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「すっごい、綺麗……」
高校の裏山のてっぺん……私達の住んでいる町の見渡せるその場所に、彼は私を連れて来た。
いつもは真っ赤な夕焼けに染められてもっと綺麗みたいなんだけれど、今日はお空は今にも降り出しそうな黒い雲に覆われ始めていて……でも、それでもそこから見渡す私達の町はやっぱりとても美しかった。
「そうだろ? いつか、美咲と一緒に来たいと思っていたんだ」
そんなことを言う彼の横顔を見ていると……さっきはどういう脈絡か分からず、突然に告白されたけれど。私は自分の想いを彼に伝えてなかったな……と思った。
「ねぇ、達也くん」
「ん?」
「あのね、私……」
私が自らの想いを口にしようとした時……まるでそれを邪魔するかのように、私達の真上の空を覆う黒い雲から突然に大粒の雨が降り出した。
「美咲! 雨の当たらない場所に行こう」
彼がそう言って私の手を取ろうとした、まさにその時だった。
『ピカッ!』
私達と辺り一面を、稲妻の眩い光が照らした。そして、次の瞬間……!
『ダァァーン!!』
今まで聞いたこともないくらいに大きな音……体中に走る凄まじい痺れとともに、私の目の前は真っ暗になった。
*
「う……ん……」
軋むような痛みと共に、私は目を覚ました。
「ここは……」
辺りを見渡すと、草木が太陽の光に照らされて揺れていて。どうやら、私が落雷に打たれたあの場所……裏山のてっぺんのようだった。
そう。落雷に打たれた記憶はあまりに鮮明に、私の中に残っているのだけれど、これは……どういうこと?
私、生きてる? それに、突然の雨に濡れた服がびしょびしょだけれど、周りの草木は全く濡れていなかった。混乱しながらも、私はまず家に帰って服を着替えることにした。
家の時計を確認すると、四時頃……丁度、いつも学校が終わって帰って来るくらいの時間だということが分かった。
新しい服に着替えて少し落ち着いた私は、記憶を整理した。
私はあの時、裏山のてっぺんで達也くんと一緒にいた。そして、突然に雨が降り出して、彼が私に手を伸ばそうとした途端に雷が落ちた。
だとすると……
「達也くんは?」
呟く私の顔から、サァッと血の気が引いていった。
雷に打たれて……私は大丈夫だったけれど、彼の安否は? 私に手を伸ばした時、もしかしたら彼も雷に……?
そんなことを考えていたら、いてもたってもいられなくなって。私は思わず、家を飛び出した。
家の門を出て、右側……彼の家の方へ駆け出した。左側の向こうから、誰かがこちらを見ているような気がしたけれど、私は兎に角、急いだ。だって、達也くんの安否が気になって仕方がなかったから。
走る先……一人で歩く彼が目に入った。
「達也くん!」
私が叫ぶと、彼は驚いた顔をして振り返った。
「よかった、よかった、達也くん……」
思わず彼を抱きしめた。
「私、達也くんがいなくなったらどうしようって……。だって、私、ずっとあなたのことが好きだったから」
「え……ええっ!?」
突然のことに、彼は驚いて目を見開いた。
そんな彼を見て……私はやっと冷静になって、今、自分のしていることを考えた。
彼はいつもと同じ様子でここにいる。だから、雷なんかに打たれた訳がない。
だとすると、『あれ』はきっと私が勝手に見た夢で、私はその『夢』の続きで彼に告白してしまったってこと?
考えれば考えるほどに、自分の行動が大胆に思えて……私はまるで、顔から火が出るかのように恥ずかしくなった。
「キャアァ!」
私はいてもたってもいられなくなって駆け出した。
「えっ、美咲! 美咲!」
後ろから彼の呼ぶ声が聞こえたけれど、恥ずかしくて、恥ずかしくて……最早、耳に入らない。私はひたすらに走ってその場から逃げ出した。
高校の裏山のてっぺん……私達の住んでいる町の見渡せるその場所に、彼は私を連れて来た。
いつもは真っ赤な夕焼けに染められてもっと綺麗みたいなんだけれど、今日はお空は今にも降り出しそうな黒い雲に覆われ始めていて……でも、それでもそこから見渡す私達の町はやっぱりとても美しかった。
「そうだろ? いつか、美咲と一緒に来たいと思っていたんだ」
そんなことを言う彼の横顔を見ていると……さっきはどういう脈絡か分からず、突然に告白されたけれど。私は自分の想いを彼に伝えてなかったな……と思った。
「ねぇ、達也くん」
「ん?」
「あのね、私……」
私が自らの想いを口にしようとした時……まるでそれを邪魔するかのように、私達の真上の空を覆う黒い雲から突然に大粒の雨が降り出した。
「美咲! 雨の当たらない場所に行こう」
彼がそう言って私の手を取ろうとした、まさにその時だった。
『ピカッ!』
私達と辺り一面を、稲妻の眩い光が照らした。そして、次の瞬間……!
『ダァァーン!!』
今まで聞いたこともないくらいに大きな音……体中に走る凄まじい痺れとともに、私の目の前は真っ暗になった。
*
「う……ん……」
軋むような痛みと共に、私は目を覚ました。
「ここは……」
辺りを見渡すと、草木が太陽の光に照らされて揺れていて。どうやら、私が落雷に打たれたあの場所……裏山のてっぺんのようだった。
そう。落雷に打たれた記憶はあまりに鮮明に、私の中に残っているのだけれど、これは……どういうこと?
私、生きてる? それに、突然の雨に濡れた服がびしょびしょだけれど、周りの草木は全く濡れていなかった。混乱しながらも、私はまず家に帰って服を着替えることにした。
家の時計を確認すると、四時頃……丁度、いつも学校が終わって帰って来るくらいの時間だということが分かった。
新しい服に着替えて少し落ち着いた私は、記憶を整理した。
私はあの時、裏山のてっぺんで達也くんと一緒にいた。そして、突然に雨が降り出して、彼が私に手を伸ばそうとした途端に雷が落ちた。
だとすると……
「達也くんは?」
呟く私の顔から、サァッと血の気が引いていった。
雷に打たれて……私は大丈夫だったけれど、彼の安否は? 私に手を伸ばした時、もしかしたら彼も雷に……?
そんなことを考えていたら、いてもたってもいられなくなって。私は思わず、家を飛び出した。
家の門を出て、右側……彼の家の方へ駆け出した。左側の向こうから、誰かがこちらを見ているような気がしたけれど、私は兎に角、急いだ。だって、達也くんの安否が気になって仕方がなかったから。
走る先……一人で歩く彼が目に入った。
「達也くん!」
私が叫ぶと、彼は驚いた顔をして振り返った。
「よかった、よかった、達也くん……」
思わず彼を抱きしめた。
「私、達也くんがいなくなったらどうしようって……。だって、私、ずっとあなたのことが好きだったから」
「え……ええっ!?」
突然のことに、彼は驚いて目を見開いた。
そんな彼を見て……私はやっと冷静になって、今、自分のしていることを考えた。
彼はいつもと同じ様子でここにいる。だから、雷なんかに打たれた訳がない。
だとすると、『あれ』はきっと私が勝手に見た夢で、私はその『夢』の続きで彼に告白してしまったってこと?
考えれば考えるほどに、自分の行動が大胆に思えて……私はまるで、顔から火が出るかのように恥ずかしくなった。
「キャアァ!」
私はいてもたってもいられなくなって駆け出した。
「えっ、美咲! 美咲!」
後ろから彼の呼ぶ声が聞こえたけれど、恥ずかしくて、恥ずかしくて……最早、耳に入らない。私はひたすらに走ってその場から逃げ出した。
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