四次元ロッカー

いっき

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翌日。

「やれやれ、こんなに閑散としちゃって」

俺はすっかり寂しくなった研究室のロッカーを見て、溜息を吐いた。
でも、これでまた、新しいものを詰め込むことができる。
いつもながらに、千佳のお節介に助けられるのだ。

しかし、すっかり物のなくなったそのロッカーの中に、一枚、紙が落ちているのを見つけた。

あれ、昨日の生き残り?

俺はそれを拾って見た。

設計図のようなものと、数式が書かれている。
そして、図の上には『無重力装置』と印字されていた。

何だ、これ?
誰かのいたずら?

不思議に思ったが、かなり興味を惹かれた。

この設計図の通りの装置を作製して装着すると、重力から解き放たれる……そんな装置みたいだ。

俺は設計図をもとに、装置を作ることにした。
机上での勉強は苦手で欠点ギリギリの俺だが、設計図の通りに作製するのは得意だ。

高圧電流によって、極めて強力な磁力を発生させる。
その磁力を地球そのものの放つ磁力と反発させ、装着した者を重力から解き放つ。
調節用のつまみも付いていて、浮く高さも調節できる……。

そんな装置が完成した。



「すごい……本当に、無重力だ」

完成した装置をつけた俺は、感動した。
本当に無重力のように、ふわふわと浮くのだ。

そう、まるで宇宙の四次元空間にいるかのように。

あれっ?
四次元……。

俺は、この装置をつけて連想したその言葉から、千佳につけられたアダ名を思い出した。

『四次元ロッカー』……
そうだ!

この装置をつけたら、それが可能なんだ!
俺はその思いつきに顔がニヤけた。



「なぁ、千佳」

研究室での食事中、千佳に話した。

「今度のロックのライブは、一味違うぜ」

「一味違う?」

「そう。名付けて、『四次元ロッカー』。そのライブをするんだ」

「え、それって、私のつけたアダ名じゃ……」

「おぅ、いいアイディアを、ありがとな!」

俺はニッと笑った。
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