7 / 40
STAGE1
第7話 襲来
しおりを挟む
※
どこに向かうのかと思えば、寮は学校の敷地内にあった。
五階建てになっていて部屋の数も多い。
学校の生徒はここで寝泊まりしているのだろう。
恋の部屋2階の右奥だった。
「ただいま」
「お邪魔します」
一応、声を掛けてから入る。
ベッドに椅子と机。
寝る為にあるような部屋だった。
「ベッドにでも座ってて。
何もないからお茶も出せなくて申し訳ないんだけど……」
「いや、お構いなく。
ゆっくりと話ができればそれでいいからな」
俺がベッドに座ったあと、恋も隣に腰を下ろした。
まずは恋の使命に関して確認しておきたい。
が、恋も俺に話しておきたいことがあると言ってたな。
「さて、どっちから話をする?」
「巡の話を聞かせてよ。
日本に帰れるっていうのはどういうこと?」
「わかった」
この話を聞いてからずっと、恋はそわそわとしていた。
当然だが、かなり気になっているらしい。
「俺はお前を日本に連れ戻す為に、この世界に転移してきたんだ」
「ぇ……? ど、どういうこと?」
俺はここに来るまでにあった出来事をざっくりと伝えた。
恋は百面相しながら俺の話を聞いている。
今まで俺の身に起こった話を聞けば、この顔も当然だと思う。
だが恋の理解は早かった。
自身も異世界に転移していることを考えれば、何が起こってもおかしくはないと考えたようだ。
「……何度も転生と転移をって……地獄じゃん……!」
「まぁ……な。
流石にキツい時もあったよ」
全部が全部、辛い思い出ばかりではないけれど、それでも心が折れそうになったこともあった。
それでも諦めなかった結果、今がある。
友達を、大切なものを取り戻す為の力を手に入れられたと思えば、結果オーライだ。
「あたしたちを助ける為に、また異世界に来るなんて怖くなかったわけ?」
「それは全く。
お前らにもう二度と会えないと思う方が、俺は怖かったよ」
「っ……巡、ありがと。
お礼を言わないといけないのは、あたしのほうだよ」
恋の目に涙が浮かでいた。
「泣くなよ」
「泣いてない!」
胸に顔を埋めて、恋は涙を隠す。
相変わらず意地っ張りのようだ。
「……二人きりの時は甘えさせてくれてもいいから」
つまり撫でろということらしい。
俺は恋の頭を撫でると、さらさらの長髪がさらりと揺れた。
すると恋は満足に満面の笑みを向ける。
誰に対しても気が強くツンとした態度の恋だが、俺と二人きりの時は甘えん坊になる。 それだけ気を許してくれているということだろう。
「巡……」
「うん?」
「あたし、こっちってからずっと、本当は怖かった。
一人ぼっちでこの世界に来て……みんながどうなったかもわかんなくて……不安ばっかりで、一人になった時、泣いちゃったりもした」
全く知らない世界に、たった一人きり。
その恐怖は計り知れない。
しかもここは地球ではなく異世界なのだから。
「でも、さっき巡の顔を見た瞬間、すっごく嬉しくなっちゃって、今はそんな不安吹き飛んじゃった」
「俺も同じ気持ちだ。
それに恋が無事で安心した」
「また……みんなに会えるよね」
「勿論だ。
その為に俺がいる」
全員を異世界から救い出して、今度こそ日常を取り戻す。
「うん! ……よし! ありがとう、巡! もう元気充電完了!」
俺から離れて、恋は気合を入れるみたいに細い腕で力こぶを作るように両腕をグッとさせた。
「恋……日本へ帰還する為に、直ぐにでも動きたい」
「わかった。
あたしは何をすればいい?」
「まず異世界に来た時にお前に与えられた使命について教えてくれないか?」
使命というのは、異世界転移者が神々から与えられる啓示のようなものだ。
それを達成することで元の世界へ安全に帰還することができる。
「あたしの使命は魔王討伐」
「魔王のいる場所はわかるか?」
「この大陸の北にある暗黒大陸――そこに魔窟と呼ばれるダンジョンがあるらしいの。
その最深部に魔王がいるって……でも、魔王の姿を目にしたことがある者は誰もいない」
「なら、行ってみるか」
俺はベッドから立ち上がった。
場所がわかっているのなら、あとは討伐するだけだ」
「ええええええっ!? ちょっと待ちなさいよ! 魔王よ! この世界で最強って言われてるの! ちゃんと訓練を積んでからじゃないと――」
「そんなのは無限に積んだ」
「無限って、めちゃくちゃ言わないでよ! 命がかかってるんだから」
比喩ではない。
本当に無限に近い時間、俺は異世界で闘いに明け暮れていたのだから。
「安心しろ。
お前のことは必ず俺が守る」
「……巡が強いのはわかるよ。
でも……やっぱり怖い。
巡のことは信じてるけど、もっと訓練を積んであたし自身が強くなって万全を期したほうがいいんじゃないかな?」
戦いの怖さを知っているからこそ、恋は慎重になっているようだ。
これなら一度、力を見せるのが早いかもしれない。
(……丁度よかったな)
今、少し大きな魔力を持った何かが、この城下町に近付いてきている。
「恋、外に出るぞ」
「え?」
「敵が来るみたいだ。
お前は感じないか?」
「感じないかって……っ――な、なに、この魔力反応!?」
遅れて恋も気付いたようだ。
向かってくる強烈な気配に身体を震わせている。
「こ、こんな相手……だ、誰も勝てるわけ……」
「恋は見てるだけでいいからな」
「え?」
俺は恋の手を掴み学園の敷地に転移した。
どこに向かうのかと思えば、寮は学校の敷地内にあった。
五階建てになっていて部屋の数も多い。
学校の生徒はここで寝泊まりしているのだろう。
恋の部屋2階の右奥だった。
「ただいま」
「お邪魔します」
一応、声を掛けてから入る。
ベッドに椅子と机。
寝る為にあるような部屋だった。
「ベッドにでも座ってて。
何もないからお茶も出せなくて申し訳ないんだけど……」
「いや、お構いなく。
ゆっくりと話ができればそれでいいからな」
俺がベッドに座ったあと、恋も隣に腰を下ろした。
まずは恋の使命に関して確認しておきたい。
が、恋も俺に話しておきたいことがあると言ってたな。
「さて、どっちから話をする?」
「巡の話を聞かせてよ。
日本に帰れるっていうのはどういうこと?」
「わかった」
この話を聞いてからずっと、恋はそわそわとしていた。
当然だが、かなり気になっているらしい。
「俺はお前を日本に連れ戻す為に、この世界に転移してきたんだ」
「ぇ……? ど、どういうこと?」
俺はここに来るまでにあった出来事をざっくりと伝えた。
恋は百面相しながら俺の話を聞いている。
今まで俺の身に起こった話を聞けば、この顔も当然だと思う。
だが恋の理解は早かった。
自身も異世界に転移していることを考えれば、何が起こってもおかしくはないと考えたようだ。
「……何度も転生と転移をって……地獄じゃん……!」
「まぁ……な。
流石にキツい時もあったよ」
全部が全部、辛い思い出ばかりではないけれど、それでも心が折れそうになったこともあった。
それでも諦めなかった結果、今がある。
友達を、大切なものを取り戻す為の力を手に入れられたと思えば、結果オーライだ。
「あたしたちを助ける為に、また異世界に来るなんて怖くなかったわけ?」
「それは全く。
お前らにもう二度と会えないと思う方が、俺は怖かったよ」
「っ……巡、ありがと。
お礼を言わないといけないのは、あたしのほうだよ」
恋の目に涙が浮かでいた。
「泣くなよ」
「泣いてない!」
胸に顔を埋めて、恋は涙を隠す。
相変わらず意地っ張りのようだ。
「……二人きりの時は甘えさせてくれてもいいから」
つまり撫でろということらしい。
俺は恋の頭を撫でると、さらさらの長髪がさらりと揺れた。
すると恋は満足に満面の笑みを向ける。
誰に対しても気が強くツンとした態度の恋だが、俺と二人きりの時は甘えん坊になる。 それだけ気を許してくれているということだろう。
「巡……」
「うん?」
「あたし、こっちってからずっと、本当は怖かった。
一人ぼっちでこの世界に来て……みんながどうなったかもわかんなくて……不安ばっかりで、一人になった時、泣いちゃったりもした」
全く知らない世界に、たった一人きり。
その恐怖は計り知れない。
しかもここは地球ではなく異世界なのだから。
「でも、さっき巡の顔を見た瞬間、すっごく嬉しくなっちゃって、今はそんな不安吹き飛んじゃった」
「俺も同じ気持ちだ。
それに恋が無事で安心した」
「また……みんなに会えるよね」
「勿論だ。
その為に俺がいる」
全員を異世界から救い出して、今度こそ日常を取り戻す。
「うん! ……よし! ありがとう、巡! もう元気充電完了!」
俺から離れて、恋は気合を入れるみたいに細い腕で力こぶを作るように両腕をグッとさせた。
「恋……日本へ帰還する為に、直ぐにでも動きたい」
「わかった。
あたしは何をすればいい?」
「まず異世界に来た時にお前に与えられた使命について教えてくれないか?」
使命というのは、異世界転移者が神々から与えられる啓示のようなものだ。
それを達成することで元の世界へ安全に帰還することができる。
「あたしの使命は魔王討伐」
「魔王のいる場所はわかるか?」
「この大陸の北にある暗黒大陸――そこに魔窟と呼ばれるダンジョンがあるらしいの。
その最深部に魔王がいるって……でも、魔王の姿を目にしたことがある者は誰もいない」
「なら、行ってみるか」
俺はベッドから立ち上がった。
場所がわかっているのなら、あとは討伐するだけだ」
「ええええええっ!? ちょっと待ちなさいよ! 魔王よ! この世界で最強って言われてるの! ちゃんと訓練を積んでからじゃないと――」
「そんなのは無限に積んだ」
「無限って、めちゃくちゃ言わないでよ! 命がかかってるんだから」
比喩ではない。
本当に無限に近い時間、俺は異世界で闘いに明け暮れていたのだから。
「安心しろ。
お前のことは必ず俺が守る」
「……巡が強いのはわかるよ。
でも……やっぱり怖い。
巡のことは信じてるけど、もっと訓練を積んであたし自身が強くなって万全を期したほうがいいんじゃないかな?」
戦いの怖さを知っているからこそ、恋は慎重になっているようだ。
これなら一度、力を見せるのが早いかもしれない。
(……丁度よかったな)
今、少し大きな魔力を持った何かが、この城下町に近付いてきている。
「恋、外に出るぞ」
「え?」
「敵が来るみたいだ。
お前は感じないか?」
「感じないかって……っ――な、なに、この魔力反応!?」
遅れて恋も気付いたようだ。
向かってくる強烈な気配に身体を震わせている。
「こ、こんな相手……だ、誰も勝てるわけ……」
「恋は見てるだけでいいからな」
「え?」
俺は恋の手を掴み学園の敷地に転移した。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる