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第35話 天音ちゃんは恋愛経験豊富!?
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※
テレビを見ながら待つこと一時間。
食欲を駆り立てる香りに空腹が強まってきた頃、
「皆友くん、お待たせ」
ついに二人の手作り料理が完成した。
「どの料理も、凛華お姉ちゃんの愛情たっぷりです」
テーブルに並んでいる料理の数々を見れば、竜胆が一生懸命作ってくれたのがわかる。
「はっきり言われると、ちょっと照れるけど……皆友くんに喜んでほしくてがんばったから……冷める前に食べてみてよ」
「ありがとな。
それじゃ早速……いただきます!」
パン――と、手を合わせてから、俺は箸を手に取った。
どれも美味しそうなので、まずは最初に目に入った料理――肉じゃがを口に運ぶ。
良く火が通っていて、ほくほくだ。
じゃがいもの甘みと牛肉の旨味がしっかりと染み込んでいて、口の中に幸せが広がっていく。
「どう、かな?」
竜胆は緊張した面持ちで料理の感想を聞いてきた。
「めちゃくちゃ美味い……!」
「ほんと!? ……良かったぁ~」
俺の感想を聞くと、ほっと胸を撫でおろして柔和な笑みを浮かべる。
「竜胆はやっぱり料理上手なんだな。
こんな美味い肉じゃが初めて食べた」
「気に入ってくれたの?」
「ああ、かなり!」
「嬉しい……実は得意料理なんだよね」
プロの料理人が作るよりも美味いかもしれない。
正直、完全に胃袋を掴まれた。
「これならいくらでも食べられるよ」
「沢山あるから、いっぱい食べて。
それに食べたくなったら、呼んでくれたらいつでも作るから」
「竜胆の手料理なら、毎日だって食べたいくらいだ」
「あたしだって、皆友くんの為なら毎日だって作ってあげたい」
気付けば、俺たちは見つめ合っていた。
くすぐったくて、ちょっとだけもどかしいような……でも、それだけで胸の中に温かい気持ちが溢れてくる。
「なら、明日からも一緒に食べませんか?」
「はっ!?」
「えっ!?」
天音からのまさかの提案に、俺と竜胆の驚愕が重なった。
「凛華お姉ちゃんがよければ……なんですけど、やっぱり難しいでしょうか?」
俺たちの反応を見て、天音は窺うように尋ねてくる。
「あたしは大丈夫だけど……皆友くんは、どう?」
「俺は……竜胆がいいなら。
でも、毎日は大変じゃないか?」
「一人分作るのも、みんなの分を作るのも変わらないよ。
それに皆友くんに食べてもらえるの嬉しいから」
互いに遠慮はありながらも、俺たちの答えは最初から決まっていたんだと思う。
「なら決定ですね!」
急展開ではあるが……これからうちの食卓は、さらに賑やかになりそうだ。
※
食事を終えて。
片付けくらいは俺がするつもりだったのだけど。
「今日はお礼なんだから、全部あたしに任せて皆友くんはゆっくり休んでてよ」
ということで、竜胆に任せることになった。
「お兄ちゃん、お風呂に入っちゃったらどうですか?」
「……そうだな」
シャワーで汗を流すくらいはしておきたいが……。
「皆友くん、遠慮しないで入ってきてよ。
その間に食器を洗っておくから」
竜胆は俺の考えに気付いたらしい。
ここで断るのは余計に気を遣わせてしまうかもしれない。
「……ならお言葉に甘えさせてもらうかな」
「うん、いってらっしゃい」
それだけ伝えて俺は部屋を出た。
※
皆友くんがリビングを出て行った直後、
「凜華お姉ちゃん、これはチャンスです!」
お皿洗いを始めようとしたあたしに、天音ちゃんが言った。
「チャンス?」
「お兄ちゃんのお背中流し作戦です!」
「お背中……っ――!?」
最初、何を言われているのかわからなったけど、理解した瞬間――皆友くんの姿を想像してしまった。
それだけで、体中が熱くなっていく。
「胃袋をバッチリ掴んだんですから、今度は心もがっちりキャッチです!」
「で、でも、流石に大胆すぎない?」
天音ちゃんは知らないかもだけど、あたしたちはまだ……恋人同士でもないわけで……そこまでしたら、皆友くんにはしたない子だと思われないか不安だ。
「凛華お姉ちゃん、女は度胸です!」
「女は度胸……!?」
確かにそれは大切だと思う。
勇気を出さなければ、二人の関係は何も変わらない。
「お兄ちゃんは人付き合いに関しては、奥手さんですから……」
「それはわかってるつもりだけど……」
「でも、今まで家に女の子を連れてきたことはなかったんです!
つまりお兄ちゃんにとって、凛華お姉ちゃんはそれだけ特別ってことです!」
『特別』――その言葉を聞いて、胸が高鳴った。
すごく嬉しくなってしまう。
「そんな特別なお姉ちゃんに、お背中を流されたら……」
「な、流されたら?」
「きっとお姉ちゃんのこと、今よりももっと好きに、夢中になっちゃうはずです!」
「天音ちゃんって、もしかして恋愛経験豊富なの?」
「ネットと漫画とアニメの知識です!」
「……それ頼りになるのかな?」
結構、偏りがある気がするんだけど……。
「バッチリです!」
でも、天音ちゃんは自信があるようだ。
彼女が応援してくれるのは純粋に嬉しい。
「あたしは経験全然ないから、そういうわかんないけど……」
男の人はそういうことをされたら、嬉しいのだろうか?
でも、もしも皆友くんが、今よりもあたしを好きになってくれるのなら――。
「よし……! あたし、がんばってみる!」
「その意気です! お皿は天音が洗っておきますから」
「うん……じゃあ、行ってくるから」
あたしは天音ちゃんに背中を押されたことで、覚悟を決めて皆友くんのいる浴室に向かうのだった。
テレビを見ながら待つこと一時間。
食欲を駆り立てる香りに空腹が強まってきた頃、
「皆友くん、お待たせ」
ついに二人の手作り料理が完成した。
「どの料理も、凛華お姉ちゃんの愛情たっぷりです」
テーブルに並んでいる料理の数々を見れば、竜胆が一生懸命作ってくれたのがわかる。
「はっきり言われると、ちょっと照れるけど……皆友くんに喜んでほしくてがんばったから……冷める前に食べてみてよ」
「ありがとな。
それじゃ早速……いただきます!」
パン――と、手を合わせてから、俺は箸を手に取った。
どれも美味しそうなので、まずは最初に目に入った料理――肉じゃがを口に運ぶ。
良く火が通っていて、ほくほくだ。
じゃがいもの甘みと牛肉の旨味がしっかりと染み込んでいて、口の中に幸せが広がっていく。
「どう、かな?」
竜胆は緊張した面持ちで料理の感想を聞いてきた。
「めちゃくちゃ美味い……!」
「ほんと!? ……良かったぁ~」
俺の感想を聞くと、ほっと胸を撫でおろして柔和な笑みを浮かべる。
「竜胆はやっぱり料理上手なんだな。
こんな美味い肉じゃが初めて食べた」
「気に入ってくれたの?」
「ああ、かなり!」
「嬉しい……実は得意料理なんだよね」
プロの料理人が作るよりも美味いかもしれない。
正直、完全に胃袋を掴まれた。
「これならいくらでも食べられるよ」
「沢山あるから、いっぱい食べて。
それに食べたくなったら、呼んでくれたらいつでも作るから」
「竜胆の手料理なら、毎日だって食べたいくらいだ」
「あたしだって、皆友くんの為なら毎日だって作ってあげたい」
気付けば、俺たちは見つめ合っていた。
くすぐったくて、ちょっとだけもどかしいような……でも、それだけで胸の中に温かい気持ちが溢れてくる。
「なら、明日からも一緒に食べませんか?」
「はっ!?」
「えっ!?」
天音からのまさかの提案に、俺と竜胆の驚愕が重なった。
「凛華お姉ちゃんがよければ……なんですけど、やっぱり難しいでしょうか?」
俺たちの反応を見て、天音は窺うように尋ねてくる。
「あたしは大丈夫だけど……皆友くんは、どう?」
「俺は……竜胆がいいなら。
でも、毎日は大変じゃないか?」
「一人分作るのも、みんなの分を作るのも変わらないよ。
それに皆友くんに食べてもらえるの嬉しいから」
互いに遠慮はありながらも、俺たちの答えは最初から決まっていたんだと思う。
「なら決定ですね!」
急展開ではあるが……これからうちの食卓は、さらに賑やかになりそうだ。
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食事を終えて。
片付けくらいは俺がするつもりだったのだけど。
「今日はお礼なんだから、全部あたしに任せて皆友くんはゆっくり休んでてよ」
ということで、竜胆に任せることになった。
「お兄ちゃん、お風呂に入っちゃったらどうですか?」
「……そうだな」
シャワーで汗を流すくらいはしておきたいが……。
「皆友くん、遠慮しないで入ってきてよ。
その間に食器を洗っておくから」
竜胆は俺の考えに気付いたらしい。
ここで断るのは余計に気を遣わせてしまうかもしれない。
「……ならお言葉に甘えさせてもらうかな」
「うん、いってらっしゃい」
それだけ伝えて俺は部屋を出た。
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皆友くんがリビングを出て行った直後、
「凜華お姉ちゃん、これはチャンスです!」
お皿洗いを始めようとしたあたしに、天音ちゃんが言った。
「チャンス?」
「お兄ちゃんのお背中流し作戦です!」
「お背中……っ――!?」
最初、何を言われているのかわからなったけど、理解した瞬間――皆友くんの姿を想像してしまった。
それだけで、体中が熱くなっていく。
「胃袋をバッチリ掴んだんですから、今度は心もがっちりキャッチです!」
「で、でも、流石に大胆すぎない?」
天音ちゃんは知らないかもだけど、あたしたちはまだ……恋人同士でもないわけで……そこまでしたら、皆友くんにはしたない子だと思われないか不安だ。
「凛華お姉ちゃん、女は度胸です!」
「女は度胸……!?」
確かにそれは大切だと思う。
勇気を出さなければ、二人の関係は何も変わらない。
「お兄ちゃんは人付き合いに関しては、奥手さんですから……」
「それはわかってるつもりだけど……」
「でも、今まで家に女の子を連れてきたことはなかったんです!
つまりお兄ちゃんにとって、凛華お姉ちゃんはそれだけ特別ってことです!」
『特別』――その言葉を聞いて、胸が高鳴った。
すごく嬉しくなってしまう。
「そんな特別なお姉ちゃんに、お背中を流されたら……」
「な、流されたら?」
「きっとお姉ちゃんのこと、今よりももっと好きに、夢中になっちゃうはずです!」
「天音ちゃんって、もしかして恋愛経験豊富なの?」
「ネットと漫画とアニメの知識です!」
「……それ頼りになるのかな?」
結構、偏りがある気がするんだけど……。
「バッチリです!」
でも、天音ちゃんは自信があるようだ。
彼女が応援してくれるのは純粋に嬉しい。
「あたしは経験全然ないから、そういうわかんないけど……」
男の人はそういうことをされたら、嬉しいのだろうか?
でも、もしも皆友くんが、今よりもあたしを好きになってくれるのなら――。
「よし……! あたし、がんばってみる!」
「その意気です! お皿は天音が洗っておきますから」
「うん……じゃあ、行ってくるから」
あたしは天音ちゃんに背中を押されたことで、覚悟を決めて皆友くんのいる浴室に向かうのだった。
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