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一年生編

幼馴染みの怒る訳

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次の日の放課後……。

「あの、紅羽?」
「ん~? な~に~?」

 紅羽は両腕で頬杖をつきながら、僕の方を笑顔で見てくる。
 笑顔で見ているはずなのに、どこか圧を感じた。
 
「紅羽、部活はいいのか?」
「だいじょ~ぶ、今日は自主練強制じゃないから」

 僕は全然大丈夫じゃない。
 これは何に怒っているのかわからなければ、ずっとこの状態だ。

「それじゃあ、帰るか」
「うん、そうだね~」

僕がそう言って歩いていくと、横に彼女が並ぶ。
終始笑顔……すれ違う男女全員が紅羽の異常性に気が付き、道が開かれる。

「紅羽」
「何?」
「何を怒ってるんだ?」
「怒ってないよ?」

 いや怒ってるだろ、明らかに。

「言わなきゃわからないだろ?」
「だから、怒ってないって」

 これ以上言っても無駄のようだ。
 女心は察せよというが、わからん。
 
 考えれば考えるほど、彼女が怒る理由がわからなかった。

「昨日、日和ちゃんとデートに行ったんだって?」
「誰からの情報?」
「ごまかさないで、デートしたの?」
「買い物に行っただけ、ただそれだけだ」

 美優ちゃんはデートとかのたまってたけど、実際紅羽とも何度も遊びに行ったりしているし男女で遊ぶのはおかしくない気がする。

「仲良く手を繋いだって聞いたけど?」
「言っとくけど、人が多かったから離れないようにって手を繋いだだけだ」
「ふ~ん」
「なんだよ」
「……えい」

 彼女は僕の手を握ってくる。

「どうだ」
「どうだと言われても……」

 戸惑うが正しい。
 だっていきなり手を握られたし、それに彼女と手を握ることはこれまで何度もあったので今更って感じだ。

「む~」

 彼女は不満そうにこちらを見つめてくる。
 そんな不満そうな顔をされても、こっちが困ってしまう。

「どうすればいいんだよ」
「ドキドキしない?」

 ドキドキしないといえば嘘になる。
 可愛い女の子に手を握られて、健全な男子高校生なら舞い上がってしまうだろう。
 
「うん、まぁ……てか、懐かしいよな」

 昔はこうして手を握っていた。
 紅羽が目を話すと直ぐにどこかに行ってしまうので、小学校中学年までは手を繋いで登校していたことを思い出した。

「お前がもういいっていうまでこうして帰っていたよな」
「そう、だね」
「手を離すと、紅羽は直ぐどこかへ行って大変だったよな」
「私、そんなだった?」
「うん、お転婆でした」
「うぅ……」

 まぁ、そんな彼女だからこそ僕は好きになったのだ。
 あの時の気持ちに後悔はない。
 そうして手を離し歩いていくと、彼女の家につく。

「それじゃあ、また明日」
「ね、ねぇ」
「うん?」
「今度、私とどこか遊びに行かない?」
「別にいいけど……練習があるんじゃないのか?」
 
 本選試合前だ、忙しいだろう。

「じゃ、じゃあ本選終わったら、いい?」
「別にいいけど……」
「約束……」

 彼女は小指を立ててくる。

「そんなことをしなくても約束は守るよ」
「約束!!」
「はいはい」
 
こうなると彼女は頑固なので従う。
僕らは高校生になって彼女の玄関で、指切りを交わす。
小学生か。
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