紅~いつもの街灯の下で

いっき

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紅&克也編〜2〜

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 新学期が始まって暫くすると……誰の目から見ても明らかなほどに、クラスのカーストは一学期より大きく変わっていた。一学期には地味で目立たなかった男子二人が、クラスで一、二を争う人気女子と付き合い始めた……そんな噂が流れるだけで、本人達が望まずともクラスメイトの中で一目置かれる存在になっていたし、それとは逆に、アメフト部のエースで大人気だった男子は、新学期早々から『イタい勘違い野郎』というレッテルを貼られて、クラス内でハブられていた。

 それは極端な例だったが……一学期に形成されていた仲良しグループも、多少なりとも分裂したり、入れ替わったりという動きがあった。


 そんな中……

「文化祭の出し物では、このクラスは『白雪姫』を上演することになりました」

 ホームルームにて、クラスの文化祭委員がその決定事項を大々的に発表して。

 その教室の生徒達は、

「えー……ダッるー」

なんて言って不貞腐れる生徒と……

「マジで? 楽しみ~」

なんて言って目を輝かせる生徒に二極化した。

 当の佐原 克也かつやは、中学時代までは前者……やる気のない生徒だった。

 しかし、今では状況が変わっている。何しろ、自分の恋人はクラス一の美少女、江崎 紅くれないなのだ。本人が望まずとも彼女がヒロインに抜擢されることは目に見えているし、ここはどうしても自らが彼女の相手役にならなければ、彼氏としての名が廃る。そんなことを考える彼の内では生まれて初めて、文化祭へのやる気の炎がメラメラと燃えていたのであった。

「それじゃあ、配役を決めますね。王子役をやりたい人……」

「はい!」

 克也は、生まれて初めて……出し物での配役を決める場で誰よりも早く立候補したのだった。


 ホームルーム終了後。

「ウソだろ……」

 克也は自らの席で机に突っ伏し、頭を抱え込んでいた。前の黒板に白いチョークで書かれていた決定事項は……

『王子役:江崎 紅

 白雪姫:佐原 克也』

 紅の相手役であることには変わりないけれど……自分が意図していたのとは全く違う配役だったのだ。

「どうして、こうなった……」

 彼は、ショックのあまり真っ白になった頭を働かせて思い出す。

 真っ先に手を上げて、自分が王子役に暫定して。それなら……とクラス内の暗黙の了解で、紅が白雪姫に暫定したところまでは良かった。しかし確か、お調子者ヘタレの河田あたりが「紅だったら、王子の方が似合うんじゃね? イケメン女子だし」なんて余計なことを言ったものだから、クラスメイト達もそれに同調して、勝手に盛り上がって……。

 あれよあれよと言う間に、そのクラス会は「王子が紅なら、白雪は克也しかいないでしょ」という……勿論、克也には微塵の拒否権もない、その結論に達したのだ。


「何てことだ。立候補が裏目に……」

 変に立候補さえしなければ、紅王子に白雪は誰かしらの女子とか、そんな無難な結果に落ち着いていたかも知れないのに……深い後悔とともに、克也は大きな溜息を吐いた。

「あら、ひっどい溜息ね。白雪さん」

 顔を上げるとそこには、今日も見惚れるほどに綺麗な紅が立っていた。いつもはクールな彼女も、込み上げてくる笑いを必死に堪えている様子だ。

「いや、白雪って……」

「カッコ良かったわよ! 立候補」

「その結果がこれだよ。ホント、許してくれ……」

「あら、いいじゃない。白雪、主役だし! 衣装・メイク担当の結奈なんて、『めっちゃ可愛く変身させてやるー!』って大はりきりよ」

「……恐ろしすぎるよ」

 青ざめる克也に、彼の前の席に座っている脚本担当の晴人も、さらに追い打ちをかけるように絡んできた。

「やぁ、白雪。お姫様がめっちゃ、可愛くなるようなストーリーを作ってやるから……楽しみにしといてな!」

「いや、脚本はもっと、無難に……」

「あら? 折角、作家先生が書いてくれるんだし……無難にまとめてしまったら面白くないんじゃない? ここは、ハルト先生の溢れる想像力に任せましょうよ」

「い……いじめだぁ……」

 イジられ過ぎて頭を抱え込む克也を見て……今では友人としてすっかり仲良くなった紅と晴人は、顔を見合わせて思わず吹き出した。

 そう。その結果は克也にとっては胃が痛いものだったけれど、どういう訳かクラスメイト達のテンションは一気に上がった。特に紅や晴人、結奈……現在、彼と仲良いクラスメイト達は、途端にやる気満々になった様子なのだ。


「まぁ、兎も角……高校生活最初の文化祭。楽しくなりそうで、私、嬉しいの! だって、中学時代とか、ろくに楽しい思い出なかったから。あんたと一緒にやれるの、すっごく楽しみ。一緒に主演、頑張るわよ!」

 そう言って片目をニッと瞑る紅はキラキラと輝いていて、とても無邪気で可愛くて……

「う……うん」

 先程まで頭を抱えていた克也は、ついその笑顔に見惚れてしまい……素直にうなずいてしまった。

「さて、私、今日もバイトなの。途中まで一緒に帰りましょう!」

 上機嫌な紅に手を引かれる克也は、どうやら上手く丸め込まれた様子で……

「すごい……紅って、結奈以上に小悪魔だ」

 晴人は、密かにそんなことを呟いたのだった。
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