ぼくらのおみなめし畑

いっき

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モンとの約束

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「あれ、ここはどこ? みんな、どこに行ったんだろう?」
 ぼくはあたりを見回した。一面においしげる草や木のはっぱは、ぼんやりと黄色いあかりにてらされて、風でほのかにゆれていた。
「かいくん、みのるくーん!」
 ぼくは、ともだちの名前をよんでさがした。

 今日、みのるくんがとてもめずらしいチョウチョ『ウスイロヒョウモンモドキ』のお話をした。昔はぼくたちの村にたくさんいたのに、今ではほとんどいないみたい。
 めずらしいチョウチョをつかまえたら、みんなにじまんできる。だからぼくたちは放課後、ウスイロヒョウモンモドキをつかまえようとしていた。そしてとちゅうまではぼくたちはいっしょにさがしていたけれど、突然に白いきりにかこまれて、ぼくはともだちとはぐれてしまったのだった。

 どのくらい、さがし歩いただろう。
「あれ? だれ……」
 おだやかな光にてらされた草むらの真ん中で、だれかがしゃがんで泣いていた。
 近づいてみると、だいだい色の着物を着た小さな女の子だった。
「ねぇ、どうして泣いているの?」
 ぼくが声をかけると、女の子はなみだでグシャグシャになった顔を上げた。
「私の住んでいるむらが、なくなっていくの」
「えっ、むらが?」
 ぼくはびっくりした。
 だって、ぼくの住んでいるむらがなくなっていくなんて聞いたことがない。だから、ぼくは思わず、女の子にたずねた。
「ねぇ、君はだれ? どこに住んでいるの?」
 すると、女の子はゆっくりと答えた。
「わたしはモン。新庄村に住んでる」
「えっ……」
 新庄村はぼくたちの住んでいるむらで、モンはきっと、ぼくたちと同じくらい……小学生だ。でも、ぼくは一回も、小学校でモンを見たことがない。
 でも、どうしてだろう。モンはきっと、本当のことを言っている。このむらのどこかに住んでいる。そんな気がした。
「モンのむらはどうしてなくなっているの?」
 ぼくが聞くと、モンはどうにか泣きやんで話しはじめた。
「私のむらはね、お手入れをしてもらって続いてきたの」
「お手入れ……だれに?」
「それは、あなたたち」
 モンはぼくを見て、にっこりと笑った。
「昔はね。私たちウスイロヒョウモンモドキは、あなたたちがお手入れをしてくれた草むらでくらしていたの。でもね、いつのころからだろう。私たちの草むらのことは忘れられてしまって、なくなってしまったの……」
 そう言うと、モンは悲しげにうつむいた。
 ウスイロヒョウモンモドキ……モンは自分のことをそう言った。モンがチョウチョだなんて、信じられないはずだった。
 でも、目の前にいるモンはきっと、確かにウスイロヒョウモンモドキなんだ。ぼくはそう感じた。だからぼくは、右手の小指をモンの方にさし出した。
「モン……約束するよ」
 顔を上げたモンに、ぼくは笑顔で言った。
「モンたちの草むらは、ぼくたちが守る。モンたちがいつまでもこの草むらで、ぼくたちといっしょにくらしていけるようにするんだ」
 ぼくとモンは指切りをして……すると、モンはまぶしいほどの笑顔をうかべた。
「ありがとう。私たちもあなたたちといっしょに生きていきたい。これからもずっと……」
 そうささやいたモンの笑顔は、本当にまぶしい光につつまれた。そして気がつくと、モンのすがたはなくなっていて……ぼくの前をだいだい色の小さなチョウチョがとびさった。
 それは、はじめて見るチョウチョで……そう。ぜったいに、ウスイロヒョウモンモドキのモンだったんだ。

「おーい、たかし」
 ぼくの元にいつものともだちが走ってきた。
「おまえ、こんなところにいたのか。ウスイロヒョウモンモドキ、見つけたか?」
 かいくんにたずねられて、ぼくはこくりとうなずいた。
「え、ほんとに? つかまえたのか?」
 みのるくんが目をかがやかせたけれど、ぼくは目をとじて、首をふった。
「つかまえたりしたら、いけないんだ」
 そして、モンがとんでいった方を見つめた。
「ウスイロヒョウモンモドキは……そのすみかは、ぼくたちが守らなくっちゃ。だって、ぼく……モンと約束したんだから」
 ぼくの見つめる先にはモンたちの、青々としたきれいな草むらが広がっていたんだ。
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