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第三章 太陽の魔力と氷の魔力
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今日も、エバンはディアスに跨がって洞窟に来た。
姫が洞窟を出れない理由……時間が経てば経つほど気になっていた。今日こそは事情を知りたい、と思っていた。
「リルム姫さま、あの方が来ましたよ!」
メレンが言った。
「そう……」
リルムは、いつもと違って瞳の奥に決意の光を秘めた、真剣な表情をしていた。
「リルム。今日も洞窟の外は天気で、いい日和だよ。太陽が輝いていて、花も色とりどりで。一緒に外へ出ないか?」
エバンは、今日もダメだろうなと思いつつ、リルムを外へ誘ってみた。
「ええ。外へ出ましょう」
エバンは、リルムの思いがけない返答に驚くと同時に笑顔になった。
「やっと僕と一緒に外へ出る気になったんだね。外はここよりもずっと楽しくて気持ちいいよ!」
しかし、リルムは晴れない顔で言った。
「でも、お願い。洞窟の外へ出た私には、絶対に近づかないで」
「えっ?」
不思議な表情をするエバンをおいて、リルムは傍にあった木の棒を一本持って洞窟の出口へ向かって歩き出した。後を追うエバンを避けるように、足早に洞窟の出口を太陽の光が射し込む方へ向かって出る。
黄色い光が明るく照らし、突如リルムの左手は赤く光り輝いた。それと同時に、リルムの全身は眩しく光る!
「うそだろ……」
洞窟の外へ出たリルムを見たエバンは、仰天した。
暑い……まるで、そこに太陽があるかのようだ。煌々と光るリルムの発する熱が、木の棒を燃やし真っ黒にする。
「これで分かったでしょ?」
真っ暗な洞窟の中へ戻ったリルムは言う。
「私、太陽の光を浴びると『太陽の魔力』を持ってしまう。その力は、全てを燃やし尽くしてしまうの。だから、私は絶対に洞窟の外へ出てはいけない。あなたとは……一緒にいてはいけないの」
エバンは、暫く茫然とした。
まさか、リルムがそんな力を持っていただなんて……。でも……自分はまだ、彼女を諦められない!
「僕が……どうにかする」
「えっ?」
「きっと、何か方法があるはずなんだ。リルムが外で、僕と一緒に……お花を摘んだり、小鳥達の囀りを聞いたり、楽しく暮らす方法が。だから、僕を信じて待ってて」
エバンは洞窟の出口から出てディアスに跨り、颯爽と走り出した。
エバンは、その日から調べ続けた。書物を読みあさったのだ。
来る日も来る日も、国中の書物を読みあさった。
しかし、なかなかよい情報が得られない。
読み疲れ、諦めようとした、その時だった。百年前の書物に、こんな記載を見つけた。
〈マグリア国民は太陽の民族の血筋を引く民、カヴァラ国民は氷の民族の血筋を引く民である。
そのためマグリア国には、左の手の甲に『太陽の証紋』を有する、『太陽の魔力を持つ者』が現れる。それと同時に、カヴァラ国には右の手の平に『氷の証紋』を有する、『氷の魔力を持つ者』が現れる。
太陽の魔力は、この世の全てのものを焼き尽くし、氷の魔力は全てのものを凍てつかせる。その魔力を封印するためには、魔力を持つ者が『封印の指輪』をはめなければならない〉
太陽の魔力……まさに、あの姫の持つ力だ。
それを封じる『封印の指輪』。聞き覚えがある。
それはまさか……。王妃が手に入れたと有頂天になっていた、あの幻の宝……?
同時に現れる氷の魔力……そんなことは、最早どうでもよかった。
王妃の持つ『封印の指輪』があればリルムは洞窟から出て暮らすことができる!
丁度その頃、カヴァラ国のリザリア王妃は、ある青年を王宮の一室に招き入れていた。
「アシス、加減はいかが?」
青白く、冷たい光を瞳の奥に光らせる、無表情な青年。右の手の平には、氷の結晶の形をした痣が青白く光っている。
アシスと呼ばれるその青年を招き入れたその部屋は、全体が凍りついていた。
そう。その青年、アシスこそが『太陽の魔力を持つ者』と同時に現れる『氷の魔力を持つ者』だったのだ。
リザリアが尋ねても、アシスは冷たい目の焦点を外そうとはせず沈黙を保った。
しかし、リザリアは嬉々としていた。この青年……アシスの魔力があれば、この世界の全てを自分のものにすることができる!
姫が洞窟を出れない理由……時間が経てば経つほど気になっていた。今日こそは事情を知りたい、と思っていた。
「リルム姫さま、あの方が来ましたよ!」
メレンが言った。
「そう……」
リルムは、いつもと違って瞳の奥に決意の光を秘めた、真剣な表情をしていた。
「リルム。今日も洞窟の外は天気で、いい日和だよ。太陽が輝いていて、花も色とりどりで。一緒に外へ出ないか?」
エバンは、今日もダメだろうなと思いつつ、リルムを外へ誘ってみた。
「ええ。外へ出ましょう」
エバンは、リルムの思いがけない返答に驚くと同時に笑顔になった。
「やっと僕と一緒に外へ出る気になったんだね。外はここよりもずっと楽しくて気持ちいいよ!」
しかし、リルムは晴れない顔で言った。
「でも、お願い。洞窟の外へ出た私には、絶対に近づかないで」
「えっ?」
不思議な表情をするエバンをおいて、リルムは傍にあった木の棒を一本持って洞窟の出口へ向かって歩き出した。後を追うエバンを避けるように、足早に洞窟の出口を太陽の光が射し込む方へ向かって出る。
黄色い光が明るく照らし、突如リルムの左手は赤く光り輝いた。それと同時に、リルムの全身は眩しく光る!
「うそだろ……」
洞窟の外へ出たリルムを見たエバンは、仰天した。
暑い……まるで、そこに太陽があるかのようだ。煌々と光るリルムの発する熱が、木の棒を燃やし真っ黒にする。
「これで分かったでしょ?」
真っ暗な洞窟の中へ戻ったリルムは言う。
「私、太陽の光を浴びると『太陽の魔力』を持ってしまう。その力は、全てを燃やし尽くしてしまうの。だから、私は絶対に洞窟の外へ出てはいけない。あなたとは……一緒にいてはいけないの」
エバンは、暫く茫然とした。
まさか、リルムがそんな力を持っていただなんて……。でも……自分はまだ、彼女を諦められない!
「僕が……どうにかする」
「えっ?」
「きっと、何か方法があるはずなんだ。リルムが外で、僕と一緒に……お花を摘んだり、小鳥達の囀りを聞いたり、楽しく暮らす方法が。だから、僕を信じて待ってて」
エバンは洞窟の出口から出てディアスに跨り、颯爽と走り出した。
エバンは、その日から調べ続けた。書物を読みあさったのだ。
来る日も来る日も、国中の書物を読みあさった。
しかし、なかなかよい情報が得られない。
読み疲れ、諦めようとした、その時だった。百年前の書物に、こんな記載を見つけた。
〈マグリア国民は太陽の民族の血筋を引く民、カヴァラ国民は氷の民族の血筋を引く民である。
そのためマグリア国には、左の手の甲に『太陽の証紋』を有する、『太陽の魔力を持つ者』が現れる。それと同時に、カヴァラ国には右の手の平に『氷の証紋』を有する、『氷の魔力を持つ者』が現れる。
太陽の魔力は、この世の全てのものを焼き尽くし、氷の魔力は全てのものを凍てつかせる。その魔力を封印するためには、魔力を持つ者が『封印の指輪』をはめなければならない〉
太陽の魔力……まさに、あの姫の持つ力だ。
それを封じる『封印の指輪』。聞き覚えがある。
それはまさか……。王妃が手に入れたと有頂天になっていた、あの幻の宝……?
同時に現れる氷の魔力……そんなことは、最早どうでもよかった。
王妃の持つ『封印の指輪』があればリルムは洞窟から出て暮らすことができる!
丁度その頃、カヴァラ国のリザリア王妃は、ある青年を王宮の一室に招き入れていた。
「アシス、加減はいかが?」
青白く、冷たい光を瞳の奥に光らせる、無表情な青年。右の手の平には、氷の結晶の形をした痣が青白く光っている。
アシスと呼ばれるその青年を招き入れたその部屋は、全体が凍りついていた。
そう。その青年、アシスこそが『太陽の魔力を持つ者』と同時に現れる『氷の魔力を持つ者』だったのだ。
リザリアが尋ねても、アシスは冷たい目の焦点を外そうとはせず沈黙を保った。
しかし、リザリアは嬉々としていた。この青年……アシスの魔力があれば、この世界の全てを自分のものにすることができる!
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