忘れられない宿題

いっき

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 翌日。みんなは様々な方法で飾り付けをしたお盆を持って来た。とても綺麗な絵を描いたお盆、小さな松の木を植えた盆栽……沙知先生はそれらを満足そうな顔で見ていた。
 そして……沙知先生は僕と亮のお盆飾りを見て立ち止まった。
「それは……」
「はい、僕達の合作、僕達の町の夏と冬です」
 僕と亮のお盆は町をそのまま小さくしたかのように再現していて……僕のは白い綿でところどころ積もる雪を飾り付けしていて、亮のは木々に緑の葉っぱを飾り付けしていた。
「へぇ、すごぉい。本当に、この町だ」
 先生は目を輝かせて僕達の『盆地』を見た。
「君達は何を考えて、これを作ったの?」
「はい。僕達はこの町のことが好きだから……中学生になってもこの町を大切にしようという想いを込めて、これを作りました」
 僕達はにっこり笑って説明した。

「この町は夏は暑くて、冬は寒い……それはこのお盆みたいな地形に由来します。空気が流れずに留まっている地形……だからこそ、僕達の絆も留まっているんです。これから中学生になって、高校、大学に行って、大人になって……僕達は離れ離れになってしまう日もくるかも知れません。でも、僕達の絆はずっと変わらない……そんなことを考えて、これを作りました」
「そう! それはとっても大事なことだよね」
 先生は僕達の言葉に、嬉しそうに目を細めた。
「どんなに勉強ができるようになっても、自分の住んでいるこの町のことを、その絆を忘れてはいけない。この町は盆地だからこそ、人と人との繋がりも強いんだ。だからみんなも。これからもずっとこの町のことを、この学び舎で学んだことを、忘れないで欲しいな」
 先生は爽やかに白い歯を見せた。

 小学生生活の最後に出されたその宿題……それは僕達にとって、ずっと忘れられないものになったのだった。
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