MOON COW~月の牛乳~

いっき

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僕の研究成果……メタン吸収菌の飼料への混合は、牛の飼養の中で普及に移された。
メタン吸収菌を混合した飼料を摂食した牛の第一胃からのメタン排出はなくなり、地球温暖化の一要因は排除された。
さらに、化石燃料の燃焼からソーラー発電へエネルギー産生手段が変更されたことも手伝い、絶え間なく進行していた地球の温暖化に歯止めがかかったのだ。




臨時ニュースです。
月で飼養された牛、第一号『MOON COW』からの搾乳に成功したという報告が、只今、月面家畜研究所より入りました。
乳質としましては乳脂肪率、無脂固形分率が低く、質のよい牛乳とはいえませんが、この一歩は、月面での畜産物生産に大変意義のある一歩と思われます。

本研究で壁となったことは、牛の呼吸に必要な濃度の酸素の供給等もありましたが、何より大きな課題は牛の第一胃での大量のメタンの発生でした。
しかし、それは、ある一人の科学者の発見した一種の菌『メタン吸収菌』によって克服が可能となったのです……。




「おーい、恵美。早く行くぞ」

「待って、泰斗。まだお化粧中」

僕は、やれやれと玄関先で待つ。

「恵美が、飲みたいって研究要望まで出した牛乳。残念ながらそんなに美味しくないんだってさ」

「あら、いいじゃない。一般的には美味しくないなんて言われてても、私にとっては夢の逸品。楽しみで仕方ないわ」

そんな恵美に、僕は苦笑いした。

「全く……研究の要望を出すのはいいけど、次はもっと、簡単な課題にしてくれよな。電気ネズミを開発してくれ、だとか、ダチョウが空を飛べるようにしてくれ、だとか……。そんなんばっかりじゃ、こっちも身がもたないよ」

溜息を吐く僕に、恵美は微笑む。

「あら、あなたは、課題が難しければ難しいほど、闘志を燃やすんじゃなくて?」

「まぁ、そうかも知れないけど……。それに、今回は、地球温暖化防止っていう、おまけまでついてくれたしな」

僕は苦笑いしながらも恵美と視線を繋げた。

「そうよ。この成果の半分は、私のお陰なのよ」

恵美はにっこり笑う。
僕はそんな彼女が急に愛おしくなって、抱きしめようとした。
すると、恵美は手をすり抜ける。

「そんなことより! 早く行くわよ。『月面牛乳試飲ツアー』へ!」

その笑顔は無邪気で、悪戯っ子さながらだった。

「やれやれ、恵美にはホント、敵わないなぁ」

僕は頭をポリポリ掻き、恵美に付いて月面へのツアーへ向かったのだった。
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