26 / 40
STAGE2
第26話 長嶺の使命
しおりを挟む
※
食事を終えた頃――
『……女神からの報告だ』
『仕事が早いな』
『当然だ。我(おれ)を待たせるだけで万死に値する行いだぞ?』
なるほど。
最高神であるアルに言われれば、彼女たちも本気にならざるを得ないのだろう。
神という立場であっても上下関係に縛られているのは、人と同じというのは面白い。
『それで長嶺の使命に関して何かわかったのか?』
『使命に関しては間違いなく伝えられているらしい。が……このハルケニア大陸の神が行方をくらませているらしい』
『は?』
思わず素の反応が出てしまった。
だが、天界の神々がいなくなるなんてことがあるか?
『仕事が退屈で遊びに出掛けただけならいいが……何らかのトラブルに巻き込まれた可能性もあるな』
『仕事を放り出して遊びになんてあり得るのか?』
『なくはない……と、言ったところだ。世界を管理すると言っても、基本的に神が何か手を下すということはないのだ。そして目に止まるような変化がなければ、ふと世界を見渡すことに飽きることもあるだろう』
『そんな堕落した神、いる意味あるのか?』
正直、今の話を聞く限りでは少なくともハルケニア大陸の神は何もしていないように感じる。
『ある。神は人に干渉しない。だが、他の神や悪魔からの干渉には対抗する』
『どういうことだ?』
『邪神ファルガの名が出た際に言っただろ? 上位神以上であれば地上の出来事に干渉することはない。だが――下位の神々は違う』
『つまりこの世界を管理していた神は、邪神ファルガから何らかの干渉を受けて姿を消したと?』
『その可能性はあるだろうな。自身の遊び場を増やそうと挑んでくることがある。敗者は世界を明け渡すことになり神としての力を奪われることになる。勝った神は世界の新たな管理者となり、神としての地位と力が向上する』
それだけ聞くと、下位の神々は人に近い感性を持っているように思う。
富や名誉、地位、力を求め争いを繰り返す。
『なら、ファルガは下剋上しようってのか?』
『もし神の不在がファルガによるものなら、そういった野心を抱えている可能性はあるだろう。下位の神は不思議なほど名誉や権力といった些事に拘るからな』
アルの話を聞いているとふと疑問が湧く。
世界を管理しながら、人々の生きざまを眺めていると、神にも人間らしさが芽生えるのだろうか?
『反旗を翻す神がいるのなら、お前は最高神として何か行動を起こすのか?』
『必要ない。下位の神がどれだけ力を得ようと、我(おれ)にとっては些事に過ぎぬ。そもそも反旗を翻そうという発想すらない』
『なぜだ? 野心を持っている可能性があるんだろ?』
『下位の神々は我(おれ)の存在すら知らぬからだ。存在を知らぬ相手にどう挑める?』
同じ神でも最高神であるアルと、それ以外では圧倒的な差があるのは間違いない。
極端な話ではあるが、全ての神々が一斉に反逆してきたとしても、この最高神が相手では――戦いにすらならないだろう。
『人どころか、他の神々が何をしていようと、所詮は些事というわけか』
『もしも我(おれ)を脅かせる者がいるなら、それは友であるお前だけだ。最高神に匹敵する力を持つ者が現れた――それは至上の喜びにも勝る』
アルの声が楽しそうに弾む。
この超常者が唯一興味を持っているのは俺だけということか。
『話が逸れたが、使命を伝えることが出来なかったのは神が不在だった為だ』
『長嶺に与えられた使命の確認はできたのか?』
『既に済ませてある。神がこの転移者に与えるはずだった使命は――この世界の支配を目論む悪魔ファルガの討伐だ』
『うん? ファルガ?』
思わずその名を聞き返していた。
邪神ではなく、悪魔としても同じ名を持つ存在がこの世界にいる。
『そう――これが果たして偶然だと思うか?』
『明らかに何かあると考えるべきだろうな』
どちらにしても次の行動は決まった。
「長嶺、お前の使命がわかった」
「――えっ!? もうわかったの!?」
俺が唐突に切り出すと、長嶺が目を見開いた。
どうやって調べたのかについて詳細を伝えていないので、驚くのも無理はない。
「そ、それで内容は?」
「悪魔ファルガの討伐だそうだ」
「ファルガ……? って、あの山賊が言ってた邪神と同じだよね?」
「ああ、それが間違いなく手掛かりになると思う」
「なら、あいつから何か聞き出せないかな?」
「俺も同じことを考えてた」
あの男は間違いなくファルガと繋がりがある。
手掛かりが直ぐそこにあるのなら、あとは行動を起こすのみだろう。
「じゃあ衛兵さんのところに行ってみる?」
「ああ!」
言って俺たちは席を立った。
休憩は終わりだ。
あとはファルガの情報を手に入れ、居場所がわかるようならサクッとぶっ倒す。
「あ、お客様、お支払いを――」
「そうだった。これで頼む」
「え……っ!? こ、これって……!?」
「足りないか? ならこっちの装飾品も受け取ってくれ」
「はっ!?」
俺が差し出したのは、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド――そして、指輪やネックレス、ペンダントやイヤリングも追加で渡した。
宝石は勿論だが、これらの装身具は多くの世界で共通して人気があり、貴族たちに高値で取引されている。
「違います! しょ、食事代だけで、こんなに受け取れません!」
「あ~そっちか。なら問題ないから受け取ってくれ。――それじゃ」
「お、お客様、ちょ、ちょっと、待ってください! これを売ったら、家が何軒も建っちゃうような金額に――」
支払いに問題はなさそうだったので、俺はそのまま長嶺の手を取り店を出たのだった。
※
ちなみにこの日――異国の王侯貴族が酒場に来たという噂が流れる。
それは当然、巡たちのことを言っているのだが、それは彼らの知らぬ話である。
食事を終えた頃――
『……女神からの報告だ』
『仕事が早いな』
『当然だ。我(おれ)を待たせるだけで万死に値する行いだぞ?』
なるほど。
最高神であるアルに言われれば、彼女たちも本気にならざるを得ないのだろう。
神という立場であっても上下関係に縛られているのは、人と同じというのは面白い。
『それで長嶺の使命に関して何かわかったのか?』
『使命に関しては間違いなく伝えられているらしい。が……このハルケニア大陸の神が行方をくらませているらしい』
『は?』
思わず素の反応が出てしまった。
だが、天界の神々がいなくなるなんてことがあるか?
『仕事が退屈で遊びに出掛けただけならいいが……何らかのトラブルに巻き込まれた可能性もあるな』
『仕事を放り出して遊びになんてあり得るのか?』
『なくはない……と、言ったところだ。世界を管理すると言っても、基本的に神が何か手を下すということはないのだ。そして目に止まるような変化がなければ、ふと世界を見渡すことに飽きることもあるだろう』
『そんな堕落した神、いる意味あるのか?』
正直、今の話を聞く限りでは少なくともハルケニア大陸の神は何もしていないように感じる。
『ある。神は人に干渉しない。だが、他の神や悪魔からの干渉には対抗する』
『どういうことだ?』
『邪神ファルガの名が出た際に言っただろ? 上位神以上であれば地上の出来事に干渉することはない。だが――下位の神々は違う』
『つまりこの世界を管理していた神は、邪神ファルガから何らかの干渉を受けて姿を消したと?』
『その可能性はあるだろうな。自身の遊び場を増やそうと挑んでくることがある。敗者は世界を明け渡すことになり神としての力を奪われることになる。勝った神は世界の新たな管理者となり、神としての地位と力が向上する』
それだけ聞くと、下位の神々は人に近い感性を持っているように思う。
富や名誉、地位、力を求め争いを繰り返す。
『なら、ファルガは下剋上しようってのか?』
『もし神の不在がファルガによるものなら、そういった野心を抱えている可能性はあるだろう。下位の神は不思議なほど名誉や権力といった些事に拘るからな』
アルの話を聞いているとふと疑問が湧く。
世界を管理しながら、人々の生きざまを眺めていると、神にも人間らしさが芽生えるのだろうか?
『反旗を翻す神がいるのなら、お前は最高神として何か行動を起こすのか?』
『必要ない。下位の神がどれだけ力を得ようと、我(おれ)にとっては些事に過ぎぬ。そもそも反旗を翻そうという発想すらない』
『なぜだ? 野心を持っている可能性があるんだろ?』
『下位の神々は我(おれ)の存在すら知らぬからだ。存在を知らぬ相手にどう挑める?』
同じ神でも最高神であるアルと、それ以外では圧倒的な差があるのは間違いない。
極端な話ではあるが、全ての神々が一斉に反逆してきたとしても、この最高神が相手では――戦いにすらならないだろう。
『人どころか、他の神々が何をしていようと、所詮は些事というわけか』
『もしも我(おれ)を脅かせる者がいるなら、それは友であるお前だけだ。最高神に匹敵する力を持つ者が現れた――それは至上の喜びにも勝る』
アルの声が楽しそうに弾む。
この超常者が唯一興味を持っているのは俺だけということか。
『話が逸れたが、使命を伝えることが出来なかったのは神が不在だった為だ』
『長嶺に与えられた使命の確認はできたのか?』
『既に済ませてある。神がこの転移者に与えるはずだった使命は――この世界の支配を目論む悪魔ファルガの討伐だ』
『うん? ファルガ?』
思わずその名を聞き返していた。
邪神ではなく、悪魔としても同じ名を持つ存在がこの世界にいる。
『そう――これが果たして偶然だと思うか?』
『明らかに何かあると考えるべきだろうな』
どちらにしても次の行動は決まった。
「長嶺、お前の使命がわかった」
「――えっ!? もうわかったの!?」
俺が唐突に切り出すと、長嶺が目を見開いた。
どうやって調べたのかについて詳細を伝えていないので、驚くのも無理はない。
「そ、それで内容は?」
「悪魔ファルガの討伐だそうだ」
「ファルガ……? って、あの山賊が言ってた邪神と同じだよね?」
「ああ、それが間違いなく手掛かりになると思う」
「なら、あいつから何か聞き出せないかな?」
「俺も同じことを考えてた」
あの男は間違いなくファルガと繋がりがある。
手掛かりが直ぐそこにあるのなら、あとは行動を起こすのみだろう。
「じゃあ衛兵さんのところに行ってみる?」
「ああ!」
言って俺たちは席を立った。
休憩は終わりだ。
あとはファルガの情報を手に入れ、居場所がわかるようならサクッとぶっ倒す。
「あ、お客様、お支払いを――」
「そうだった。これで頼む」
「え……っ!? こ、これって……!?」
「足りないか? ならこっちの装飾品も受け取ってくれ」
「はっ!?」
俺が差し出したのは、ダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド――そして、指輪やネックレス、ペンダントやイヤリングも追加で渡した。
宝石は勿論だが、これらの装身具は多くの世界で共通して人気があり、貴族たちに高値で取引されている。
「違います! しょ、食事代だけで、こんなに受け取れません!」
「あ~そっちか。なら問題ないから受け取ってくれ。――それじゃ」
「お、お客様、ちょ、ちょっと、待ってください! これを売ったら、家が何軒も建っちゃうような金額に――」
支払いに問題はなさそうだったので、俺はそのまま長嶺の手を取り店を出たのだった。
※
ちなみにこの日――異国の王侯貴族が酒場に来たという噂が流れる。
それは当然、巡たちのことを言っているのだが、それは彼らの知らぬ話である。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~
きよらかなこころ
ファンタジー
シンゴはある日、事故で死んだ。
どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。
転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。
弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる