四次元ロッカー

いっき

文字の大きさ
1 / 4

しおりを挟む
「うっわぁ。祐飛(ゆうひ)のロッカー、すごいゴミ」

千佳(ちか)が俺のロッカーを見て、眉を顰めた。

「ゴミじゃねぇよ。まだ使える物を一回使ったからといって、捨ててしまったら勿体無いだろ。いつかは使うよ」

「そんなこと言って、絶対に使わないでしょ! 私が、掃除したげる」

お節介女が、俺のロッカーに入っているものを全部出した。

一回はめたけれど、結局殆ど使わなかったゴム手袋。
一回つけただけの使い捨てマスク。
裏紙として使うつもりだった大量のプリント……。

今までロッカーを隠れ蓑にしていた資源達が、続々と容赦なく外に放り出される。

「ちょ……ちょっと。全部、いつかは使うものだって」

「そんなこと言って、溜めこむだけでしょ……うっわ、何これ。今まで、どうやってこのロッカーに入ってたの!?」

千佳に出された大量の使い置き資源達は、ロッカーの容積の幾倍もの量になっていた。

「まぁ、俺の収納術の賜物だな」

「いや、ドヤるとこじゃないし。ダラしないだけでしょ」

千佳は溜息を吐いた。

「これ、まるでドラちゃんの四次元ポケットみたい。『四次元ロッカー』ね。今日から、あんたのアダ名は『四次元ロッカー』よ」

「おお、いい名前だ。ロッカー(ロック歌手)を目指す俺にぴったり!」

「馬鹿なこと言ってないで、これ全部ゴミ袋に詰めて! 明日、ゴミの日だから」

「いや、ちょい待ち! これ、まだ全部使えるって……」

結局、ロッカーに所狭しと詰め込まれていた資源達は、全て捨てられることになった。


千佳は、俺の幼馴染。
小学生の頃からずっと一緒にいて、同じ大学の工学部に入学、電子工学の研究室に入った。
お節介なのは昔から相変わらずで、研究室の俺の机を勝手に掃除したりする。
そのお節介は、研究室にいる時だけではない。

俺は軽音サークルに所属し、ロックのボーカルをやっている。
千佳は音楽に関しては疎いのだが、ライブをする時には友達に声掛けをして呼んでくれたり、飲み物を差し入れてくれるのだ。

お節介な彼女は、いつも側にいて当たり前……俺にとっては、そんな存在だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

冷徹公爵の誤解された花嫁

柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。 冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。 一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

幼馴染を溺愛する旦那様の前からは、もう消えてあげることにします

睡蓮
恋愛
「旦那様、もう幼馴染だけを愛されればいいじゃありませんか。私はいらない存在らしいので、静かにいなくなってあげます」

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました

ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!! 打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

処理中です...