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第20話 カナンのチョップ
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少し遅れて俺は教室に向かっていた。
直ぐに戻ろうと思っていたのだが、確かめておきたいことがあった。
そして事実の確認を終えた。
(……予想通りだったな)
これで一つ、はっきりとわかったことがあった。
竜胆は間違いなく『何か』を隠そうと『嘘』を吐いた。
もしかしたら、俺には伝えづらいことなのかもしれない。
誰にでも一つや二つ、言いたくないことはあるだろう。
それは俺も同じだが――嘘に嘘を重ねれば、いずれ綻びが生まれる。
きっと、誰も傷付けない為の優しい嘘を、竜胆は吐こうとしたのだろう。
でも、多分……竜胆はまだ知らない。
その優しさはいつか――自分自身を傷付けることに繋がることを。
(……どうせ傷付くことになるのなら、問題は早期解決するしかない)
その為には――。
この先、俺がすべき最善を考えながら、教室に入った。
「凛華、もうお昼は食べたん?」
教室に入って直ぐに岬の声が聞こえた。
弁当箱を掲げて、竜胆に尋ねている。
(……ちゃんと戻ってたか)
椅子に座って岬たちと話している竜胆の姿を見ただけなのに、心が軽くなって気がした。
自分が思っている以上に彼女《 あいつ》を心配しているようだ。
「今日寝坊しちゃったから、お弁当を持ってくるの、忘れちゃって……」
「なら、ワタシのを分けるから」
「こっちも食べてよ。
んで~、このお礼に凛華がお弁当を持ってきたら、おかずの交換させて」
竜胆の机にお弁当箱が二つ並ぶ。
二人の気遣いに、竜胆は優しく笑った。
「わかった。
美愛、カナン……ありがとう」
岬と小鳥遊も微笑を浮かべる。
心無しか竜胆の顔色が少し良くなっていく気がした。
三人のやり取りを見ながら自分の席に座る。
「皆友~、あんたも食う?」
「ちょっとなら、皆友君にもあげる」
「は……?」
間抜けな声が出てしまったのは、予想外の事態が起こったからだ。
「は? じゃなくて、食べるって聞いてんの?」
「安心して。味にはそれなりに自信あるから」
聞こえてるし、味を疑ってるわけじゃない。
親しい間柄のように、声を掛けられて戸惑っていたんだ。
「むっ……。
なんで美愛とカナンが、皆友くんにそんな親しくなってるわけ?」
「あ~……凛華、もしかして嫉妬してるん?」
岬がニヤッと挑発的な笑みを浮かべる
そして、
「実は~……ずっと前から皆友のこと気になっててさ~……さっき、告っちゃった」
「んなっ――!?」
ぎゅっと俺の腕を掴み自分の胸に押し当ててくる。
そして竜胆に向けて挑発的な視線を向けた。
明らかにからかっているのは誰の目から見ても明らかだが、竜胆だけはわなわなと震えていた。
「こ、告るって、だ、だって……そんな……」
「あれ~? どうしたん、凛華? 別に凛華と皆友って、親しかったわけじゃないっしょ?」
「え、えっと……その……」
俺たちの関係については伏せてくれと頼んでいるので、竜胆は何も言えなくなっていた。
「お、男の子に、そんなベタベタするのとか、ありえないでしょ!」
「え~そう? でも好きな人にだったら、このくらい普通じゃね?」
「~~~~~っ」
竜胆は悔しそうに言葉を詰まらせた。
悶えるように震える姿が可愛らしくて、もうちょっと見ていたい気持ちが湧く。
が、俺としては放置できない問題も発生していた。
「あいつ、マジでなんなわけ?」
「さっき連れてかれてたのって、そういうことなの!?」
「岬さん……翔也くん狙いじゃなかったんだ……」
クラスメイトの会話の一部が聞こえた。
今日だけでクラス内での存在感は十倍くらいになっているかもしれない。
だが、それも含め岬は楽しんでいるようだった。
「と、とにかく、離れるの! じゃないと、あたしがやなの!」
「へぇ~、なんでやなん?」
「そ、それは……あ、あたしが……」
何かを口にしようとして、竜胆は俺に視線を送る。
目が合うと頬が赤く染まる。
それを見て、岬の頬がさらに緩んだ。
「え~なんなん? 凛華が~?」
「――てい!」
「あたっ……!?」
その時、小鳥遊のチョップが岬の頭に炸裂した。
「竜胆のこと、からかわない」
「は~い」
言われて岬は俺からさっと離れた。
「え? か、からかう――って、まさか本気じゃなかったの!?」
「ふふっ、凛華、かわ~い~!」
岬は竜胆をぎゅっと抱きしめる。
そして耳打ちで、
「……そんなに、皆友のこと、好きなん?」
何かを言った。
それに竜胆は小さく頷く。
「へぇ~! へぇ~! もうもう! 最初から相談してくれたらいいのに~」
「い、色々と事情があるの!」
むぅ~! と拗ねたような竜胆を、再び岬は抱きしめた。
「凛華の可愛いとこ、また一つ知っちゃった」
「可愛いとこって、なんだし……」
「え~、ここで言っちゃっていいわけ~?」
ちらちらっと、岬が俺に目線を送ってくる。
意味深すぎるだろ。
「だ、ダメ! てか、皆友くんのほう見んな!」
「え~見るもダメなん? 凛華って、意外と独占欲強――」
「岬……やりすぎるなら、また、くらわすよ?」
小鳥遊は小柄な割に、意外と武闘派のようだ。
「ちょ!? カナンのチョップ、マジで痛いから勘弁!」
女三人呼ればかしましい。
その言葉は間違いなく事実のようで、三人の美少女の仲睦まじいやり取りは、教室中の視線をさらっていた。
少し遅れて俺は教室に向かっていた。
直ぐに戻ろうと思っていたのだが、確かめておきたいことがあった。
そして事実の確認を終えた。
(……予想通りだったな)
これで一つ、はっきりとわかったことがあった。
竜胆は間違いなく『何か』を隠そうと『嘘』を吐いた。
もしかしたら、俺には伝えづらいことなのかもしれない。
誰にでも一つや二つ、言いたくないことはあるだろう。
それは俺も同じだが――嘘に嘘を重ねれば、いずれ綻びが生まれる。
きっと、誰も傷付けない為の優しい嘘を、竜胆は吐こうとしたのだろう。
でも、多分……竜胆はまだ知らない。
その優しさはいつか――自分自身を傷付けることに繋がることを。
(……どうせ傷付くことになるのなら、問題は早期解決するしかない)
その為には――。
この先、俺がすべき最善を考えながら、教室に入った。
「凛華、もうお昼は食べたん?」
教室に入って直ぐに岬の声が聞こえた。
弁当箱を掲げて、竜胆に尋ねている。
(……ちゃんと戻ってたか)
椅子に座って岬たちと話している竜胆の姿を見ただけなのに、心が軽くなって気がした。
自分が思っている以上に彼女《 あいつ》を心配しているようだ。
「今日寝坊しちゃったから、お弁当を持ってくるの、忘れちゃって……」
「なら、ワタシのを分けるから」
「こっちも食べてよ。
んで~、このお礼に凛華がお弁当を持ってきたら、おかずの交換させて」
竜胆の机にお弁当箱が二つ並ぶ。
二人の気遣いに、竜胆は優しく笑った。
「わかった。
美愛、カナン……ありがとう」
岬と小鳥遊も微笑を浮かべる。
心無しか竜胆の顔色が少し良くなっていく気がした。
三人のやり取りを見ながら自分の席に座る。
「皆友~、あんたも食う?」
「ちょっとなら、皆友君にもあげる」
「は……?」
間抜けな声が出てしまったのは、予想外の事態が起こったからだ。
「は? じゃなくて、食べるって聞いてんの?」
「安心して。味にはそれなりに自信あるから」
聞こえてるし、味を疑ってるわけじゃない。
親しい間柄のように、声を掛けられて戸惑っていたんだ。
「むっ……。
なんで美愛とカナンが、皆友くんにそんな親しくなってるわけ?」
「あ~……凛華、もしかして嫉妬してるん?」
岬がニヤッと挑発的な笑みを浮かべる
そして、
「実は~……ずっと前から皆友のこと気になっててさ~……さっき、告っちゃった」
「んなっ――!?」
ぎゅっと俺の腕を掴み自分の胸に押し当ててくる。
そして竜胆に向けて挑発的な視線を向けた。
明らかにからかっているのは誰の目から見ても明らかだが、竜胆だけはわなわなと震えていた。
「こ、告るって、だ、だって……そんな……」
「あれ~? どうしたん、凛華? 別に凛華と皆友って、親しかったわけじゃないっしょ?」
「え、えっと……その……」
俺たちの関係については伏せてくれと頼んでいるので、竜胆は何も言えなくなっていた。
「お、男の子に、そんなベタベタするのとか、ありえないでしょ!」
「え~そう? でも好きな人にだったら、このくらい普通じゃね?」
「~~~~~っ」
竜胆は悔しそうに言葉を詰まらせた。
悶えるように震える姿が可愛らしくて、もうちょっと見ていたい気持ちが湧く。
が、俺としては放置できない問題も発生していた。
「あいつ、マジでなんなわけ?」
「さっき連れてかれてたのって、そういうことなの!?」
「岬さん……翔也くん狙いじゃなかったんだ……」
クラスメイトの会話の一部が聞こえた。
今日だけでクラス内での存在感は十倍くらいになっているかもしれない。
だが、それも含め岬は楽しんでいるようだった。
「と、とにかく、離れるの! じゃないと、あたしがやなの!」
「へぇ~、なんでやなん?」
「そ、それは……あ、あたしが……」
何かを口にしようとして、竜胆は俺に視線を送る。
目が合うと頬が赤く染まる。
それを見て、岬の頬がさらに緩んだ。
「え~なんなん? 凛華が~?」
「――てい!」
「あたっ……!?」
その時、小鳥遊のチョップが岬の頭に炸裂した。
「竜胆のこと、からかわない」
「は~い」
言われて岬は俺からさっと離れた。
「え? か、からかう――って、まさか本気じゃなかったの!?」
「ふふっ、凛華、かわ~い~!」
岬は竜胆をぎゅっと抱きしめる。
そして耳打ちで、
「……そんなに、皆友のこと、好きなん?」
何かを言った。
それに竜胆は小さく頷く。
「へぇ~! へぇ~! もうもう! 最初から相談してくれたらいいのに~」
「い、色々と事情があるの!」
むぅ~! と拗ねたような竜胆を、再び岬は抱きしめた。
「凛華の可愛いとこ、また一つ知っちゃった」
「可愛いとこって、なんだし……」
「え~、ここで言っちゃっていいわけ~?」
ちらちらっと、岬が俺に目線を送ってくる。
意味深すぎるだろ。
「だ、ダメ! てか、皆友くんのほう見んな!」
「え~見るもダメなん? 凛華って、意外と独占欲強――」
「岬……やりすぎるなら、また、くらわすよ?」
小鳥遊は小柄な割に、意外と武闘派のようだ。
「ちょ!? カナンのチョップ、マジで痛いから勘弁!」
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その言葉は間違いなく事実のようで、三人の美少女の仲睦まじいやり取りは、教室中の視線をさらっていた。
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