悪役令嬢に転生した“元”狂人は普通に暮らしたい

幸見大福

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幼少期編

予定の取り決め

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心の中でガッツポーズをしていると、お父様が賛同の意を示した。



「そ、そそそうだな。エリィも、呼ぼう」



動揺しまくりだ。嬉しいんだね?とても嬉しいんだね?

これはお母様の努力が報われた証拠だろう。

内心ニヤニヤしていると、アールが「私もご一緒させてください!」と挙手する。



「いいですよね?」

「駄目だ。お前は休みではない」

「有休を…」



お父様の無言の圧により、すごすごと引き下がっていった。私的にもお父様とお母様をくっつけるのにアールは邪魔になると思うので、今回ばかりは我慢してもらいたい。



…次があるのかは分からないけど。まあそこは気にしない。機会があったら絶対誘うとしよう。



「ではお父様、行先はどうします?お父様なにかいいところ知っていませんか?」

「そうだな…ここは普通は私が決めるのだが…マリーに行く場所を決めてもらおうかな?いや、全てマリーに任せようか」



え。

お父様にそう提案されたが、当然のことながら私はこの世界のおしゃれな場所など知らない。勿論、貴族が行くような場所さえも。お出かけの基本も知らない。

そんな私に任せるなんて…リスキーにもほどがある。



「え、私どこかいい場所なんて知りませんよ。絶対お父様の方が適任です」

「いいや、いい場所とかじゃなくてマリーが“いいな”と思ったところでいい」



そんな抽象的な。



「それですと、私好みでお父様は楽しめなくなるのでは…!」

「そんなことないさ。マリーが綺麗だとか思ったものはきっと私たちが見てもそう思うに決まっている」



決まっている。きっと私を信頼してくれているんだ。



「…分かりました。その役目、きっと果たします!」

「期待してるよ。ところでルークは誘わないのかな?」



…ここでくるか!



実はわざと兄貴の名前を出さなかったのだ。もしも出したら兄貴も誘うと分かっていたため。だが見事に思い出されてしまい、舌打ちをしたいところを堪える。



兄貴を出す前に話を終わりにしたかったのだが、仕方ない。絶対に連れていくなんてしないので、どうにか逃げ切って見せようじゃないか。



「お兄様はほかにやることがあるでしょう。三人で行きませんか?」

「そうだったか?何もなかった気がするが…」

「いえ、勉強をすると言っていました」



嘘だけど。でも、あの兄貴なら本当にしていそうだから、うまくいけば嘘だとばれないかもしれない。



「そうか。なら三人で行くか」



よっしゃ!

密かにガッツポーズをし、にこにこと計画を進めにかかる。



「じゃあお父様、いいところを見つけてきますね」

「しっかりリアナをつけていくんだぞ」

「分かりました」



お辞儀をし、退室する。

しかし直前にお父様はディルドを引き留めた。



「ああディルド、お前は少し話がある」



ディルドが私を見た。言っていいのかという許し待ちなのだろうが…もともとは勝手についてきただけなので笑顔で頷く。



ひとつお辞儀をし私に背を向けて、お父様の方へ歩きだした。



なんとなく緊張しているみたいだが、何かやらかしたという雰囲気でもないので大丈夫だろう。



それと同時に私も退室する。そのかん、リアナは私のことを不思議そうに見ていた。

扉を閉めると、待ってましたとばかりにリアナが口を開く。



「…マリー様、どうして坊ちゃまを誘わなかったのですか?」



その疑問に、少し考えてしまった。

きっとリアナは、私たちが話しているところを見たことがないから、あの言い分を真っ赤な嘘だと思っているのだろう。実際、あれは嘘なのだが。



前世で仲が悪かったと言えれば楽なのだろうが、流石に兄貴の前世について勝手に言うのは抵抗がある。あの感じからして誰にも話していないだろうから、私が言うのは駄目だ。



嘘はつきたくない。だけど本音を言うのは駄目。

一見詰まったように思えるが、こちらもまだ言い訳カードがある。



「今日の朝早く起きて魔法の練習してたの。その時にあって少し話聞いて」



嘘ではあるが、一部は本当だ。実際に私は早く起きているし、これだけの事実なら調べたらすぐにわかる。



「そういうことでしたか」



納得したのか、そのあとは私に魔法の進歩を聞いてきた。庭で練習…もとい実験をしたら大地がえぐれたというと、なんとも言えない表情をされてしまった。



「…後で直しておきます」

「ごめんなさい」



まさか目を開けたらそんな風になっていると思わなかったんです。

…そもそも家庭内で攻撃魔法を使うなって話ですね。以後気を付けます。



「…さて、行く場所どうしよう。折角ピクニックをするんだし、外でもいいかな」

「外ですか?それでしたら、東の方向に野原がありますよ」

「本当?そしたら明日にでもそこを見に行こうかな」



もしも野原だったらそこにレジャーシートでも敷いて…ってこの世界にレジャーシートってあるのかな。何か別なものを敷いていそう。ヒロインも使ってた気がするけど、よく覚えてないし…



「リアナリアナ、野原に座るときって何を敷く?」



そうリアナに尋ねてみる。しかし、結果は「何言ってんの」というような顔をされてしまった。

…何か私おかしいこと聞きましたか?



「…え、何故直で座ること前提なのですか?普通に椅子を用意しますよ」

「ピクニックから程遠かったー!」



それはピクニックって言わないー!

だけどその概念だと私が聞いたこと、おかしいわー!



ぜーはー息を整え、冷静になってからもう一度聞く。



「…リアナ、私が言っているのはピクニックでね?お茶会じゃないんだよ?」

「ですが、マリー様や旦那様を地面に座らせるなど、言語道断です」



うーん…どうしようか。



諦めてお茶会仕様にする?いや、私たちの身分を考えるとそうするしかないんだけど…雰囲気が違うものになりそう。そもそもどうやって運ぶんだろう。荷物とかの労働を考えると、普通に布一枚で済ませたほうがいい気がする。



「でも、それ凄い人が必要だよね。椅子なんてどうやって運ぶの」

「馬車に積んでいきます。勿論マリー様が乗っているのとは違う馬車です」



余計に一つ増やすのか。それするぐらいならマジで敷物でいいって。



「リアナ、それに労力を費やすんだったらやめよう」

「ですが…」

「お父様が私に一任してくれたんだよ?私の思い描くピクニックにしてもいいよね」



信頼のこもった言葉を利用するのは気がひけるが、その代わりに私が今想像できる最高の

ピクニックにしよう。



折角だから冬限定の花が咲いてるところとか。



「…とりあえず、この件については帰ってから考えるとして。行くよ、リアナ」

「どこへですか?」



あれ?



「今の間に忘れたのかな?紫音シノンだよ」



リアナが分かりやすく不機嫌になった。



「…そうでしたね。はあ」

「まあ今はリーダー変わってるし、リアナが知っている紫音と少し変わってるんじゃない?一応私が…その…主人だし」



自分で言っていてなんとも恥ずかしいことか。最後らへんはごにょごにょとした小さな声になってしまった。

皆想像してみて?人前で、しかも親しい人に「自分はこの人の主人です」って言うんだよ?結構恥ずかしくない?

いや、セレブとか令嬢とかは平気なんだろうけど。だってそういうの慣れてそうじゃん。一般市民には無理。

…偏見かな?



脳内で恥ずかしさを誤魔化すようにそう考えていると、リアナが溜息を吐いた。



「…そうでしたね。今はマリー様の少し上の子、でしたっけ。何か変わったりしたのでしょうか?」

「正直そこについては何とも言えないんだけど…」



何か変わったか…多分いい感じになったかってことだよね。だけど…これは…。



よくよく思い出してほしい。

ギーアは独断でリーダーを殺す人だ。しかも自分の思い通りに事を運ばせようとして、他人を気遣う心なんて皆無。唯一ヒロインに心を開いてる?はずだ。これは知らないからあったら聞きたい。

そんな感じで、良くなったかと聞かれると、微妙なところだろう。



そもそも私はか…名前忘れちゃたや☆先代のリーダーの事はほとんど知らない。何か一つ上げろと言われたら、「ムカつくやつ」とだろう。この点に関しては二人とも共通しているので…



「…あんま変わってないかも」

「そうですか」



かなり長い間を開けた私の返事に、リアナは再び溜息をしたのだった。

その反応に、少しだけだけど庇う。



「で、でもね!ツンデレだけどいい子もいるよ?なんか変だけど基本的には…いや、そうでもないか…?兎に角、そこまで落ちぶれてないから!」



そんな私の言葉の返事は、生暖かい笑みだった。悲しいかな。



そうして初めて正面から屋敷を出て紫音の元へ向かった。
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