MOON COW~月の牛乳~

いっき

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僕が思いついたこと……それは、とある『菌』を分離すること。
もし分離できたとすると、『新種の菌』の発見に繋がるようなことだし、自然界には存在しないような菌かも知れない。
しかし……試してみる価値は充分にあると思った。



僕は、次の日から研究に取り掛かった。
『メタンを吸収する菌』の分離……そんな菌は実在するかどうかは分からなかったが、取り敢えず、メタンが高濃度に存在する牛の第一胃の内容物をカテーテルで取り出したり、家畜糞尿メタン発酵処理装置内の糞尿なんかを採材して、菌を培養した。

高濃度にメタンが存在する条件下、牛の第一胃内に近いpH7前後、温度40度程度で菌を培養する。
出現した菌は、さらに高濃度にメタンが存在する条件下で培養する。
そして、生き残った菌をさらに高濃度メタン存在下で培養する……ということを繰り返した。

そして、ついにメタン濃度100パーセント下で生育する菌を分離したのだ。

その菌は、牛の第一胃内に近い条件下でメタンを体内に吸収して生育した。
どれだけ高濃度にメタンが存在していても、死滅しない。
そして、空気中ではその活性は低下するものの、死滅せず、生存することができる……。

牛が経口摂取すると、第一胃内で発生するメタンを吸収して増殖することができる菌だったのだ。


家畜飼料研究会で、僕は発表した。

「このメタン吸収菌を飼料に混合して給与すると、牛の第一胃から発生したメタンは吸収されます。そのため、鼓腸のリスクはなくなります。この菌の作用により、牛を低重力空間で飼養することが可能になる……私は、そう考えます」


牛が菌を経口摂取すると、菌は第一胃内でメタンを吸収しながら増殖を繰り返す。
菌の活動は活発で吸収力も強く、牛の第一胃内でのメタン発生は激減し、胃の鼓腸による死亡事故のリスクはなくなるのだ。

勿論、菌を飼料に混合して牛に給与する試験は実証済み、そのことによって牛の第一胃の鼓腸が防止できることも確認できている。


すると、聴衆席から一つの声が上がった。

「その菌を飼料混合することで、演者様のおっしゃるように低重力空間で牛を飼養することも可能になりますが……牛のゲップから発せられるメタンをなくすということは、この地球の温暖化の防止にも繋がると思われます」


そう。
つい化石燃料の燃焼により発生する炭酸ガスに目がいきがちだが、メタンはそれ以上に最大の封熱、温室効果を発揮する。
地球上で飼養されている牛のゲップに含まれるメタンが地球の温暖化の一要因になっている点も否めないのだ。

「そうです。本メタン吸収菌を牛の飼料に混合して給与することで、地球上での牛由来のメタン発生の抑制、ひいては地球温暖化の抑制にも繋がります。このことから、私は地球上での牛の飼養においても、本メタン吸収菌の飼料への混合を推奨します」

聴衆席から、感嘆の溜息が漏れた。
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