最強無敵のRe:Act~無数の異世界を救った俺が、転移に巻き込まれたクラスメイトを救います~

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STAGE2

第20話 山賊騎士

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 前回と同様、管理局の女神たちに指定された座標に飛んだ。
 どうやら無事にハルケニア大陸に転移はできたようだが……。

『なぁ、アル……女神たちは俺に嫌がらせしてるのか?』

 俺たちが転移した場所がマグマの中だったからだ。
 常に防御結界を張っている為、この程度の熱では一切ダメージはない。
 それと呼吸も問題ない。
 マグマの中だろうと海中の中だろうと、俺は元素を変換することで酸素を得ることができるからだ。

『我としてはもっと熱いほうが好みだな』
『風呂かよ!』
『ゴッドジョークだ。女神たちは些末なことは気にも止めていない。神とはそういうものだ』

 つまり女神たちは、問題なく転移者のいる異世界へ飛べればそれでいいと考えているのだろう。

『とりあえず出るか』

 俺は浮遊の魔法を使ってマグマの中を飛び上がった。

 ――ぼおおおおおおおおおんっ!

 マグマから飛び出すと、周囲に業火の飛沫が舞う。

「ぇ……ぎゃあああああああああああああああっ!?」
「うん?」

 絶叫に目を向けると、山賊のような格好の男が目に入った。

「な、ななななな、なんで!? え!? ひ、人!? 人なの!?」

 どうやら俺がマグマの中から出てきことに驚き腰を抜かしたらしい。
 俺は浮遊の魔法を解いて適当な場所に着地した。
 パッと見た感じここは洞窟の中のようだ。
 真っ赤なマグマが明かりの代わりをしているので暗くはない。
 軽く状況を確認してから、俺は尻餅を突く男に目を向けた。

「悪い。驚かせたな」
「おおおお、驚く!? こ、この騎士であるオレが、お、驚くわけないだろ!」
「いや、どう見てもお前、山賊だろ?」
「はっ!? ち、違う! こ、これは仮の姿なのだ!」
「仮……? ならお前はなんでここにいるんだよ?」
「そ、それは……」

 自称騎士は口ごもった。
 本当にこの男が騎士なら何か任務でもあるのだろう。
 わざわざ年若い騎士が山賊の中に紛れ込んでいるというだけで、事情を察することはできる。

『助けるのか?』

 アルが尋ねてきた。
 が……俺にも俺の予定がある。

『いや、転移者の救出が優先だ。とりあえずここを出よう』
『いいのか? まとまった人の気配があるが?』

 それは俺も感じていた。
 一人や二人ではない。
 集団になっている。


『行ってみるのもいいのではないか?』
『アル、考えてみろ』
『うん?』
『こんなところに、まともな人間がいると思うか?』
『ふむ……。脆弱な人間が暮らすのに適した場所ではないな』

 歩いているだけでも命の危機だろう。
 つまり問題を抱えた者がここに住んでいると考えるのが妥当だ。

「――お、お前は山賊の仲間か!?」

 考えをまとめている俺に、自称騎士は疑問を向けた。
 緊張に顔を強張(こわば)らせている。

「山賊に見えるか?」
「み、見えない! 見たことのない恰好だが……身なりは整っている。貴族の出身……いや、だが先程、マグマの中から出てきたことを考えれば……」

 むむむ……と男は唸り出した。
 必死に俺の正体を考えているらしい。

「あなたは――火竜(ファイアードラゴン)ですか!?」

 そして導き出した結論がこれだった。
 いや、火竜は火山の中に住んでいることも多い為、決して飛躍した推論ではないのかもしれない。

「確かに人型の竜もいるが、俺は人間だ」
「やはり人型の竜は存在するのか!?」
「わかってて言ったんじゃないのか」
「い、いや、普通の人間じゃマグマに入って生きていられるはずがないので……じゃあ賢者様……?」
「そっちのが近いかもな……まあ、見たまま人間だよ」
「そ、そうか……」

 俺が何者かという疑問は解けてはいないようだが、騎士はとりあえず納得した。

「とりあえず、あんたの邪魔はしないよ。じゃあ俺は行くからな」

 行って俺は踵を返した。
 とりあえずユグド大陸の時と同様に町にでも行って、長嶺の情報を探すと――。

「ま、待ってくれ!」

 呼び止められるままに俺は立ち止まってしまった。
 そして振り返る。

「なんだ?」
「い、いきなり会って、こんなことを言うのは常識外れということを理解している。だが、その上で頼みがある――オレと共に山賊に囚われた娘たちを助けてはくれまいか!?」

 なるほど……この自称騎士がここにいる事情はそれか。
 そして、この先の集団になっている気配は山賊たちというわけだ。

『……どうするのだ?』
『迅速に片付けよう』
『お人好しよなぁ、我が友は』

 ただお人好しというわけじゃない。
 この世界の情報収集は、ここにいる自称騎士からでもできる。


「山賊団に潜入できたのはいいが奴らは数も多く……一度、応援を呼ぶことも考えたが、娘たちは今も奴隷同様の扱いを受けていて、直ぐにでも助けて――」
「いいぞ」
「え?」
「だからいいぞ。山賊をぶちのめして、奴隷を解放すりゃいいんだろ?」
「え、あ、はい……って、いいんですか!?」

 答えの代わりに俺は気配の方向に歩き出した。

「あ、ま、待ってください。道案内をさせていただきます!」

 言って自称騎士は俺の前を歩き出した。
 山賊のアジトに着くまでまだ多少余裕はある。
 時間を無駄にする必要はない――さて、情報収集を始めるとしよう。
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