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紅&克也編〜2〜
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文化祭の準備も、そろそろ大詰めを迎える頃。実際に劇を演じる体育館の舞台で、紅達のクラスは白雪姫のリハーサルをしていた。
「へぃ、そこの綺麗なお姫さん。一緒に森の泉へ行かないかい?」
「我々小人と楽しいことをしようぜぇ!」
柄の悪い小人に扮した河田と長谷が、白雪姫……もとい、克也を舞台袖に引っ張って行こうとする。
「嫌よ。どうして、あんた達なんかと……」
「ひょ~、可愛いねぇ! 俺達と楽しいこと、しようねぇ!」
白雪は強引な小人達に連れて行かれそうになる。ちなみに、小人は白雪よりかなり小さいのでは……というツッコミは、この劇ではご愛嬌だ。
(う~、役でやっているとは言え、鬱陶しいものだな……)
克也はそんなことを考えた。
河田や長谷は、クラスの中でも元より、地味な自分に絡んでくる煩わしい不良達だった。そんな不良達は文化祭なんてやる気がないもの……と相場が決まってそうなものだが、どういう訳かノリノリで柄の悪い小人役に立候補したのだった。
(何だかクラスの立ち位置と変わらないし、悪意を感じる……)
そんなことを考えて、内心、溜息が出そうになる……その時だった。
「そ……そこの小人達! ひ……姫を放すんだ!」
その瞬間、あちらこちらから歓声が湧き起こった。
そう……それは待ちに待った、紅王子の登場。王子の衣装を纏った彼女の立ち振舞いはその場にいる誰の目も引くほどに格別で……
(カッコいい……)
克也はつい、見惚れてしまった。
役作りのため、多少はおどおどした挙動をしているけれど、それでも紅王子はひたすらにカッコ良かった。凛としてこちらを見つめる、茶色がかった美しい瞳……それに意識が吸い込まれそうになる。
「姫。行こう!」
「え……ええ」
白雪は紅王子に手を引かれて、小人達の元から走り去った……
*
一通り、練習が済んで……紅の親友の結奈は、紅王子のカッコ良さにひたすらに悶えていた。
「紅! あんた、ヤバい、ヤバい! カッコよすぎる~! クラスの男子、誰もあんたにゃ敵わないわよ」
「いや、ちょっと……大袈裟よ」
紅は頬を紅色に染めて照れる。
「そんなこと、ない、ない! マジで痺れた! あぁもう……私が白雪に立候補すれば良かった~」
結奈はそんなことを言って本気でしょんぼりとし始めて……
彼女達の隣で脚本の見直しをしていた晴人は、何処となく不機嫌になった。
「ふーん……じゃあ、結奈は紅と付き合えば?」
彼の口から漏れたその言葉に、結奈は一瞬目を丸くして……思わず吹き出した。
「やだもう! 私のハルト先生! 何をスネてんの?」
「スネてない!」
「ごめん、ごめん。私が悪かった。紅は確かにカッコ良かったけど、それも先生の脚本があってこそよ。だから! 私の中ではやっぱり、晴人が一番カッコいい!」
結奈の言葉に、晴人は頬を薄らと染めて……もうすっかり機嫌を直した様子だ。
そんな二人を見て、紅は必死で笑いを堪えていたのだった。
オレンジ色の夕陽が染める、克也と一緒に帰る道すがら。紅は完全にツボにハマっていた、さっきの二人のやりとりを話した。
「もう、ホント面白くって。私に嫉妬してスネるとか……晴人も可愛いとこ、あるんじゃん」
「うん。晴人は結奈にベタ惚れだし。それがいつもの戯れ合いなんだろうな。でも……」
克也は、夕陽に映えてより一層に眩しい彼女をじっと見つめた。
「紅、本当にカッコ良かった。今まで、見たこともないくらいに……だから、そりゃあ晴人が妬くのも分かるよ」
彼のその真っ直ぐな言葉に、紅は思わず赤くなる。しかし、照れ隠しにすっと目を瞑った。
「何よ、それ。そんなの……レディーに向かって、カッコいいなんて、全然、褒め言葉じゃないわよ。それに……」
彼女は目を開けて、澄んだ瞳で克也を見つめた。
「もし私がそんなにカッコ良かったなら……それは克也。あんたがカッコ良かったからよ」
「えっ、僕?」
「そう」
紅はふわりと笑って頷いた。
「だって、私……あの時のあんたの真似をしているだけなんだから。そう。あの時……変な男達から私を守ってくれた時の!」
「えっ……」
紅の言葉であの時の出来事を思い出して、克也は思わず赤くなった。そんな彼に、紅はにっこりと白い歯を見せた。
「だから! あんたはホント、カッコいいし、自慢の彼氏なんだから。もっと、自信持ちなよ!」
「う……うん!」
オレンジ色の綺麗な夕陽に照らされた紅の瑞々しい笑顔に、克也はときめいて。
もうラストスパートに入る翌日からの白雪姫の練習が、さらに楽しみで仕方なくなったのだった。
「へぃ、そこの綺麗なお姫さん。一緒に森の泉へ行かないかい?」
「我々小人と楽しいことをしようぜぇ!」
柄の悪い小人に扮した河田と長谷が、白雪姫……もとい、克也を舞台袖に引っ張って行こうとする。
「嫌よ。どうして、あんた達なんかと……」
「ひょ~、可愛いねぇ! 俺達と楽しいこと、しようねぇ!」
白雪は強引な小人達に連れて行かれそうになる。ちなみに、小人は白雪よりかなり小さいのでは……というツッコミは、この劇ではご愛嬌だ。
(う~、役でやっているとは言え、鬱陶しいものだな……)
克也はそんなことを考えた。
河田や長谷は、クラスの中でも元より、地味な自分に絡んでくる煩わしい不良達だった。そんな不良達は文化祭なんてやる気がないもの……と相場が決まってそうなものだが、どういう訳かノリノリで柄の悪い小人役に立候補したのだった。
(何だかクラスの立ち位置と変わらないし、悪意を感じる……)
そんなことを考えて、内心、溜息が出そうになる……その時だった。
「そ……そこの小人達! ひ……姫を放すんだ!」
その瞬間、あちらこちらから歓声が湧き起こった。
そう……それは待ちに待った、紅王子の登場。王子の衣装を纏った彼女の立ち振舞いはその場にいる誰の目も引くほどに格別で……
(カッコいい……)
克也はつい、見惚れてしまった。
役作りのため、多少はおどおどした挙動をしているけれど、それでも紅王子はひたすらにカッコ良かった。凛としてこちらを見つめる、茶色がかった美しい瞳……それに意識が吸い込まれそうになる。
「姫。行こう!」
「え……ええ」
白雪は紅王子に手を引かれて、小人達の元から走り去った……
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一通り、練習が済んで……紅の親友の結奈は、紅王子のカッコ良さにひたすらに悶えていた。
「紅! あんた、ヤバい、ヤバい! カッコよすぎる~! クラスの男子、誰もあんたにゃ敵わないわよ」
「いや、ちょっと……大袈裟よ」
紅は頬を紅色に染めて照れる。
「そんなこと、ない、ない! マジで痺れた! あぁもう……私が白雪に立候補すれば良かった~」
結奈はそんなことを言って本気でしょんぼりとし始めて……
彼女達の隣で脚本の見直しをしていた晴人は、何処となく不機嫌になった。
「ふーん……じゃあ、結奈は紅と付き合えば?」
彼の口から漏れたその言葉に、結奈は一瞬目を丸くして……思わず吹き出した。
「やだもう! 私のハルト先生! 何をスネてんの?」
「スネてない!」
「ごめん、ごめん。私が悪かった。紅は確かにカッコ良かったけど、それも先生の脚本があってこそよ。だから! 私の中ではやっぱり、晴人が一番カッコいい!」
結奈の言葉に、晴人は頬を薄らと染めて……もうすっかり機嫌を直した様子だ。
そんな二人を見て、紅は必死で笑いを堪えていたのだった。
オレンジ色の夕陽が染める、克也と一緒に帰る道すがら。紅は完全にツボにハマっていた、さっきの二人のやりとりを話した。
「もう、ホント面白くって。私に嫉妬してスネるとか……晴人も可愛いとこ、あるんじゃん」
「うん。晴人は結奈にベタ惚れだし。それがいつもの戯れ合いなんだろうな。でも……」
克也は、夕陽に映えてより一層に眩しい彼女をじっと見つめた。
「紅、本当にカッコ良かった。今まで、見たこともないくらいに……だから、そりゃあ晴人が妬くのも分かるよ」
彼のその真っ直ぐな言葉に、紅は思わず赤くなる。しかし、照れ隠しにすっと目を瞑った。
「何よ、それ。そんなの……レディーに向かって、カッコいいなんて、全然、褒め言葉じゃないわよ。それに……」
彼女は目を開けて、澄んだ瞳で克也を見つめた。
「もし私がそんなにカッコ良かったなら……それは克也。あんたがカッコ良かったからよ」
「えっ、僕?」
「そう」
紅はふわりと笑って頷いた。
「だって、私……あの時のあんたの真似をしているだけなんだから。そう。あの時……変な男達から私を守ってくれた時の!」
「えっ……」
紅の言葉であの時の出来事を思い出して、克也は思わず赤くなった。そんな彼に、紅はにっこりと白い歯を見せた。
「だから! あんたはホント、カッコいいし、自慢の彼氏なんだから。もっと、自信持ちなよ!」
「う……うん!」
オレンジ色の綺麗な夕陽に照らされた紅の瑞々しい笑顔に、克也はときめいて。
もうラストスパートに入る翌日からの白雪姫の練習が、さらに楽しみで仕方なくなったのだった。
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