最後の缶コーヒー

いっき

文字の大きさ
2 / 3

しおりを挟む
彼女は病院で、一命を取りとめた。

だけれども……

「カフェイン中毒……」

彼女の血中カフェイン濃度はかなり高かったので、きっと中毒による意識消失だろうとのことだった。

カフェインはコーヒーなんかに普通に含まれるけれども、過剰に摂取すると中毒症状が起こり、死に至るケースもあるようだ。

そのことを聞いてしまうと……勿論、僕の渡した缶コーヒーの中のカフェインはごく少量だということは分かっているのだけれど、何だか中毒症状に拍車をかけてしまった気がして。

僕はさらなる罪悪感から、少なくとも彼女が退院するまでは、付き合うことを余儀なくされたのだ。





お見舞いに来た太一が病室を出たのを見送って……里子は錠剤の包装をポケットから取り出して、そっとほくそ笑んだ。

「うまくいったわ」

彼女はカフェインを錠剤にした薬剤を飲んでいた。そのせいで、血液検査時に血中カフェイン濃度がかなり高かったのだ。


里子は引き出しから携帯を取り出して、友人の静香にメッセージを送る。

『あなたの言ったとおり。これであなたの元彼にもっと貢がせることができるわ』

程なくして、静香から返事が返ってきた。

『そうでしょう。私の計画通り……あの男は別れ話をしてもきっと、最後の缶コーヒーを渡す。だから、医師の私が、あなたの健康に影響のない程度の最大量のカフェインを渡した。あとは、あなたの演技の賜物ね。これできっと、あなたをぞんざいに扱うこともなくなるでしょう』

里子はそのメールを見てクスっと笑い、返信した。

『それにしても本当に、良くあんなカモ男を私に譲ってくれたわね。何をねだっても断らないし。退院祝いには、車でも買って貰おうかな……』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生贄姫の末路 【完結】

松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。 それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。 水の豊かな国には双子のお姫様がいます。 ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。 もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。 王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

真実の愛ならこれくらいできますわよね?

かぜかおる
ファンタジー
フレデリクなら最後は正しい判断をすると信じていたの でもそれは裏切られてしまったわ・・・ 夜会でフレデリク第一王子は男爵令嬢サラとの真実の愛を見つけたとそう言ってわたくしとの婚約解消を宣言したの。 ねえ、真実の愛で結ばれたお二人、覚悟があるというのなら、これくらいできますわよね?

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】ドレスと一緒にそちらの方も差し上げましょう♪

山葵
恋愛
今日も私の屋敷に来たと思えば、衣装室に籠もって「これは君には幼すぎるね。」「こっちは、君には地味だ。」と私のドレスを物色している婚約者。 「こんなものかな?じゃあこれらは僕が処分しておくから!それじゃあ僕は忙しいから失礼する。」 人の屋敷に来て婚約者の私とお茶を飲む事なくドレスを持ち帰る婚約者ってどうなの!?

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

処理中です...