黒猫少女

いっき

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次の日の放課後。
図書室へ行った。
少女が読んでいた小説、重松清の『きみの友だち』を探した。
読んだことがないので、興味があった。
本棚を探すが、見つからない。
使用履歴を見てみた。
今借りているのは…江本。
うわ、苦手な女子だ。
眼鏡をかけていて、いつも不機嫌で怖い。
昨日公園で会った、目が大きくてどこか神秘的できれいな少女とは、月とスッポンだ。
そんなことを思っていると、本人が来た。
「ちょっと、どいてくれる?」
僕は、いそいそと本棚へ戻った。
『きみの友だち』がないのなら仕方ない。
同じ重松清の『くちぶえ番長』を借りることにした。

学校からの帰り道。
まだ子供達がジャングルジムを登り、賑やかな公園へ寄り道した。
ベンチで早速『くちぶえ番長』を読んでみる。
何だ、これ。
面白い。
一気に読んでしまいそうだ。
「ニャー」
ふと気がつくと、黒猫、ハルが足元にいた。
子供達は、いつの間にか帰っている。
「こんばんは。」
昨日と同じ黒のワンピースを着て、目のぱっちりと大きな少女が来た。
僕と目が合うと、ニコッとした。
僕は、ドキッとする。
「お隣、いい?」
「うん。」
僕の隣に座った。
「あ、『くちぶえ番長』。それ、面白いよね。マコトの強さと優しさに、すごく感動する。」
「読んだことあるの?」
「ええ。夢中で、すぐに全部読んでしまったわ。」
「本、すごい好きなんだ?」
「ええ、すごく好き。」
「作家になりたいとか…思う?」
この本のプロローグでは、本好きの作者が作家になるための特訓のつもりで、おもしろいできごとや忘れたくないできごとがあると『ひみつノート』にかきつけていた、と書かれている。
それを思い出して、ふと聞いてみた。
少女は少し戸惑ったが、控えめに頷いた。
「すごい!ねぇ、『ひみつノート』、作ってみてよ。」
「『ひみつノート』?」
「そう。『くちぶえ番長』の作者が、将来作家になるために作ってたノート。」
「そういえば、そんな節もあったわね。」
「そんで、小説を書いて!タイトルは…『黒猫少女』がいいかな!」
「何、それ?」
少女は、笑う。
「そういえば、名前聞いてなかったね。私、ルナ。あなたは?」
「僕は棗。よろしく!」
僕は、ルナと暗くなるまで重松清の小説を読んだ。
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