので、そういう作りになってるんだよな。
 で、部屋の割り振りに関しては、二階の二番目に大きい部屋をジーン一家に、一番大きい部屋を俺が、三番目に大きい部屋を子供達に。あとの部屋は大きさは同じなので、好きに使うようにと言っておいた。
 ちなみに、小さい部屋でも大人二人程度の荷物とベッドを置いても十分な広さがあった。
 さて、買い物に向かうとするかー。
 ま、ジーンに子供達の物を選ぶのは丸投げするんだけどな。




 4 買い物だー!



 出かける前に、ジーン一家とアラン&セレナ、シェフィーに確認する。

「全員荷物を各人の部屋に置いてきたか? 一応聞くが、雑に広げただけにしてないだろうな?」

 ソッと目を逸らすシェフィー。
 ああ、うん、なんとなく予想はしていた人物だ。

「まあいい、掃除は各自で行えよ。ジーン、週一くらいの間隔で、各部屋をチェックしてくれ」
「わかったわ。できてなかったときはどうするの?」
「手間になるだろうが、そのときはなるべく物を捨てずに片付けてやってくれ」

 そう言いつつシェフィーを見る俺。
 そして、目を逸らし続けるシェフィーに、ため息をつくジーン。
 二人の微妙な雰囲気に、子供達が落ち着かなくなる。

「頼むぞ、ジーン。じゃあ、ここにいても微妙な雰囲気のままだから、買い物に行くぞー」

 そう声をかけると、子供達ははしゃぎだすのだった。


 ◇


 子供達を何人も連れ歩いていると、良からぬ考えのやからが現れるものだが……特にそんなこともなく目的地の一つである雑貨屋にたどり着いた。
 パンを入れるバスケット、皿、スープ皿、サラダを入れるボウル、それを入れる小さめの深皿、他の副菜を入れる深さのある皿、メインの料理を入れる用の洒落た大皿、中皿、ご飯を入れることのできそうなどんぶりといった食器類をまとめて購入した。
 あとは、二種類の取り分け皿と、カトラリー各種。コップとティーカップを三種類をワンセットとして子供用五人分、大人用十人分、来客用にさらに五人分を購入する。
 全部で40万ダルもしてしまったが、これは必要経費だ。お金を払って、アイテムカバンに入れていく。
 まあ、これくらいなら余裕で入るしな。
 その後は服屋に向かっていった。


 服屋に着くと、入るのに店の人と押し問答もんどうになった。
 理由はまあ、身なりからして支払いできるのか……とかそんな感じ。
 だが、俺が大金貨を数枚見せると、その店員は手のひらを返し、満面の笑みで接客をしだした。
 まあ、腹が立つ部分もないとは言えんが、客商売だしあまり店に合わない客は……という気持ちもわからなくもない。
 俺は服に関しては完全に門外漢もんがいかんだから、ジーンと店の人に任せた。
 店員には、そこそこの質の服で普通に出歩けるような物五着、仕事着を三着、部屋着(寝間着兼用)を三着ずつ、そんな感じで各人に買うという話だけ伝えておいた。
 これとは別に、各サイズ男女別を三着頼んでいる。
 まあ、今後メンバーが増えたとき用だな。
 ジーンと店員があーでもないこーでもないと議論を交わしている。
 俺? 俺の服はもう決まったので、従魔達とたわむれているけど何か?
 店員が会計が大丈夫なのかと心配しだしたので、さらに数枚大金貨を出しておいた。すると安心したのか、またジーンと議論をしだす。
 しかし、服一つ選ぶのによく飽きないものだなぁ。
 それからそれなりの時間が経った頃、ようやくジーンも店員も納得いったようで一気に決まっていった。
 会計の場に行くと……高い。正直やりすぎた感はあったな。
 が、これも必要経費だからな。
 支払いをしてアイテムカバンに入れていく。店員がアイテムカバンを羨ましそうに見ていたが、やらんぞ?
 ジーンも清々すがすがしい顔で戻ってきたが、俺を見るなりびてきた。なんでだ?

「ごめんなさい。こういった買い物は随分久しぶりだったので張りきりすぎたわ。その結果、散財させてしまったわね」
「なんだそんなことか。それなら気にしなくていいぞ」
「でも……」
「周りを見てみろ。とくに子供達の顔をな」

 俺が言った通り、周りを見るジーン。

「見たか? あの嬉しそうな顔を見て、安いのに替えることができるか? あの顔にしたのはジーンなんだ。胸を張っていればいいさ」
「あなたって人は……」
「前も言ったかどうか忘れたが、金に関しては気にしなくていいぞ。減ったら稼ぐだけだからな」

 俺がそう言うと、ジーンは笑った。

「そういえば、正気を疑うような物を作れるんだったわね」
「正気を疑うは余計だ」

 ジーンの表現がちょっとおかしいのはさておき、彼女は真面目な顔で心配してきた。

「随分とかかったけど大丈夫なの?」
「まあ現状問題ないな。現金が足りなくなったら、物を売るだけだからな」

 俺が呑気にそう言うと、ジーンがどう思ったから知らないが、気にしてないような、困ったような表情になっていた。まあいいか。


 買い物は終わったことだし、帰ったら夕飯の支度でもしようかね?
 何が良いかなぁ。従魔達はマナを除けば肉主義だから焼いた肉を渡すとして、俺達はどうしようかね。
 あっ、そうだ! オーゴで購入した海鮮でBBQにしよう。
 BBQなら海鮮だけじゃなく肉も一緒に焼くことができるしな。
 新生活初日になるのだし、少し豪勢でもいいだろ!
 じゃあさっそく家に帰って……
 しまった!
 鉄板とかなべとかフライパンとか包丁ほうちょう、まな板等のキッチン用品を買ってない!

「みんな、すまん。帰る前にもう一度雑貨屋に向かってもいいか?」
「どうしたのかしら?」

 ジーンが聞いてくる。

「夕飯の準備を考えていたのだが、考えている最中に、キッチン用品がないことに気づいたんだ。なので、それらを買いに行こうと思ったんだよ」
「一応、私達のはあるわよ?」
「いや、そういう意味で言うなら俺だって持ってる。だが、俺の家に住む誰もが使える常備品を用意しようと思ったんだ」
「わかったわ」

 子供達も特に不満はないようで、一緒についてきてくれるようだ。
 というか、子供達同士でお話ししながら歩いているから、そもそも俺達のことなんか気にしてないというべきか?


 とにかく雑貨屋に再度向かい、店に入った。
 さっきの店員が寄ってきた。

「先ほどのお客様ですよね? いかがしました? 何か商品に不備でも?」

 そう言って心配そうに見てくるが、そうじゃないんだ。

「いや、そういったことではなく、単純に買い忘れというか、必要になる物を思い出したので買いに来たんだ」

 俺が説明すると、店員は安心したらしい。
 それからすぐに笑顔になる。

「どういった物を探しているのですか」
「今回買うのは、大中小に特大の鍋と寸胴ずんどう、さらにフライパンも大中小を二……いや、できたら三セットずつと、鉄板と、あみが欲しいのだが……」
「えっと……その、ご用意はできますが、その点数での購入はもう買い忘れというようなお話ではないですよね?」

 わざわざ言うな。
 自分でも、買い忘れというレベルじゃないなと思ってるんだから。
 その後、店員二人がかりで商品を用意してくれた。
 で、代金を払い、店員に礼を言い、アイテムカバンに収納していく……だから羨ましそうに見たってやらんぞ!?
 すべて収納できたので店を出る。
 そろそろ食事の準備時間だな。急いで戻ろう。


 ◇


 家に戻ってきて、急いで裏庭のほうに行く。
 時間もないからな。ささっと土魔法を使って鉄板等を置く台を作って、肉と魚を切り分けて野菜も用意する。
 あとは簡単なスープと、みんなの飲み物は果実水でいいかな?
 準備を終えると、だいたいの時間で言うなら夕食時になったので全員を呼び込む。


 みんな集まったな。
 BBQは子供達には少し危険かもしれないので、隣に大人がついてもらう。
 それはさておきだ。
 どういう察知能力を持っていたらこの絶妙な食事のタイミングに、バイロン、アンディ、そしてファスティ領主、そしてファスティ領主の執事であるカインズが揃って来られるんだろうな。
 説明を求めるとカインズが言う。

「なんとなく私の勘が、『ノート様が、美味おいしいうえに大人数で楽しめる食事を用意しそうな気がする!』と騒いだのです。領主様に伝えると、すぐさま移動を開始することになり、皆でここに来ました」
「なんだそれは! もうそれ何かのスキルだろう!! もしくは誰か俺をつけていたのか!?」
「執事のたしなみです」
「そんなわけあるか!! 執事の嗜みを免罪符にするなよ!?」

 そこで、ファスティ領主が間に入る。

「まあまあ、それよりも食事を始めようよ、みんな待っているようだよ」

 くそっ、絶対にいずれカインズに問いただしてやるか、【鑑定】にかけてやる!


 そんな騒動があったものの、BBQを開始する。
 肉には、いつもの焼肉のタレにしようかな。
 魚や野菜にはお好みでポン酢も使うとしようか?
 それとも味噌みそベースのソースを出すか?
 ……両方出すとしよう。迷ったら両方用意するか、両方出さないかが正解だよな。よくわからんが。
 さて、食べ慣れてない住人に食べ方を教えつつ、それなりに楽しく騒ぎながら食事をしていく。
 ふと思い出したので、ファスティ領主に例の準男爵の件の話を聞いてみる。
 準男爵っていうのは、ジーンを苦しめていた騎士バリーの背後にいた黒幕。その処遇を巡って貴族の特権が適用されそうになったので、俺が激怒したという経緯があった。

「それについては明日一緒に聞きに行こうか。宰相から連絡を受けているから、宰相の館に向かえば詳しい話を聞けるよ」
「わかりました。そのときに少しお願いがあるのですが……」

 俺がそう言うと、ファスティ領主はちょっと警戒するような顔をする。

「少し怖いのだけど、そのお願いというのを聞かせてもらえないかな?」
「出先のファスティ領主に頼むのは多少気が引けるのですが、宰相にモノを売りたいのですよ」

 そう言ったら、ファスティ領主はそれなら大丈夫かと胸をで下ろしたのだった。




 5 宰相との再会



 食事のあと、ファスティ領主達は帰っていった。
 みんなには寝る前に体を拭くように言い、各人におけに入れたお湯を渡していく。
 でも湯桶は足りないので、順番に使ってもらわないとな。
 俺達とジーン一家はそれぞれ自分達の部屋で、アラン&セレナは俺の部屋に来て、体を拭いてもらった。
 シェフィーはジーン一家の部屋で一緒に体を拭いていた。
 最後はマークとアンディが順に体を拭いて、これで終了。
 だが、これを毎回やるのはちょっとめんどくさいな。せめて俺が湯を出さなくても各々でできるように、湯を出す魔道具がないか聞いておこう。
 あとは、今日やらないといけないことは特にないか。
 金策のため、少しポーション各種を作っておこうかな。
 その後、高品質まで数十本単位で作って、今日は寝ることにした。


 ◇


 朝か……
 まだ慣れていないから、なんとなくここが自分の家だと思えないな。違和感のほうが強いって感じだ。
 まあ追々慣れるだろう。
 他の者達は……寝ている人数のほうが少ないか?


 一階に下りると、ジーンが台所にいた。
 なぜか困惑げにしている。

「おはよう、早いな。何をやっているんだ?」
「あら、おはよう。何って、みんなのために朝食を作ろうと思ったのだけれど、材料が何もないのよ」

 そういえば、ジーンに家事全般を任せると言ったんだっけな。
 飯は俺がやるつもりでいたんだが。

「ないのは当たり前だろう。食材はすべて俺が持っているのだからな。お前の家に置いたアイテムボックスのようにな」
「そうだったわね……じゃあ材料を出してちょうだい」

 朝食はジーンに任せてしまうか。

「わかった。それじゃあ頼むとするかな」
「ええ、任せて」

 急に時間ができてしまった。
 さて、俺は何をするかな。

「じゃあ俺は、空いた時間で、作業所のほうでいろいろやってみようかな。店舗部分もあんなに広くなくても良いだろうし」

 新拠点の部屋は使い道が決まってない。
 なら、いろいろいじってみるか。

「何をするのかわからないけど、あまりすごいのはやめてよ」

 そう言って困惑げな顔をするジーンに、俺は今考えている構想を伝える。

「浴室と地下室を追加しようと思っているだけだが? お湯を出せるような物があったり、地下室の温度を一定にできるような魔道具があれば買いたいけどな」
「それを……いえ、いいわ。あなたの家だし文句は言わないけど、せめて危険を考えて作ってもらいたいものだわ、子供達のためにも」
「わかった。まあ、子供達が触ったらいけない物は、近づかないように作っておくさ」


 そんなこんなで朝食を作るのを任せた俺は、作業所のほうに来てみた。
 この作業所はひょっとすると、倉庫も兼ねていたのか?
 とりあえず広さを測ると、縦横二十メートル以上。店舗部分も入れるとそのひと回り以上はあった。
 かなりの広さだな。
 さて、浴室には脱衣場と浴槽を作るか。
 男女別にするための壁を作って真ん中で分けよう。それで双方にお湯が出るようにしておけば良いかな。
 あとは、昔の銭湯にあったようなライオンの口からお湯が出る所とか……
 トイレの増設もしないとな。女性子供率が高いから、ちょっと工夫が必要かもなー。
 そうこうしているうちに食事ができたらしく、リディアが呼びに来た。

「ノートおじさん、お母さんがご飯できたって言ってるから早く行こう?」

 リディアは俺がやっていることがわからないらしく、首を傾げて浴室の入り口を見入っていた。

「そうだな、急ぐこともないだろうからな、ぼちぼち作っていくか。リディア、呼びに来てくれてありがとな。食堂に向かおう」


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