引っ越し段ボールの中から

いっき

文字の大きさ
1 / 3

しおりを挟む
「これ……一体、どうすりゃいいんだ」
 僕の口からは、途方に暮れた声が漏れた。部屋に所狭しと詰め込まれた段ボールの山、山、山。
 それは引越し作業の時に作って軽トラを借りてここまで持って来たのだけれど、どれに何を入れたか、全く覚えていない。

「ふぅ~」
 作業に取り掛かる前からすでに、僕の口からは溜息が出た。
「どうして、今まで放っといたんだろう……あ、そうか。暑かったからか」
 そう。僕はよりにもよって、夏の猛暑の中、引っ越した。
 引越し時に、自分の部屋……寝ることのできるスペースは確保して、おびただしい数の段ボールは隣の部屋に詰め込んだ。

 しかし、片付けようとすると、この風通しの悪いサウナのような部屋ではみるみる汗が吹き出して。もう少し涼しくなってから片付けることにして、今まで放っておくことになったのだ。

「くっ……僕はペンが欲しいだけなのに」
 そう。僕の目当てはペンタブのペン。タブレット自体は引越し時に躍起になって確保していたのだが、ペンはどこに行ったのか……。もうすぐで恒例のイラストイベントの締切だというのに、全く打つ手がない。
 というか、毎日、少しずつでも片付けていれば、部屋自体も片付いていただろうし、こんなことにはなっていないのだが……。
 そんなことを考えると、僕の口からはまた、「はぁ~っ」と溜息が漏れた。
「さぁ……気を取り直して、片付けよう」
 僕は重い腰を上げ、重い段ボール箱を開け始めた。

「うわっ、何だ、この紙の山……」
 それは、計算用紙にしようと思って溜めておいて、結局は使わない大量の紙であった。
「捨てるべきか……。でも、まだ使えるし……そうさ、資源の無駄遣いはいけない。いつかまた、有効活用しよう」
 僕はその段ボールは取り敢えず置いておいて、また別のものを開けてみた。

 すると……
「うわっ、何だ、このボロ布の山……」
 それは、いつか雑巾にしようと思って溜めておいて、結局は使わない使い古しのタオルやシャツなんかだった。
「捨てるべきか……。でも、まだ使えるし……そうさ、片付けているうちに部屋も汚れてくるだろうし、この雑巾は部屋を拭く用だ」
 僕はその段ボールは取り敢えず置いておいた。

 こんな感じで、全く片付けが進まない……そんな時だった。
 一際、重い段ボールがあった。それには何だか、邪気が封じ込められているような気がして……躊躇われたが、僕は思い切って開けてみた。

 すると……
「うわっ、何だ、これ?」
 その箱の中には、おびただしい数の巨大なキノコが入っていたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

うまくやった、つもりだった

ひがん さく
恋愛
四大貴族、バルディストン公爵家の分家に生まれたオスカーは、ここまでうまくやってきた。 本家の一人娘シルヴィアが王太子の婚約者に選ばれ、オスカーは本家の後継ぎとして養子になった。 シルヴィアを姉と慕い、養父に気に入られ、王太子の側近になり、王太子が子爵令嬢と愛を深めるのを人目につかぬよう手助けをし、シルヴィアとの婚約破棄の準備も整えた。 誠実と王家への忠義を重んじるこの国では、シルヴィアの冷徹さは瑕疵であり、不誠実だと示せば十分だった。 かつてシルヴィアはオスカーが養子になることに反対した。 その姉が後妻か商家の平民に落ちる時が来た。 王太子の権威や素晴らしさを示すという一族の教えすら忘れた姉をオスカーは断罪する。 だが、シルヴィアは絶望もせずに呟いた。 「これだから、分家の者を家に入れるのは嫌だったのよ……」  

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

処理中です...