悪役令嬢に転生した“元”狂人は普通に暮らしたい

幸見大福

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幼少期編

…暇

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こんにちは、マリーベルです。代名詞は暇人になりそうなほど、時間が有り余っています。



「…暇」



これに尽きる。

軟禁状態にされて一週間。既に暇で暇で死にそうです。



あの後、私を抜きにして決められたらしい外出禁止令は早速晩餐の時に出されました。



お母様もその時いらしていて、理由を聞かされた時の目がツンドラ並みだった。視線が身体を貫くかのように刺さった。

…怖かった。笑顔なのが更に怖かった。本当に怖かった。まさに蛇に睨まれた蛙。



でも、最初言い渡されたとき、少しわくわくしてたんだよ?



だって全ての時間が自由フリー!レッスンも何もない、なんて素晴らしきかな!さぁ、これから何をしようか!



わっくわくでした。年甲斐もなくはしゃいでしまいました。



だけど、大きな期待を世界は綺麗に裏切った。

何故なら、この世界は娯楽が少なかったのだ。それは恐ろしいぐらいに少なかったのだ!



まぁ少ないだけであるにはあるよ。対人型のボードゲームが。チェスとかリバーシとか

え?一人でやれって?嫌ですよ。何が悲しくて一人でやらねばならんのか。



絵を描くにしても、下手。人並程度にしか描けません。

令嬢と言えばの刺繡は、この三日間で大作を作り上げて飽きました。カーテンです。今私の横にかけられてます。

…お父様が欲しがっていたけれど、閉じ込めた本人には絶対に渡しません。部屋を出るのさえ禁止は、やりすぎだと流石に思う。



だからご飯も最近一人で食べる羽目になっている。運んでくれている人はいるけれど、会話をする間もなく出ていく。少しぐらい言葉を交わそうよ、メイドさん。



とは言っても、前世がそうだったからかあまり心へのダメージがなかった。

でも、なんか…心に穴があるような、虚無感を少し感じるよう…



いや、これは今は関係ないか。暇つぶしに何も関与していない。



思考を切り替えて、他に思い出そうとする。



「……」



…あれ、もうない。何も思い出さないぞ。ひょっとしてこれですべてでは。



も、もう一度よく記憶を呼び起こしてみよう。



「……ない」



思わず声に出してしまう。



本当に、これだけだ。少ない、少なすぎるぞ。



ゲームとか、娯楽以外というと読書だよね。

だけど、それも許された一冊の絵本だけ。舐めてんのか。



なんで一冊。しかも絵本なのか。オブラートに包んで尋ねたところ、本の中の知識を使って脱走してしまうかららしい。私を何だと思っているのか非常に気になりますね。



今日はそれを読んでいたけれど、読み終わってしまい、本当にやることがなくなった。

ちなみにそこそこ面白かったです。二周目はやる気が起きないけど。



「…暇」



本当最近これしか言ってないなぁ。



せめてジグソーパズルとかあったら良かったのに。

そしたら少なくとも何日かはもった。集中力は上がるし、記憶力も鍛えられるという一石二鳥。いや、暇を潰せるのも含めると三鳥か。



そんな素晴らしいものが何故ないのか。

木の板に絵を描いてもらって、それを切ればパズルは出来る。

…風属性魔法の使い手に、それを切ってもらえばいいのでは?



「あれ、結構いいんじゃない?」



これなら簡単にできるし、何回もやる予定だから崩して保存する。つまり、かさばらない。



「おお…本当にグッドアイディアかも」



今まで何故考え付かなかったのか。さっきまで暇暇言っていた自分を殴りつけたい。



そうと決まれば風属性の人、絵が上手い人を見つけないと。

早速解放後が決まった。ただし、紫音シノンの時と違い忙しくも何もないからのんびり進められる。

最高か。



だけど、人を見つけるにしても私が任せられるような――となると難しいかもしれない。

繊細な魔力操作も求められる。



「…いい考えだけど、人を見つけることが一番難しいな」



絵師さんについてもそうだ。

そもそも絵がないと始まらない。

…全て白のパズルもあるけど、今回は絵柄ありでお願いします。



「…暇だなぁ」



色々考えついたけど、行動に移せるのはかなり先になりそうだ。

口癖のようになってきたお言葉をまた言いそうになるのを堪え、再びベッドに潜りこむ。



眠りそうにない瞼を閉じて眠ろうとして――



コンコンコン



ノックする音に目を開けた。



「……」



時間確認。うん、二時という微妙な時間。



…誰が何用ですか?



コンコンコン



再びノック音。無視するのもあれなので、とりあえず通してみるか。



「はい」

「マリー様、失礼いたします」

「リアナ!?久しぶりー!」



まさかのリアナ!

びっくりしつつも挨拶をすると、微妙な顔で会釈される。

硬い姿勢に少し疑問を抱く。



普段こんなにかしこまらないのに、よっぽど今回の件は怒っているのだろうか?



首を傾げつつ、ベッドから降りる。



「どうしたのリアナ?何かあった――」

「マリー」



!!??



もう一つ声が響いて、身体が文字通り跳ねる。



こ、この声は…



「お、お父様…」

「やぁ三日ぶりだね、マリー。元気にしてるかい?」



閉じ込めている相手にこういう言葉をかけるのは止めましょう。相手をあおるだけです。そもそもで監禁軟禁する人なんてあまりいないだろうけど。



つまり、今私は割とイラっと来ました。

でも私慣れてますし?煽られるの慣れますから?絶対に表情には出しません。笑顔で対応します。



「はい、元気ですよ。お父様も元気そうで何よりです」



軟禁相手に『元気か』と聞けるぐらい元気そうで良かったよ。



「ところでどうしたのですか?」



心の中の毒をぐっとこらえて尋ねる。

私偉い。自画自賛しても許されるよ。多分。



「マリーは感謝祭を覚えているかい?」



感謝祭…?なんだっけそれ?

聞いたことはあるけど…何かかは忘れてしまった…



でも、一度説明を受けたのを知らないというのは…怒られた記憶しかない。



頭の中で体力のクエスチョンを浮かべながらも、笑顔で頷く。



「は、はい。勿論覚えてますとも。それがどうか致したのですか?」

「それが明後日にあるから、時間とかの説明に来た。行き方としては、リゾークフィル王太子が迎えに来てくれるらしいから特に気にすることは無い。ドレスも今日送ってくださったものが届いたからそれを着るとして――」

「ちょっと待ってください」

「何か質問でも?」



いや質問っていうか…



「あの、私外出してもいいんですか?」



確か禁止令というものがあったような気がするのですが?

私の当然なる疑問に、グッジョブしてくるお父様。若者か。



「その日だけは特別だ。絶対に行かなければならないからな。家庭内での禁止令などそこらの石と変わりない。やっと行けるようになったから、存分に楽しんできたらいい。…王太子がエスコートするのは気に食わんが」



最後本音漏れてましたよ?



でも、今の説明受けて思い出した。

あれか、優待券貰ったから云々でルイが誘ってきたやつか。

たった一週間前のことなのに、凄く昔のように感じる…。これが年というものなのかな?



唯一つ言いたいのは、久しぶりの外出が息苦しい祭りとは何て最悪だろう。楽しいお出かけが良かった。

楽しめる気が全くしない。



「そうですか…。ちなみに誰か付き添いとかは」

「私が」



リアナらしい。

これなら少しぐらい変な挙動をしても大丈夫。

少し軽くなった肩にホッとすると、睨まれた。

…え、なに?なんでそんな怖い顔をするの?



「マリー様。羽目を外せると思わないでくださいね。私は見張り役でもありますから」



敵でしたか。そうですか。

…悲しすぎません!?折角外に出れるのに、紫音シノンに行くことは許してくれないんですか!?



こんなの、裏切りだよ!



私の心の叫びなど知らずに、リアナは鼻息荒く拳を握っていた。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

皆さまハッピーイースターです!

ちょっと思ったのが、感謝祭じゃなくて復活祭にしていれば…と思いました。
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