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STAGE1
第8話 魔族討伐
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「なっ!? 部屋の中にいたはずなのに……ワープしたの?」
景色が一瞬で変化したことに驚いて、恋は周囲を見回す。
「転移の魔法を使った」
「あんた、そんな魔法も使えるの!?」
頷くだけで返事をして俺は空を眺めた。
すると、高速で接近する黒い物体が見えた。
それは自身の存在を主張するように、魔力の波動を抑えようとしない。
「あ、あれは……魔人族!?」
「魔人ってことは、敵でいいのか?」
俺が確認したのは、俺の経験上、人と魔族が仲良くやっている異世界もあるからだ。
「……最悪の敵。
魔物を束ねてるのが魔人族――魔王の臣下で10人いるって言われてる」
「こっちに向かってるのは一人みたいだな」
普通に目で姿が見えるほど距離が迫っていた。
黒翼を持った人型の魔物――だから魔人なのだろう。
人の名を冠していても発せられる魔力は邪悪な気配に満ちている。
「おお、止まったぞ」
「そんな冷静に言ってる場合じゃないわよ!
あたしたちのほうを見てるじゃない!」
というか、明らかに俺を見ていた。
敵意――いや、殺意を向き出しにしている。
「お前だな」
「何がだ?」
発言の意味がわからず聞き返した。
「先程の異常な力の正体はお前かと聞いている」
うん?
それほど力を発揮した覚えはないのだが……。
(……あ、もしかしてあれか?)
下種勇者に対して、少し怒りの感情を洩らした時のことを言っているのだろうか?
「あ~……多分、そうだな」
「貴様が魔王様の言っていた真の勇者というわけか……まさかあれほどの魔力を持っているとは……その力はあまりにも危険すぎる」
「いや、俺はこの世界の勇者ではないが……」
俺を見下ろす魔族の視線が、さらに鋭さを増していく。
気の弱いものであれば気圧されてしまってもおかしくないほどに。
「っ……息苦しいほどの威圧感……。
これが魔人の実力……悔しいけど、今のあたしじゃ……」
異世界に転移してからそれほど経(た)っていない状態で、いきなりボス格の相手がやってきたのだ。
RPGであれば勇者が成長する前に倒してしまえと言う禁じ手をやられたようなものだろう。
「恋……安心しろ」
「安心って……」
俺は恋を安心させる為に微笑を向けた。
それから直ぐに魔族に視線を戻す。
「今も殺意を向けてるってことは、戦う気があるってことだよな?」
返事はない。
が、魔族は地上に向けて右手を向けた。
すると膨大な魔力が集まり塊となっていく。
つまり、それが答えなのだろう。
「っ――な、なんなのよ、このデタラメな魔力!? まだ強くなってる……!」
「闇属性の魔法だな。
この魔力反応からすると、この辺り一体が吹き飛びそうだ」
「それ冷静に言ってる場合じゃないわよ!」
それはどんどん大きくなり、黒い太陽のようになっていた。
さらに込められた魔力が凝縮して、小さな丸い塊が生まれた。
「消えよ、人間」
放たれた暗黒の塊が地上に――俺に向かって放たれた。
光速で破壊の塊が迫る中、俺は反射の魔法を人差し指に掛けた。
「ほら」
パン――!! 着弾する直前、俺はその魔力の塊をデコピンした。
俺に向かって飛んできた数倍の速度で、暗黒が魔族に迫っていく。
そして、
「……? ぇ……――!? っぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
魔人は俺が何をしたのかすら気付かなかったのだろう。
防御することもできぬまま、自身が放った魔法が腹部に直撃――瞬間、ドッガアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!
快晴の青空を黒くに染める闇の大爆発が起こった。
「なっ!? ぼ、防御魔法を!」
「もう展開してあるよ」
俺は反射の魔法を使うのと並行して、町を守る為の防御結界を張った。
その為、この程度の爆発では一切被害はない。
少しして大爆発がおさまると、再び青空が視界に広がった。
変化があったとすれば、宙に浮かんでいた魔族が力なく落下してきていることだろう。
――バターン!!
既に戦う力は失ったようで、何もできぬまま騎士学校の敷地に落ちた。
「ほら、大丈夫だったろ?」
「か、勝っちゃったの? ……魔族、それも魔人相手に……?」
「見ての通りだな」
「す、すごい……巡、あんた信じられないくらい強いんじゃない!」
まぁ、数えきれないほどの異世界を救ってるからな。
この程度の相手なら指先一つでダウンだった。
(……本当は見るだけでも倒せたんだけどな)
人差し指を使うなんて、我ながら興が乗り過ぎてしまった。
「しかし、ラッキーだったな」
「ラッキーって、どういうこと?」
「だって魔人は魔王の配下なんだろ? なら、こいつは魔王の居場所を知ってるってことじゃないか?」
「あ……そうか。情報を聞き出すのね!」
「そういうことだ」
これで後は魔王を倒せば、恋の使命は完了。
無事に日本へと戻れるだろう。
俺は倒れている魔族に向かって足を進めた。
まずは拘束してから、軽く治療をしてやることにしよう。
景色が一瞬で変化したことに驚いて、恋は周囲を見回す。
「転移の魔法を使った」
「あんた、そんな魔法も使えるの!?」
頷くだけで返事をして俺は空を眺めた。
すると、高速で接近する黒い物体が見えた。
それは自身の存在を主張するように、魔力の波動を抑えようとしない。
「あ、あれは……魔人族!?」
「魔人ってことは、敵でいいのか?」
俺が確認したのは、俺の経験上、人と魔族が仲良くやっている異世界もあるからだ。
「……最悪の敵。
魔物を束ねてるのが魔人族――魔王の臣下で10人いるって言われてる」
「こっちに向かってるのは一人みたいだな」
普通に目で姿が見えるほど距離が迫っていた。
黒翼を持った人型の魔物――だから魔人なのだろう。
人の名を冠していても発せられる魔力は邪悪な気配に満ちている。
「おお、止まったぞ」
「そんな冷静に言ってる場合じゃないわよ!
あたしたちのほうを見てるじゃない!」
というか、明らかに俺を見ていた。
敵意――いや、殺意を向き出しにしている。
「お前だな」
「何がだ?」
発言の意味がわからず聞き返した。
「先程の異常な力の正体はお前かと聞いている」
うん?
それほど力を発揮した覚えはないのだが……。
(……あ、もしかしてあれか?)
下種勇者に対して、少し怒りの感情を洩らした時のことを言っているのだろうか?
「あ~……多分、そうだな」
「貴様が魔王様の言っていた真の勇者というわけか……まさかあれほどの魔力を持っているとは……その力はあまりにも危険すぎる」
「いや、俺はこの世界の勇者ではないが……」
俺を見下ろす魔族の視線が、さらに鋭さを増していく。
気の弱いものであれば気圧されてしまってもおかしくないほどに。
「っ……息苦しいほどの威圧感……。
これが魔人の実力……悔しいけど、今のあたしじゃ……」
異世界に転移してからそれほど経(た)っていない状態で、いきなりボス格の相手がやってきたのだ。
RPGであれば勇者が成長する前に倒してしまえと言う禁じ手をやられたようなものだろう。
「恋……安心しろ」
「安心って……」
俺は恋を安心させる為に微笑を向けた。
それから直ぐに魔族に視線を戻す。
「今も殺意を向けてるってことは、戦う気があるってことだよな?」
返事はない。
が、魔族は地上に向けて右手を向けた。
すると膨大な魔力が集まり塊となっていく。
つまり、それが答えなのだろう。
「っ――な、なんなのよ、このデタラメな魔力!? まだ強くなってる……!」
「闇属性の魔法だな。
この魔力反応からすると、この辺り一体が吹き飛びそうだ」
「それ冷静に言ってる場合じゃないわよ!」
それはどんどん大きくなり、黒い太陽のようになっていた。
さらに込められた魔力が凝縮して、小さな丸い塊が生まれた。
「消えよ、人間」
放たれた暗黒の塊が地上に――俺に向かって放たれた。
光速で破壊の塊が迫る中、俺は反射の魔法を人差し指に掛けた。
「ほら」
パン――!! 着弾する直前、俺はその魔力の塊をデコピンした。
俺に向かって飛んできた数倍の速度で、暗黒が魔族に迫っていく。
そして、
「……? ぇ……――!? っぅぅぅぅぅぅぅぅ!?」
魔人は俺が何をしたのかすら気付かなかったのだろう。
防御することもできぬまま、自身が放った魔法が腹部に直撃――瞬間、ドッガアアアアアアアアアアアアン!!!!!!!
快晴の青空を黒くに染める闇の大爆発が起こった。
「なっ!? ぼ、防御魔法を!」
「もう展開してあるよ」
俺は反射の魔法を使うのと並行して、町を守る為の防御結界を張った。
その為、この程度の爆発では一切被害はない。
少しして大爆発がおさまると、再び青空が視界に広がった。
変化があったとすれば、宙に浮かんでいた魔族が力なく落下してきていることだろう。
――バターン!!
既に戦う力は失ったようで、何もできぬまま騎士学校の敷地に落ちた。
「ほら、大丈夫だったろ?」
「か、勝っちゃったの? ……魔族、それも魔人相手に……?」
「見ての通りだな」
「す、すごい……巡、あんた信じられないくらい強いんじゃない!」
まぁ、数えきれないほどの異世界を救ってるからな。
この程度の相手なら指先一つでダウンだった。
(……本当は見るだけでも倒せたんだけどな)
人差し指を使うなんて、我ながら興が乗り過ぎてしまった。
「しかし、ラッキーだったな」
「ラッキーって、どういうこと?」
「だって魔人は魔王の配下なんだろ? なら、こいつは魔王の居場所を知ってるってことじゃないか?」
「あ……そうか。情報を聞き出すのね!」
「そういうことだ」
これで後は魔王を倒せば、恋の使命は完了。
無事に日本へと戻れるだろう。
俺は倒れている魔族に向かって足を進めた。
まずは拘束してから、軽く治療をしてやることにしよう。
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