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第16話 違和感
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※
ボフッ!
腹部に軽い衝撃。
「おに~ちゃん!」
続けて優しい声音。
「朝ですよ」
その声に促されるように目を開くと、妹が俺の上に乗っていた。
「天音……重い」
「ちょ!? 女の子に重いは禁句です!」
俺の胸をポコポコ叩く天音。
騒がしいやり取りに、寝起きの意識が一気に覚醒していく。
「あ~わかった……悪かった」
「反省しましたか?」
「した。激しく反省した」
「なら許してあげます!
甘々妹に感謝してくださいね。
それと、朝ご飯の準備できてますから」
言って天音は俺の腹部から下りた。
「というか天音、いつもは起こしに来ないのになんで今日に限って?」
「お兄ちゃん、昨日デートに行ったので目覚ましの時間を直してないんじゃないかと思ったんです。
朝から心配妹です」
俺の疑問に答えたあと、妹は部屋を出て行った。
スマホのアラームを確認する。
見事に目覚ましの時間を直していなかった。
「……これは感謝だな」
天音のお陰で、今日ものんびり登校することができそうだ。
※
遅刻することなく学校へ到着。
廊下を進み教室へ。
中に入ると賑やかな話し声が聞こえてきた。
ホームルームまではあと十分ほどで、既に机は半分くらいは埋まっていた。
「じ~」
ん?
俺が教室に入ると、なぜか小鳥遊から視線を感じた。
俺とはほとんど接点がはないはずなのだが……いや、気のせいかもしれない。
そう考えて、俺は自分の席に着く。
(……竜胆はまだ来てないのか?)
いつもならもう来ていてもおかしくない時間。
もしかして遅刻だろうか?
考えてみれば彼女が遅刻したところを見たことがない。
「凛華、まだ来てないん?」
「みたい。メールの返信もない」
教室に入ってきた岬が、小鳥遊に確認を取っていた。
彼女たちも気になっているらしい。
(……メール、か)
俺はスマホを取り出す。
ロック画面にメールの内容が表示されていて。
『皆友くん、た』
内容はこうだった。
謝って送信してしまったのだろうか?
『どうかしたのか?』
俺は返信する。
だが既読は付かない。
何かあったのだろうか?
(……いや、今学校に向かっている最中なのかもしれない)
少し遅れているくらいで心配しすぎか。
そして時間は過ぎて。
「お前ら席に着け~、ホームルーム始めるぞ」
担任の真間先生がやってきた。
でも、俺の隣は今も空席のままで。
「なんだ? 竜胆は休みか。
他は……全員来て――」
ガラガラ――と少し激しい音が響き、教室の扉が開いた。
「あ、さ~せん。
ちょっと遅れちゃいました?」
いつもと変わらない軽い調子で、竜胆が教室に入ってきた。
「遅刻だ。
もう少し早く来い」
「は~い」
そして竜胆は自分の席へと座った。
「遅かったな」
真間先生がホームルームを進める中、俺は竜胆に話し掛けた。
「うん……ちょっと、電車が遅れちゃって……」
「そっか。
なぁ竜胆、あのメールはなんだったんだ?」
「メール? ぁ……もしかして、間違って送っちゃったかも。
ごめん」
竜胆は苦笑した。
何か俺に伝えたいことがあるのかと思ったが、大した用件ではなかったのかもしれない。
「話は終わりだ。
無駄話ばかりしてないで、ちゃんと次の授業の準備をしておけよ」
ホームルームが終わり真間先生が教室を出ていく。
直後、
「凛華~!」
「竜胆」
岬と小鳥遊の二人が、竜胆の席にやってきた。
「心配したじゃん、メールくらい返してよ」
「ん……何かあったのかと思った」
「あ~、本当だ。
ごめん、着信があったの気付かなかったよ」
スマホを見て、始めて連絡が来ていたことに竜胆は気付いたようだ。
それから最初の授業が始まるまで、三人は楽しそうに話をしていたけど……いつもと変わらなく見える竜胆の表情が、どこか俺には無理をしているように見えてしまった。
※
そして俺が明確な違和感を覚えたの四時間目の授業中のことだ。
『ごめん。
今日、お弁当作れなかった』
『わかった。
無理しなくていいからな』
『ごめん……』
謝るようなことじゃない。
元々は竜胆の善意で作ってくれていたものなのだから。
だがそうなると、今日の昼食は別々ということだろうか?
念の為、確認しておく。
『弁当持ってきてないなら……購買で何か買って、一緒に食べるか?』
『……ごめん。
今日、ちょっと用事ができちゃって……』
用事?
岬たちと一緒に食べるのだろうか?
だが、それなら事前に俺に伝えておくはずだが……。
視線を竜胆に向ける。
彼女はこちらを見ることなく、ただ無表情にスマホを見つめている。
『竜胆、何かあったのか?』
俺が気にし過ぎなのかもしれない。
そしてお節介かもしれない。
それでも――俺はその文章を送信した。
「っ……」
微かに声が漏れた。
それは間違いなく動揺。
竜胆は、俺に視線を向ける。
目と目が合う。
臨席の少女は震える唇を噛んだ。
何かを俺に伝えたい……でも言えない。
彼女の態度がそれを伝えていた。
そして暫くして……返信が届いた。
『何も、ないよ』
それが彼女の答えだった。
ボフッ!
腹部に軽い衝撃。
「おに~ちゃん!」
続けて優しい声音。
「朝ですよ」
その声に促されるように目を開くと、妹が俺の上に乗っていた。
「天音……重い」
「ちょ!? 女の子に重いは禁句です!」
俺の胸をポコポコ叩く天音。
騒がしいやり取りに、寝起きの意識が一気に覚醒していく。
「あ~わかった……悪かった」
「反省しましたか?」
「した。激しく反省した」
「なら許してあげます!
甘々妹に感謝してくださいね。
それと、朝ご飯の準備できてますから」
言って天音は俺の腹部から下りた。
「というか天音、いつもは起こしに来ないのになんで今日に限って?」
「お兄ちゃん、昨日デートに行ったので目覚ましの時間を直してないんじゃないかと思ったんです。
朝から心配妹です」
俺の疑問に答えたあと、妹は部屋を出て行った。
スマホのアラームを確認する。
見事に目覚ましの時間を直していなかった。
「……これは感謝だな」
天音のお陰で、今日ものんびり登校することができそうだ。
※
遅刻することなく学校へ到着。
廊下を進み教室へ。
中に入ると賑やかな話し声が聞こえてきた。
ホームルームまではあと十分ほどで、既に机は半分くらいは埋まっていた。
「じ~」
ん?
俺が教室に入ると、なぜか小鳥遊から視線を感じた。
俺とはほとんど接点がはないはずなのだが……いや、気のせいかもしれない。
そう考えて、俺は自分の席に着く。
(……竜胆はまだ来てないのか?)
いつもならもう来ていてもおかしくない時間。
もしかして遅刻だろうか?
考えてみれば彼女が遅刻したところを見たことがない。
「凛華、まだ来てないん?」
「みたい。メールの返信もない」
教室に入ってきた岬が、小鳥遊に確認を取っていた。
彼女たちも気になっているらしい。
(……メール、か)
俺はスマホを取り出す。
ロック画面にメールの内容が表示されていて。
『皆友くん、た』
内容はこうだった。
謝って送信してしまったのだろうか?
『どうかしたのか?』
俺は返信する。
だが既読は付かない。
何かあったのだろうか?
(……いや、今学校に向かっている最中なのかもしれない)
少し遅れているくらいで心配しすぎか。
そして時間は過ぎて。
「お前ら席に着け~、ホームルーム始めるぞ」
担任の真間先生がやってきた。
でも、俺の隣は今も空席のままで。
「なんだ? 竜胆は休みか。
他は……全員来て――」
ガラガラ――と少し激しい音が響き、教室の扉が開いた。
「あ、さ~せん。
ちょっと遅れちゃいました?」
いつもと変わらない軽い調子で、竜胆が教室に入ってきた。
「遅刻だ。
もう少し早く来い」
「は~い」
そして竜胆は自分の席へと座った。
「遅かったな」
真間先生がホームルームを進める中、俺は竜胆に話し掛けた。
「うん……ちょっと、電車が遅れちゃって……」
「そっか。
なぁ竜胆、あのメールはなんだったんだ?」
「メール? ぁ……もしかして、間違って送っちゃったかも。
ごめん」
竜胆は苦笑した。
何か俺に伝えたいことがあるのかと思ったが、大した用件ではなかったのかもしれない。
「話は終わりだ。
無駄話ばかりしてないで、ちゃんと次の授業の準備をしておけよ」
ホームルームが終わり真間先生が教室を出ていく。
直後、
「凛華~!」
「竜胆」
岬と小鳥遊の二人が、竜胆の席にやってきた。
「心配したじゃん、メールくらい返してよ」
「ん……何かあったのかと思った」
「あ~、本当だ。
ごめん、着信があったの気付かなかったよ」
スマホを見て、始めて連絡が来ていたことに竜胆は気付いたようだ。
それから最初の授業が始まるまで、三人は楽しそうに話をしていたけど……いつもと変わらなく見える竜胆の表情が、どこか俺には無理をしているように見えてしまった。
※
そして俺が明確な違和感を覚えたの四時間目の授業中のことだ。
『ごめん。
今日、お弁当作れなかった』
『わかった。
無理しなくていいからな』
『ごめん……』
謝るようなことじゃない。
元々は竜胆の善意で作ってくれていたものなのだから。
だがそうなると、今日の昼食は別々ということだろうか?
念の為、確認しておく。
『弁当持ってきてないなら……購買で何か買って、一緒に食べるか?』
『……ごめん。
今日、ちょっと用事ができちゃって……』
用事?
岬たちと一緒に食べるのだろうか?
だが、それなら事前に俺に伝えておくはずだが……。
視線を竜胆に向ける。
彼女はこちらを見ることなく、ただ無表情にスマホを見つめている。
『竜胆、何かあったのか?』
俺が気にし過ぎなのかもしれない。
そしてお節介かもしれない。
それでも――俺はその文章を送信した。
「っ……」
微かに声が漏れた。
それは間違いなく動揺。
竜胆は、俺に視線を向ける。
目と目が合う。
臨席の少女は震える唇を噛んだ。
何かを俺に伝えたい……でも言えない。
彼女の態度がそれを伝えていた。
そして暫くして……返信が届いた。
『何も、ないよ』
それが彼女の答えだった。
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