魔王の苦悩

ゆうき

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 「はっ!」
 「ふん!」

 魔王城にて複数の声が鳴り響き爆発音や剣戟のキィンという音が鳴り響いている
 勇者と魔王の最終決戦だ
 
 「くそっ!」
 「その程度か…拍子抜けだな」

 勇者は悔しがり魔王は余裕の顔をしている
 
 「負けない…この世界の為にも…僕は、お前を討つ!!」
 「ほう、では頑張るがよい…」
 
 再び魔法が飛び交い剣戟の音が辺りに響き渡る
 数は三対一、正確には魔王が分身しているので3対2だ
 
 「ほう、魔法はなかなかやるが…」
 「くっ!」
 
 勇者は剣で押し負ける

 「聖剣でこの程度か…」
 
 魔王は黒い黒い剣を勇者に向ける、魔剣だ…

 「貴様の聖剣は普通の刀は切れる…ただそれだけだ…」
 
 勇者は覚醒しない…覚醒元は魔王によって全て断たれた…

 「諦めなければ奇跡は必ず!」
 「起きると良いなぁ~奇跡…」
 
 勇者は必死にこちらに向かってくる
 
 「無駄と知って尚挑んでくるその意気はよし、だが…」

 何度かの剣戟で再び勇者は押し返される
 
 「最早お前の仲間も限界が近いようだぞ?」

 他の仲間も魔力の限界が近い

 「くっそ~!」
 「ははは、もう諦めてよ…」
 「諦めない…お前が人を苦しめている元凶だ!」
 「だが今、お前は私には勝てない」
 「だとしても!!」

 勇者は立ち上がる
 魔王は先程の余裕の笑みが消え

 「ふん、勇敢な勇者かと思ったが…蛮勇だったか…もうよい!」
 
 後ろの魔王は魔法を展開する

 「止めたければ頑張ることだな…」
 「くっ!」
 
 立つことが精一杯の勇者と仲間は動くことができない

 「ふん、つまらん…恨むならそんな役目を選んだ女神を恨め…炎獄ヘルファイア
 
 業火に焼かれる勇者
 皆の勇者パーティーの悲鳴が響き渡る

 「………」

 その様子を魔王は無表情で見つめている
 やがて勇者パーティーは跡形もなく消える

 「はぁ、何度も経験しているとはいえ心痛むな…」

 彼も魔の王をしている以上負ければ自分の部下たちやその家族が死ぬ
 勇者が背負っているように魔王も魔族の民を背負っている

 「さて、次の勇者はきちんと状況判断できる奴だといいな…」

 魔王だって魔の王なだけで感情がある
 人を殺したいわけではなく、守るために仕方なく魔の王として、民を守るために戦っている

 「王よ…無事でしたか!!」
 「あぁ…今回もなんとかな…」
 「これを機に人間を滅ぼしてしまっては?」
 「いや、それは良い…」
 「ですが…」

 魔王だって感情があるので勇者を殺し心がどんどん疲弊しないか部下は心配している
 
 「よい、次の戦いまで備えよ」
 「かしこまりました」

 部下は部屋を出ていくのだった
 

 
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