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紅&克也編〜2〜
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もう文化祭も二日後に迫っており……その放課後は、いつになく賑やかになっていた。
ある教室からは、ノリノリのダンスミュージックが廊下にまで響いてくるし、またある教室ではゾンビやら狼男のマスクを被った生徒が闊歩していた。どのクラスも文化祭の準備は大詰めを迎えており、来たる一大イベントに向けて皆がドキドキ、ワクワクと胸を躍らせていた。
そして、克也のクラスでも。
「やだ……何、この白雪。めっちゃ可愛いじゃん!」
白雪……もとい、克也のメイクを担当していた結奈の声が響くと、クラスメイト達が一挙に彼の元へ集結した。
「おぉっ、マジで? これが克也!? 美人すぎるじゃんか」
男子生徒も色めき立つ。
それもそのはず。結奈のメイクが良かったのか……はたまた、克也も磨けば光る素材を持っていたのか。そこにいたのは、紅もびっくりの清楚な美女だったのだ。
しかし、当の克也は萎れていた。
「うぅ……嫌だ、嫌だ。早く、化粧拭いたい……」
そんな彼の背中を、紅がバァンと力いっぱいに叩いた。
「いてっ」
顔をしかめる克也は、目の前に小悪魔の笑みを確認した。
「なぁにを、根性のないこと言ってんの! あんたはうちのクラスのアイドルなんだから、相応に働いてもらわないと」
「ひぇ~……」
情けない声を出す彼に、紅はニッと白い歯を見せる。
「私もまさか、あんたがこんなに綺麗になるとは思わなかったわ。惚れ直した!」
「えっ……」
克也は目を丸くして……その顔は途端に火照り出して真っ赤になる。
「だから! 引き続き劇の練習。頑張るわよ!」
「う……うん!」
『惚れ直した』とまで言ってくれた紅の言葉を拒否できるはずもなくて。克也はその日も、彼女と共に白雪を演じ始めたのだった。
*
その日も文化祭の準備後に塾へ通い、いつものように克也の足はアーサーへと向かっていた。しかし、彼の顔はぼんやりとしていた。
「最近どうも、成績が伸びないなぁ……」
そっと呟いて、溜息を吐く。
夏休みが開けて以降、克也はどの科目も成績が伸び悩んでいるのだ。とは言っても、成績が落ちているわけではなくて、それ自体は塾の中でもトップクラス……なのだけど。鰻登りだった一学期後半と比較すると、どうしても停滞してしまっているように思えるのだった。そりゃあ、成績もある程度まで上がると、そこからは簡単には上がらなくなる。しかし、そのことは文化祭の練習で慣れない白雪を演じている克也を多少なりとも苛立たせていた。
そんな冴えない気持ちでアーサーの自動ドアをくぐると……一番に克也の目に入ったのは、勝と仲良さそうに話している紅の姿だった。
(えっ……)
紅は克也が店に入ったのにも気付いていない様子で。彼は思わず、店の棚の陰に隠れた。
(どういうことだ? だって、紅はあいつのことは大嫌いだって……)
ドクン、ドクン……と不安に高鳴る胸を抑えながら彼は二人の会話に聞き耳を立てた。
「えっ、紅……文化祭、明後日なのか?」
「ええ、そうよ。それでね、私のクラス。『白雪姫』の劇やるの」
「マジか! じゃあ当然、紅が白雪、だよな?」
自信満々の勝の問いに、紅は悪戯っぽく目を細めた。
「ふふふ……それが、違うのよね。私は実は、王子役!」
「うそ! じゃあ、白雪は?」
「それは秘密」
「いや、そんなこと言われると気になるじゃんかよ。紅を差し置いて白雪になるほど綺麗な女子って……俺、見てみてぇ」
「じゃあ、うちの文化祭に来なよ。あんたがその目で確かめなって」
「マジで? いいのか?」
不敵な笑みを浮かべる紅に、勝は目を輝かせる。
それは、冷静に見れば、ただのバイト仲間を文化祭に呼ぶ彼女。何の問題もない光景だった。しかし、克也は心中穏やかでなかった。
だって……
「紅……どういうこと?」
棚の陰から現れた克也が低くくぐもった声を出すと、紅は目を丸くした。
「あら、克也。いつの間に……」
「そんなに僕を笑い物にしたいの?」
「えっ?」
彼の言葉の意味をすぐには理解できずに、紅は首を傾げる。しかし、克也はいつになく低く、怒りのこもった声で続けた。
「そんな……他所の高校の男子まで呼んで、あの劇を見せて。そんなに僕を笑い物にしたいのか、って聞いてるんだよ」
そう言って睨みをきかせる克也は、今までに見たことのないほどに憤っているのが分かって……紅は途端に慌てた。
「いや……克也。私、別にそんなつもりじゃ……」
「じゃあ、どういうつもり?」
「そりゃあ、私達の作り上げた素敵な劇だから。少しでも沢山の人に見てもらいたくて」
しかし、克也は不満そうに隣の勝を見た。
「へぇ……それで、この人を呼ぶんだ」
「え、いや。私は別にそんな深い意味では……」
「もう、いいよ!」
克也はそう叫んで、店から飛び出して……
「ちょっと、克也!」
紅は店番をほっぽらかして、追いかけた。
「え? 何だ? どうしてお前の彼氏、あんな怒ってんだ?」
「ごめん、ちょっと間、店を任せた!」
「おい……」
訳が分からずにおどおどしている勝を置いて、紅は店から駆け出したのだった。
「ちょっと、克也。待って……待てって!」
紅は息を切らしながら、克也の腕を掴んだ。
「話を聞いて……」
「話って? 僕の白雪を見せ物にして、みんなで笑いたいだけなんだろ?」
克也はいじけるように目を伏せる。
「はぁ? 何を捻くれてんの? ガキじゃあるまいし……」
そんな克也を、紅は息を切らしながら睨んだ。
「大体……紅、言ってたじゃんか。あいつのことは大嫌いだって」
「あいつって……あぁ、勝のこと? ええ、今でも大嫌いよ。まぁ、前よりちょっとはマシになったけど」
「へぇ。マシになって、あんなに仲良くなったんだ」
「はぁ?」
彼の言葉尻にカチンときて、紅は眉をひそめた。
「何、あんた。また、嫉妬? やめてよ、男のくせに。みっともない……」
「紅は……本当に僕を男だと思ってるの?」
「はぁ?」
眉間に皺を寄せる紅を、克也は哀しげに見つめた。
「劇だって。紅が煽てて、僕が白雪を演じると、クラスのみんなが笑って。いいネタ……笑い物だよ。紅の王子はあんなにカッコいいって言われてるのに」
克也のその言葉を聞いて……紅は「はぁー」と呆れたように溜息を吐いた。
「何、あんた。そんなこと考えて練習してたの? 全く、女々しい……」
「そうだよな。こんな女々しい奴よりも、紅はあいつの方がいいんだ? そりゃあ、僕よりもずっとイケメンだし」
「あいつって、やっぱ、勝のこと? やめてよ。あいつは本当に無理……」
「へぇ……紅は、無理な奴を文化祭に呼ぶんだ」
「いや、だから……」
何を言っても克也はイジイジとしている。紅は切れ長の目を細めてそんな彼を睨んで、また深く溜息を吐いた。
「あ、そう。じゃあ、ずっとそう思ってればいいじゃん」
「えっ……」
「私、あいつに店番、任せてるし。そうやって、いつまでもウジウジしてる奴に構ってるほど暇じゃないのよ」
ぶっきら棒にそう言うと、克也は無言で俯いた。
紅はそんな彼を放って、踵を返してバイトに戻ったのだった。
ある教室からは、ノリノリのダンスミュージックが廊下にまで響いてくるし、またある教室ではゾンビやら狼男のマスクを被った生徒が闊歩していた。どのクラスも文化祭の準備は大詰めを迎えており、来たる一大イベントに向けて皆がドキドキ、ワクワクと胸を躍らせていた。
そして、克也のクラスでも。
「やだ……何、この白雪。めっちゃ可愛いじゃん!」
白雪……もとい、克也のメイクを担当していた結奈の声が響くと、クラスメイト達が一挙に彼の元へ集結した。
「おぉっ、マジで? これが克也!? 美人すぎるじゃんか」
男子生徒も色めき立つ。
それもそのはず。結奈のメイクが良かったのか……はたまた、克也も磨けば光る素材を持っていたのか。そこにいたのは、紅もびっくりの清楚な美女だったのだ。
しかし、当の克也は萎れていた。
「うぅ……嫌だ、嫌だ。早く、化粧拭いたい……」
そんな彼の背中を、紅がバァンと力いっぱいに叩いた。
「いてっ」
顔をしかめる克也は、目の前に小悪魔の笑みを確認した。
「なぁにを、根性のないこと言ってんの! あんたはうちのクラスのアイドルなんだから、相応に働いてもらわないと」
「ひぇ~……」
情けない声を出す彼に、紅はニッと白い歯を見せる。
「私もまさか、あんたがこんなに綺麗になるとは思わなかったわ。惚れ直した!」
「えっ……」
克也は目を丸くして……その顔は途端に火照り出して真っ赤になる。
「だから! 引き続き劇の練習。頑張るわよ!」
「う……うん!」
『惚れ直した』とまで言ってくれた紅の言葉を拒否できるはずもなくて。克也はその日も、彼女と共に白雪を演じ始めたのだった。
*
その日も文化祭の準備後に塾へ通い、いつものように克也の足はアーサーへと向かっていた。しかし、彼の顔はぼんやりとしていた。
「最近どうも、成績が伸びないなぁ……」
そっと呟いて、溜息を吐く。
夏休みが開けて以降、克也はどの科目も成績が伸び悩んでいるのだ。とは言っても、成績が落ちているわけではなくて、それ自体は塾の中でもトップクラス……なのだけど。鰻登りだった一学期後半と比較すると、どうしても停滞してしまっているように思えるのだった。そりゃあ、成績もある程度まで上がると、そこからは簡単には上がらなくなる。しかし、そのことは文化祭の練習で慣れない白雪を演じている克也を多少なりとも苛立たせていた。
そんな冴えない気持ちでアーサーの自動ドアをくぐると……一番に克也の目に入ったのは、勝と仲良さそうに話している紅の姿だった。
(えっ……)
紅は克也が店に入ったのにも気付いていない様子で。彼は思わず、店の棚の陰に隠れた。
(どういうことだ? だって、紅はあいつのことは大嫌いだって……)
ドクン、ドクン……と不安に高鳴る胸を抑えながら彼は二人の会話に聞き耳を立てた。
「えっ、紅……文化祭、明後日なのか?」
「ええ、そうよ。それでね、私のクラス。『白雪姫』の劇やるの」
「マジか! じゃあ当然、紅が白雪、だよな?」
自信満々の勝の問いに、紅は悪戯っぽく目を細めた。
「ふふふ……それが、違うのよね。私は実は、王子役!」
「うそ! じゃあ、白雪は?」
「それは秘密」
「いや、そんなこと言われると気になるじゃんかよ。紅を差し置いて白雪になるほど綺麗な女子って……俺、見てみてぇ」
「じゃあ、うちの文化祭に来なよ。あんたがその目で確かめなって」
「マジで? いいのか?」
不敵な笑みを浮かべる紅に、勝は目を輝かせる。
それは、冷静に見れば、ただのバイト仲間を文化祭に呼ぶ彼女。何の問題もない光景だった。しかし、克也は心中穏やかでなかった。
だって……
「紅……どういうこと?」
棚の陰から現れた克也が低くくぐもった声を出すと、紅は目を丸くした。
「あら、克也。いつの間に……」
「そんなに僕を笑い物にしたいの?」
「えっ?」
彼の言葉の意味をすぐには理解できずに、紅は首を傾げる。しかし、克也はいつになく低く、怒りのこもった声で続けた。
「そんな……他所の高校の男子まで呼んで、あの劇を見せて。そんなに僕を笑い物にしたいのか、って聞いてるんだよ」
そう言って睨みをきかせる克也は、今までに見たことのないほどに憤っているのが分かって……紅は途端に慌てた。
「いや……克也。私、別にそんなつもりじゃ……」
「じゃあ、どういうつもり?」
「そりゃあ、私達の作り上げた素敵な劇だから。少しでも沢山の人に見てもらいたくて」
しかし、克也は不満そうに隣の勝を見た。
「へぇ……それで、この人を呼ぶんだ」
「え、いや。私は別にそんな深い意味では……」
「もう、いいよ!」
克也はそう叫んで、店から飛び出して……
「ちょっと、克也!」
紅は店番をほっぽらかして、追いかけた。
「え? 何だ? どうしてお前の彼氏、あんな怒ってんだ?」
「ごめん、ちょっと間、店を任せた!」
「おい……」
訳が分からずにおどおどしている勝を置いて、紅は店から駆け出したのだった。
「ちょっと、克也。待って……待てって!」
紅は息を切らしながら、克也の腕を掴んだ。
「話を聞いて……」
「話って? 僕の白雪を見せ物にして、みんなで笑いたいだけなんだろ?」
克也はいじけるように目を伏せる。
「はぁ? 何を捻くれてんの? ガキじゃあるまいし……」
そんな克也を、紅は息を切らしながら睨んだ。
「大体……紅、言ってたじゃんか。あいつのことは大嫌いだって」
「あいつって……あぁ、勝のこと? ええ、今でも大嫌いよ。まぁ、前よりちょっとはマシになったけど」
「へぇ。マシになって、あんなに仲良くなったんだ」
「はぁ?」
彼の言葉尻にカチンときて、紅は眉をひそめた。
「何、あんた。また、嫉妬? やめてよ、男のくせに。みっともない……」
「紅は……本当に僕を男だと思ってるの?」
「はぁ?」
眉間に皺を寄せる紅を、克也は哀しげに見つめた。
「劇だって。紅が煽てて、僕が白雪を演じると、クラスのみんなが笑って。いいネタ……笑い物だよ。紅の王子はあんなにカッコいいって言われてるのに」
克也のその言葉を聞いて……紅は「はぁー」と呆れたように溜息を吐いた。
「何、あんた。そんなこと考えて練習してたの? 全く、女々しい……」
「そうだよな。こんな女々しい奴よりも、紅はあいつの方がいいんだ? そりゃあ、僕よりもずっとイケメンだし」
「あいつって、やっぱ、勝のこと? やめてよ。あいつは本当に無理……」
「へぇ……紅は、無理な奴を文化祭に呼ぶんだ」
「いや、だから……」
何を言っても克也はイジイジとしている。紅は切れ長の目を細めてそんな彼を睨んで、また深く溜息を吐いた。
「あ、そう。じゃあ、ずっとそう思ってればいいじゃん」
「えっ……」
「私、あいつに店番、任せてるし。そうやって、いつまでもウジウジしてる奴に構ってるほど暇じゃないのよ」
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