ぼくらのおみなめし畑

いっき

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ぼくらのおみなめし畑

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 ぼくらの生まれ育ったのは、おみなめし畑。今日もお日さまの光を受けて、黄色くきれいにかがやいている。
 それはどんなお花よりも美しくて、だからこそ大切な生まれ故郷で……ずっと変わらずにいてほしい。ぼくらはそう、願っているんだ。

 風にそよそよとゆれるそのお花からお花へ、ぼくらは追いかけっこする。お空は青くすんでいて、ぼくらはワクワクとはしゃいでいた。
「あ、小さなチョウチョ。かわいい!」
 そんなぼくらを見て、人間の女の子がキラキラと笑っている。ゆっくりとさしだされたその手の指に、ぼくはそっと止まった。
「わー、お母さん。チョウチョ、私の指に止まってくれたよ」
 女の子の笑顔はさらにキラキラとかがやいて、まるでおみなめしのお花みたいだった。
「そうね、さゆり。そのチョウチョはウスイロヒョウモンモドキ。すごく人なつこいチョウチョなの。私も小さい頃、よくいっしょにあそんでいたわ」
 さゆりちゃんと言うのだろうか……その女の子のお母さんもにっこりと笑った。
 このお母さんも、子供の頃にチョウチョとあそんでいたんだ。それはきっと、ぼくらの先祖の先祖のご先祖さまと。そんな昔から、このおみなめし畑はあってウスイロヒョウモンモドキたちは育まれてきたんだ。ぼくはうれしくって、さゆりちゃんの指から飛び去って。兄弟たちにそのことを話しに行った。

 少し冷たい風にゆれるおみなめしは、どこかはかなくてさみしそう。どうしてか分からないけど、ぼくらのおみなめし畑が消えてしまいそうで、不安になった。
 ぼくらはそんな不安をまぎらわそうと、お花からお花へと追いかけっこをしていた。だけれども、お空はどんよりとくもっていて、ぼくらの心も何だか晴れなかった。
『大変だ!大きな鹿がやって来た!』
 兄弟の一人が大あわてで飛んできて、ぼくらは真っ青になった。すぐにみんな、おみなめしのかげにかくれたんだ。

 むしゃむしゃ、むしゃむしゃ。
 大きな鹿がおみなめしを……ぼくらの生まれ故郷を食べてしまう。でも、小さなぼくらには何もできなくて、ぼくは悲しくて泣いていた。いや、ぼくだけじゃない。兄弟たちみんな、しくしく、しくしくと泣いていたんだ。

 それからどのくらいたっただろう。お腹いっぱいになったのか、鹿はどこかに行ってしまった。すっかり小さくなってしまった故郷を見て、ぼくらはふさぎこんでいた。
「あれ?お花畑が……」
 今日もさゆりちゃんが来てくれたけれど、おみなめし畑を見て……ぼくらと同じように、悲しげな顔になった。
「ねぇ、お母さん。お花畑がぐちゃぐちゃになってる……」
 すると、お母さんも悲しそうな顔になった。
「そうね。私が子供の頃もこんなことがあって悲しかった。ねぇ、さゆり。オミナエシは……ウスイロヒョウモンモドキの故郷はね、ずっと、鹿とか雑草から私たちが守ってきた。だから、これからも守っていこうね」
 お母さんの言葉に、さゆりちゃんはこくりとうなずいた。
「うん。チョウチョのお花畑、守る!」
 さゆりちゃんとお母さんは顔を見合わせてそっと笑った。

 その日からすぐに、ぼくらのおみなめし畑のまわりには大きな柵がつけられるようになった。鹿はやって来てもおみなめしに近づくことができなくなって、トボトボと引き返して行くしかなかった。
 さゆりちゃんは、それから毎日、ぼくらのおみなめし畑の雑草をぬいてくれている。
 今日も晴れわたる空の下でキラキラとした汗を流すさゆりちゃんの目の前をぼくらが横切ると、まるでおみなめしのようにかがやくきれいな笑顔を向けてくれた。
「わぁい、チョウチョ。今日も元気でかわいい!」
 ぼくらの故郷のおみなめし畑は少し小さくなったけれど。さゆりちゃんたちに守られて、ぼくらはとっても幸せなんだ。

 ぼくらの生まれ育ったのは、おみなめし畑。今日もお日さまの光を受けて、黄色くきれいにかがやいている。
 それはどんなお花よりも美しくて、だからこそ大切な生まれ故郷で……ずっと変わらずにいてほしい。ぼくらはそう、願っているんだ。
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