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1-いち-
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◆
刻一刻と、タイムリミットは迫っている。
そう……れいがれいでなくなって、研究所に再度、回収される期限。そして、次に回収されたら、れいはもう二度と、再生されることはない。
だから……僕は一分、一秒でも惜しくって。今日も仕事を早く切り上げて、家への道をひたすらに急いだ。
「おかえり……」
家に入ると、れいはいつものように玄関口で僕を出迎えてくれて……だけれども、今日の彼女は何だか、いつもと様子が違うような気がした。
「どうした……」
「晩御飯、できてるから。今日はいちの好きな、肉じゃがよ。早く、着替えてね」
れいはまるで、いつも通りに振舞おうとしていて……だけれどもそれは、逆に彼女がいつも通りではないって、僕に確信させた。
「ほら。あったかいうちに食べて。だって私、肉じゃがを食べている時のいちの顔、すっごく好きなんだから」
その肉じゃがには、いつも通りに鮮やかに、緑色の絹さやが飾り付けられていた。だけれども僕は、いつも通りではない彼女のことが気になって仕方なくって。真っ直ぐにれいを見て、尋ねた。
「なぁ。何か、あった?」
すると、彼女も真っ直ぐに僕と目を合わせて……その瞳は少し、潤んだ。
「やっぱり、いち……私のことは何でも分かってくれるのね。それは、昔……再生するために回収される前から、私と一緒に暮らしていたから?」
「えっ……」
「ごめん。私、あなたの机の中……勝手に見てしまったの。伏せられた写真立ての中の私……れい。あなたの隣で、とっても幸せそうに、笑ってた」
彼女の瞳からは涙が頬を伝って、テーブルの上に落ちた。
あぁ、そうだ……あの写真。それはあの日……彼女と一緒に海に行った日から、僕の宝物だった。
れいが僕を助けてくれて……僕が家に戻ってから、またれいが来てくれるまで、自分の机の上に飾っていたんだった。
「ごめん、今まで黙っていて。本当に……」
謝る僕に、彼女は瞳に涙を浮かべながら首を横に振った。
「いいえ。私、嬉しい」
「えっ?」
「私……初めて生まれた時からずっと、あなたと一緒にいて。あなたといくつもの思い出を作ってきていたんだって分かって。だって、私……再生される前からそして、これからもずっと、いちのことが大好きなんだもの」
れいは涙ながらに屈託のない笑顔を浮かべて……僕はそんな彼女が堪らず愛しくて、ギュッと抱きしめずにはいられなかった。
「れい……好きだ。もう、離さない」
強く、強く……潰れてしまいそうなくらいに強く抱きしめる僕の腕の中で、彼女もにっこりと微笑んだ。
「私も。好きよ、いち。ずっと……この世界の誰よりも」
タイムリミットが迫っている……そんなことはもう、考えられなかった。ただ、僕の腕の中にこれほどまでに愛しいれいがいる。決して離さぬように……この想いが消えてしまわないように。僕はずっと、彼女のこの体を抱きしめていたんだ。
僕はそれから、れいに話した。彼女が初めてこの家に来た時のこと、初めて遊園地に行った時のこと……美しい思い出の全てを話した。そして、れいは僕の体の中で、僕に温かい血を送り続けてくれていること……そのことを知った彼女は、とっても幸せそうで。まるで、とろけるような天使の笑みを浮かべたのだった。
刻一刻と、タイムリミットは迫っている。
そう……れいがれいでなくなって、研究所に再度、回収される期限。そして、次に回収されたら、れいはもう二度と、再生されることはない。
だから……僕は一分、一秒でも惜しくって。今日も仕事を早く切り上げて、家への道をひたすらに急いだ。
「おかえり……」
家に入ると、れいはいつものように玄関口で僕を出迎えてくれて……だけれども、今日の彼女は何だか、いつもと様子が違うような気がした。
「どうした……」
「晩御飯、できてるから。今日はいちの好きな、肉じゃがよ。早く、着替えてね」
れいはまるで、いつも通りに振舞おうとしていて……だけれどもそれは、逆に彼女がいつも通りではないって、僕に確信させた。
「ほら。あったかいうちに食べて。だって私、肉じゃがを食べている時のいちの顔、すっごく好きなんだから」
その肉じゃがには、いつも通りに鮮やかに、緑色の絹さやが飾り付けられていた。だけれども僕は、いつも通りではない彼女のことが気になって仕方なくって。真っ直ぐにれいを見て、尋ねた。
「なぁ。何か、あった?」
すると、彼女も真っ直ぐに僕と目を合わせて……その瞳は少し、潤んだ。
「やっぱり、いち……私のことは何でも分かってくれるのね。それは、昔……再生するために回収される前から、私と一緒に暮らしていたから?」
「えっ……」
「ごめん。私、あなたの机の中……勝手に見てしまったの。伏せられた写真立ての中の私……れい。あなたの隣で、とっても幸せそうに、笑ってた」
彼女の瞳からは涙が頬を伝って、テーブルの上に落ちた。
あぁ、そうだ……あの写真。それはあの日……彼女と一緒に海に行った日から、僕の宝物だった。
れいが僕を助けてくれて……僕が家に戻ってから、またれいが来てくれるまで、自分の机の上に飾っていたんだった。
「ごめん、今まで黙っていて。本当に……」
謝る僕に、彼女は瞳に涙を浮かべながら首を横に振った。
「いいえ。私、嬉しい」
「えっ?」
「私……初めて生まれた時からずっと、あなたと一緒にいて。あなたといくつもの思い出を作ってきていたんだって分かって。だって、私……再生される前からそして、これからもずっと、いちのことが大好きなんだもの」
れいは涙ながらに屈託のない笑顔を浮かべて……僕はそんな彼女が堪らず愛しくて、ギュッと抱きしめずにはいられなかった。
「れい……好きだ。もう、離さない」
強く、強く……潰れてしまいそうなくらいに強く抱きしめる僕の腕の中で、彼女もにっこりと微笑んだ。
「私も。好きよ、いち。ずっと……この世界の誰よりも」
タイムリミットが迫っている……そんなことはもう、考えられなかった。ただ、僕の腕の中にこれほどまでに愛しいれいがいる。決して離さぬように……この想いが消えてしまわないように。僕はずっと、彼女のこの体を抱きしめていたんだ。
僕はそれから、れいに話した。彼女が初めてこの家に来た時のこと、初めて遊園地に行った時のこと……美しい思い出の全てを話した。そして、れいは僕の体の中で、僕に温かい血を送り続けてくれていること……そのことを知った彼女は、とっても幸せそうで。まるで、とろけるような天使の笑みを浮かべたのだった。
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