30 / 57
紅&克也編〜2〜
◆
しおりを挟む
新学期が始まって暫くすると……誰の目から見ても明らかなほどに、クラスのカーストは一学期より大きく変わっていた。一学期には地味で目立たなかった男子二人が、クラスで一、二を争う人気女子と付き合い始めた……そんな噂が流れるだけで、本人達が望まずともクラスメイトの中で一目置かれる存在になっていたし、それとは逆に、アメフト部のエースで大人気だった男子は、新学期早々から『イタい勘違い野郎』というレッテルを貼られて、クラス内でハブられていた。
それは極端な例だったが……一学期に形成されていた仲良しグループも、多少なりとも分裂したり、入れ替わったりという動きがあった。
そんな中……
「文化祭の出し物では、このクラスは『白雪姫』を上演することになりました」
ホームルームにて、クラスの文化祭委員がその決定事項を大々的に発表して。
その教室の生徒達は、
「えー……ダッるー」
なんて言って不貞腐れる生徒と……
「マジで? 楽しみ~」
なんて言って目を輝かせる生徒に二極化した。
当の佐原 克也かつやは、中学時代までは前者……やる気のない生徒だった。
しかし、今では状況が変わっている。何しろ、自分の恋人はクラス一の美少女、江崎 紅くれないなのだ。本人が望まずとも彼女がヒロインに抜擢されることは目に見えているし、ここはどうしても自らが彼女の相手役にならなければ、彼氏としての名が廃る。そんなことを考える彼の内では生まれて初めて、文化祭へのやる気の炎がメラメラと燃えていたのであった。
「それじゃあ、配役を決めますね。王子役をやりたい人……」
「はい!」
克也は、生まれて初めて……出し物での配役を決める場で誰よりも早く立候補したのだった。
ホームルーム終了後。
「ウソだろ……」
克也は自らの席で机に突っ伏し、頭を抱え込んでいた。前の黒板に白いチョークで書かれていた決定事項は……
『王子役:江崎 紅
白雪姫:佐原 克也』
紅の相手役であることには変わりないけれど……自分が意図していたのとは全く違う配役だったのだ。
「どうして、こうなった……」
彼は、ショックのあまり真っ白になった頭を働かせて思い出す。
真っ先に手を上げて、自分が王子役に暫定して。それなら……とクラス内の暗黙の了解で、紅が白雪姫に暫定したところまでは良かった。しかし確か、お調子者ヘタレの河田あたりが「紅だったら、王子の方が似合うんじゃね? イケメン女子だし」なんて余計なことを言ったものだから、クラスメイト達もそれに同調して、勝手に盛り上がって……。
あれよあれよと言う間に、そのクラス会は「王子が紅なら、白雪は克也しかいないでしょ」という……勿論、克也には微塵の拒否権もない、その結論に達したのだ。
「何てことだ。立候補が裏目に……」
変に立候補さえしなければ、紅王子に白雪は誰かしらの女子とか、そんな無難な結果に落ち着いていたかも知れないのに……深い後悔とともに、克也は大きな溜息を吐いた。
「あら、ひっどい溜息ね。白雪さん」
顔を上げるとそこには、今日も見惚れるほどに綺麗な紅が立っていた。いつもはクールな彼女も、込み上げてくる笑いを必死に堪えている様子だ。
「いや、白雪って……」
「カッコ良かったわよ! 立候補」
「その結果がこれだよ。ホント、許してくれ……」
「あら、いいじゃない。白雪、主役だし! 衣装・メイク担当の結奈なんて、『めっちゃ可愛く変身させてやるー!』って大はりきりよ」
「……恐ろしすぎるよ」
青ざめる克也に、彼の前の席に座っている脚本担当の晴人も、さらに追い打ちをかけるように絡んできた。
「やぁ、白雪。お姫様がめっちゃ、可愛くなるようなストーリーを作ってやるから……楽しみにしといてな!」
「いや、脚本はもっと、無難に……」
「あら? 折角、作家先生が書いてくれるんだし……無難にまとめてしまったら面白くないんじゃない? ここは、ハルト先生の溢れる想像力に任せましょうよ」
「い……いじめだぁ……」
イジられ過ぎて頭を抱え込む克也を見て……今では友人としてすっかり仲良くなった紅と晴人は、顔を見合わせて思わず吹き出した。
そう。その結果は克也にとっては胃が痛いものだったけれど、どういう訳かクラスメイト達のテンションは一気に上がった。特に紅や晴人、結奈……現在、彼と仲良いクラスメイト達は、途端にやる気満々になった様子なのだ。
「まぁ、兎も角……高校生活最初の文化祭。楽しくなりそうで、私、嬉しいの! だって、中学時代とか、ろくに楽しい思い出なかったから。あんたと一緒にやれるの、すっごく楽しみ。一緒に主演、頑張るわよ!」
そう言って片目をニッと瞑る紅はキラキラと輝いていて、とても無邪気で可愛くて……
「う……うん」
先程まで頭を抱えていた克也は、ついその笑顔に見惚れてしまい……素直にうなずいてしまった。
「さて、私、今日もバイトなの。途中まで一緒に帰りましょう!」
上機嫌な紅に手を引かれる克也は、どうやら上手く丸め込まれた様子で……
「すごい……紅って、結奈以上に小悪魔だ」
晴人は、密かにそんなことを呟いたのだった。
それは極端な例だったが……一学期に形成されていた仲良しグループも、多少なりとも分裂したり、入れ替わったりという動きがあった。
そんな中……
「文化祭の出し物では、このクラスは『白雪姫』を上演することになりました」
ホームルームにて、クラスの文化祭委員がその決定事項を大々的に発表して。
その教室の生徒達は、
「えー……ダッるー」
なんて言って不貞腐れる生徒と……
「マジで? 楽しみ~」
なんて言って目を輝かせる生徒に二極化した。
当の佐原 克也かつやは、中学時代までは前者……やる気のない生徒だった。
しかし、今では状況が変わっている。何しろ、自分の恋人はクラス一の美少女、江崎 紅くれないなのだ。本人が望まずとも彼女がヒロインに抜擢されることは目に見えているし、ここはどうしても自らが彼女の相手役にならなければ、彼氏としての名が廃る。そんなことを考える彼の内では生まれて初めて、文化祭へのやる気の炎がメラメラと燃えていたのであった。
「それじゃあ、配役を決めますね。王子役をやりたい人……」
「はい!」
克也は、生まれて初めて……出し物での配役を決める場で誰よりも早く立候補したのだった。
ホームルーム終了後。
「ウソだろ……」
克也は自らの席で机に突っ伏し、頭を抱え込んでいた。前の黒板に白いチョークで書かれていた決定事項は……
『王子役:江崎 紅
白雪姫:佐原 克也』
紅の相手役であることには変わりないけれど……自分が意図していたのとは全く違う配役だったのだ。
「どうして、こうなった……」
彼は、ショックのあまり真っ白になった頭を働かせて思い出す。
真っ先に手を上げて、自分が王子役に暫定して。それなら……とクラス内の暗黙の了解で、紅が白雪姫に暫定したところまでは良かった。しかし確か、お調子者ヘタレの河田あたりが「紅だったら、王子の方が似合うんじゃね? イケメン女子だし」なんて余計なことを言ったものだから、クラスメイト達もそれに同調して、勝手に盛り上がって……。
あれよあれよと言う間に、そのクラス会は「王子が紅なら、白雪は克也しかいないでしょ」という……勿論、克也には微塵の拒否権もない、その結論に達したのだ。
「何てことだ。立候補が裏目に……」
変に立候補さえしなければ、紅王子に白雪は誰かしらの女子とか、そんな無難な結果に落ち着いていたかも知れないのに……深い後悔とともに、克也は大きな溜息を吐いた。
「あら、ひっどい溜息ね。白雪さん」
顔を上げるとそこには、今日も見惚れるほどに綺麗な紅が立っていた。いつもはクールな彼女も、込み上げてくる笑いを必死に堪えている様子だ。
「いや、白雪って……」
「カッコ良かったわよ! 立候補」
「その結果がこれだよ。ホント、許してくれ……」
「あら、いいじゃない。白雪、主役だし! 衣装・メイク担当の結奈なんて、『めっちゃ可愛く変身させてやるー!』って大はりきりよ」
「……恐ろしすぎるよ」
青ざめる克也に、彼の前の席に座っている脚本担当の晴人も、さらに追い打ちをかけるように絡んできた。
「やぁ、白雪。お姫様がめっちゃ、可愛くなるようなストーリーを作ってやるから……楽しみにしといてな!」
「いや、脚本はもっと、無難に……」
「あら? 折角、作家先生が書いてくれるんだし……無難にまとめてしまったら面白くないんじゃない? ここは、ハルト先生の溢れる想像力に任せましょうよ」
「い……いじめだぁ……」
イジられ過ぎて頭を抱え込む克也を見て……今では友人としてすっかり仲良くなった紅と晴人は、顔を見合わせて思わず吹き出した。
そう。その結果は克也にとっては胃が痛いものだったけれど、どういう訳かクラスメイト達のテンションは一気に上がった。特に紅や晴人、結奈……現在、彼と仲良いクラスメイト達は、途端にやる気満々になった様子なのだ。
「まぁ、兎も角……高校生活最初の文化祭。楽しくなりそうで、私、嬉しいの! だって、中学時代とか、ろくに楽しい思い出なかったから。あんたと一緒にやれるの、すっごく楽しみ。一緒に主演、頑張るわよ!」
そう言って片目をニッと瞑る紅はキラキラと輝いていて、とても無邪気で可愛くて……
「う……うん」
先程まで頭を抱えていた克也は、ついその笑顔に見惚れてしまい……素直にうなずいてしまった。
「さて、私、今日もバイトなの。途中まで一緒に帰りましょう!」
上機嫌な紅に手を引かれる克也は、どうやら上手く丸め込まれた様子で……
「すごい……紅って、結奈以上に小悪魔だ」
晴人は、密かにそんなことを呟いたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
優しい雨が降る夜は
葉月 まい
恋愛
浮世離れした地味子 × 外資系ITコンサルのエリートイケメン
無自覚にモテる地味子に
余裕もなく翻弄されるイケメン
二人の恋は一筋縄ではいかなくて……
雨降る夜に心に届いた
優しい恋の物語
⟡☾·̩͙⋆☔┈┈┈ 登場人物 ┈┈┈ ☔⋆·̩͙☽⟡
風間 美月(24歳)……コミュニティセンター勤務・地味でお堅い性格
雨宮 優吾(28歳)……外資系ITコンサルティング会社勤務のエリートイケメン
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
橘若頭と怖がり姫
真木
恋愛
八歳の希乃は、母を救うために極道・橘家の門を叩き、「大人になったら自分のすべてを差し出す」と約束する。
その言葉を受け取った橘家の若頭・司は、希乃を保護し、慈しみ、外界から遠ざけて育ててきた。
高校生になった希乃は、虚弱体質で寝込んでばかり。思いつめて、今まで養ってもらったお金を返そうと夜の街に向かうが、そこに司が現れて……。
【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あなたの片想いを聞いてしまった夜
柴田はつみ
恋愛
「『好きな人がいる』——その一言で、私の世界は音を失った。」
公爵令嬢リリアーヌの初恋は、隣家の若き公爵アレクシスだった。
政務や領地行事で顔を合わせるたび、言葉少なな彼の沈黙さえ、彼女には優しさに聞こえた。——毎日会える。それだけで十分幸せだと信じていた。
しかしある日、回廊の陰で聞いてしまう。
「好きな人がいる。……片想いなんだ」
名前は出ない。だから、リリアーヌの胸は残酷に結論を作る。自分ではないのだ、と。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる