悪役令嬢に転生した“元”狂人は普通に暮らしたい

幸見大福

文字の大きさ
33 / 63
幼少期編

二度と話しかけるな

しおりを挟む
事前に言っておきますが、いつもの半分ほどの長さです。なので、明日も更新予定です。

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

「…俺だって最初はこんなことしたくなかった。俺にとって愛理まりは血のつながった可愛い妹であったから。たくさん遊びたかった。だけど、俺らの親が…元親が。俺らが馴れ合うのにいい顔をしないのは知っているだろう?」



突然語りだしたことに驚きつつ、頷く。

それぐらい私でも分かっていた。まだ何もわかってなかった頃、だっただろうか。私が兄貴に遊んでもらおうとしたとき、前に立ちはだかり「一人で遊びなさい」と毎回邪魔をする。その際に何も私に渡してこないのは最高に性格がいいね!



頭の中で両親をぶっ飛ばしていると、兄貴が真面目そうな顔で切り出す。



「…じゃあ俺が愛理に歩み寄ろうとするたびに、背中を向けた愛理に向って包丁を向けていたことは知っているか?俺が、毎回止めるのも虚しく本当に刺しかけたこともことも知っているか?」

「!?」



…何、それ!?



思わず愕然とする。



知らない、そんなの知らない。いや、両親が私を目障りに思ったことから殺意を向けていて事は知っていた。

だけど本当には殺されないと、長い間生きていたからそう思っていた。

なのに、私は、殺されかけていた?



取り繕っていた仮面が剥がれかける。

どうにか驚愕の感情を無に塗り替え感情を沈める。簡単には信じない。嘘という方が高いハズのだから。

自分に言い聞かせるように、心の中で繰り返す。



黙って聞いている私に、更に兄貴は話し続ける。



「…だから俺は徹底的に愛理を避けて蔑ろにすることで愛理を守ろうとした。



…いや、考えろ私。こんなの嘘に決まっているじゃないか。そうだ、言い訳をしているだけだ。そうに決まっている。



「…それを私が信じるとでも?」



動揺した精神を一瞬で立て直す。

私の返答に兄貴は顔を歪め、乾いた笑いになって手で顔を覆った。



「そうだよな。信じられるわけないよな。抉られたような古傷をつけた相手の言う事なんて信じれるわけない」



知ったような言葉に一瞬激高しかける。



ふざけるな、お前に何が分かる。私の苦しみをどうしたら理解できる。



それを堪えたのは、きっと兄貴もその経験があるということを思い出したから。

中学時代のいじめ。私は実際に見たことはないが、自殺するほど苦しかったんだろうなと予想する。

境遇は全く違うが、死ぬほど苦しいというのは同じだったのだろう。声から、その時の感情がにじみ出ている。



…多分、兄貴が言ったことが真実なのだろう。

私に信じろと言わず、むしろ自嘲気味に話している。それも、私に自分を重ねて。



重ねるなんて許せない。だけど、その苦しみが少しでも分かってしまうから。



だから本当のことを言っていると分かった。分かってしまった。



「…なんでそのことを言ってくれなかったの!?その事実なら、あの時話せばよかったじゃん!」



嘘だ。

一生知らなかったら私は、ずっと兄貴を恨むことができた。

いつまでも恨んでいる自分をみじめに思うこともなかった。



全ては私を守るためだったなんて、許すしかないじゃないか。



私がそういった途端、兄貴が固まった。

なんか気まずそうな雰囲気もある。

…え、まだあるの何か?



「あー…うん俺は最初は嫌だったと言ったよな?」

「そうだね」



まさか途中から本当に見下していたのか?

私の思いが顔に出ていたのか、兄貴は慌てて高速で首を振りだした。首、もげそう。そのまま息の根が止まればいいのに。



「いや、そういうわけではないんだ」



じゃあどういう訳よ。



無言で続きを促すと、兄貴の表情が覚悟で染まった。もう私には何を言うのか想像もできない。



「今日こそはいう。俺はな…」



ごくりと息をのむ。

何を言うのか。一言も聞き逃さまいと

















「俺は、愛理の泣き顔を見るのが好きになっていたんだ!」

















……ええええええ



庭に響き渡った声に、私は半目になってドン引きした。

ひゅおおおと冷たい風が私たちの間に吹き、静寂が場を包んだ。



「…ま、愛理?」



いや、泣き顔を見るのが好きだなんてどんな変態だよ。

しかも結局は己の欲望に従っていたということだよね?

…もういいや。これ以上話すことはないだろう。



心なしか冷えた身体を反転させ、出口へと歩き出す。



「ま、まて愛理!もう少し話しーー」



ぴたりと足をとめる。

少し嬉しそうな空気が背後に感じた。

振り返る。兄貴の表情が固まる。私、冷たい顔。



「二度と話しかけてくるな変態クソ野郎」



冷ややかな私の声がやけに響き、兄貴が膝から崩れ落ちた。



やはりこの兄貴は一生許せん。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

目指せ、婚約破棄!〜庭師モブ子は推しの悪役令嬢のためハーブで援護します〜

森 湖春
恋愛
島国ヴィヴァルディには存在しないはずのサクラを見た瞬間、ペリーウィンクルは気付いてしまった。 この世界は、前世の自分がどハマりしていた箱庭系乙女ゲームで、自分がただのモブ子だということに。 しかし、前世は社畜、今世は望み通りのまったりライフをエンジョイしていた彼女は、ただ神に感謝しただけだった。 ところが、ひょんなことから同じく前世社畜の転生者である悪役令嬢と知り合ってしまう。 転生して尚、まったりできないでいる彼女がかわいそうで、つい手を貸すことにしたけれど──。 保護者みたいな妖精に甘やかされつつ、庭師モブ子はハーブを駆使してお嬢様の婚約破棄を目指します! ※感想を頂けるとすごく喜びます。執筆の励みになりますので、気楽にどうぞ。 ※『小説家になろう』様にて先行して公開しています。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~

夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」  弟のその言葉は、晴天の霹靂。  アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。  しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。  醤油が欲しい、うにが食べたい。  レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。  既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・? 小説家になろうにも掲載しています。

完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい

咲桜りおな
恋愛
 オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。 見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!  殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。 ※糖度甘め。イチャコラしております。  第一章は完結しております。只今第二章を更新中。 本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。 本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。 「小説家になろう」でも公開しています。

【完結】溺愛?執着?転生悪役令嬢は皇太子から逃げ出したい~絶世の美女の悪役令嬢はオカメを被るが、独占しやすくて皇太子にとって好都合な模様~

うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
 平安のお姫様が悪役令嬢イザベルへと転生した。平安の記憶を思い出したとき、彼女は絶望することになる。  絶世の美女と言われた切れ長の細い目、ふっくらとした頬、豊かな黒髪……いわゆるオカメ顔ではなくなり、目鼻立ちがハッキリとし、ふくよかな頬はなくなり、金の髪がうねるというオニのような見た目(西洋美女)になっていたからだ。  今世での絶世の美女でも、美意識は平安。どうにか、この顔を見られない方法をイザベルは考え……、それは『オカメ』を装備することだった。  オカメ狂の悪役令嬢イザベルと、  婚約解消をしたくない溺愛・執着・イザベル至上主義の皇太子ルイスのオカメラブコメディー。 ※執着溺愛皇太子と平安乙女のオカメな悪役令嬢とのラブコメです。 ※主人公のイザベルの思考と話す言葉の口調が違います。分かりにくかったら、すみません。 ※途中からダブルヒロインになります。 イラストはMasquer様に描いて頂きました。

兄様達の愛が止まりません!

恋愛
五歳の時、私と兄は父の兄である叔父に助けられた。 そう、私達の両親がニ歳の時事故で亡くなった途端、親類に屋敷を乗っ取られて、離れに閉じ込められた。 屋敷に勤めてくれていた者達はほぼ全員解雇され、一部残された者が密かに私達を庇ってくれていたのだ。 やがて、領内や屋敷周辺に魔物や魔獣被害が出だし、私と兄、そして唯一の保護をしてくれた侍女のみとなり、死の危険性があると心配した者が叔父に助けを求めてくれた。 無事に保護された私達は、叔父が全力で守るからと連れ出し、養子にしてくれたのだ。 叔父の家には二人の兄がいた。 そこで、私は思い出したんだ。双子の兄が時折話していた不思議な話と、何故か自分に映像に流れて来た不思議な世界を、そして、私は…

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

処理中です...